2014 Fiscal Year Research-status Report
血液密封用メカニカルシールのもれ量最少化を目指した設計
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26420087
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
富岡 淳 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40217526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮永 宜典 関東学院大学, 理工学部, 講師 (00547060)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | トライボロジー / メカニカルシール |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,血液のレオロジー特性を取り入れた血液潤滑理論と実験によって血液シール下におけるメカニカルシールのトルク・温度特性やもれ特性を明らかにすることを目的とした.以下に,具体的に示す. まず,血液のレオロジー測定を行なった.血液は赤血球の凝集によって,ずり速度とせん断応力の間に非ニュートン性を示すことが知られている.しかし,メカニカルシールしゅう動面のようにせん断のみならず振動をも伴う環境おけるレオロジー特性は明らかでない.そこで本年度は,定常流と振動流の双方で流動特性を求めることによって,血液のレオロジー特性を明らかにした. 次に,メカニカルシールの血液潤滑理論の構築を試みた.血液のレオロジーモデルを流体潤滑理論に適用し,潤滑方程式の誘導を行った.現在,メカニカルシールの潤滑理論は確立されているとはいえず,これまでの研究はシール面にそりや傾きのある場合やうねりのある場合を前提に検討を行っており,メカニカルシールの設計理念とは相反する仮定となっている.そこで本年度は,血液による非ニュートン性と接触理論を組み合わせて,メカニカルシールの血液潤滑理論を構築を試みた. 最後に,血液シール下におけるメカニカルシールのトルク・温度特性およびもれ特性実験を行った.実験装置にはトルク計が設置されており,運動条件ごとにしゅう動面の摩擦損失トルクを測定した.また,メカニカルシールを構成するシートリングには温度計測用のサーミスタが埋め込まれており,これにより温度計測を行った.血液とクーリングウォータの双方向もれ量は,もれに伴う溶液の濃度変化に注目し,この濃度変化をイオンクロマトグラフィを用いて分析することで計測した.また,しゅう動面の表面粗さとして4種類を用い,表面粗さがしゅう動面からのもれ量への影響を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究の達成度はおおむね順調であるが,予定していた国際会議での発表が出来なかった.これは,実験結果の再現性の確認に手間取ったためである.しかし,この問題は解決したので,平成27年度に発表する予定である.同様に,血液シール下におけるメカニカルシールのトルク・温度特性およびもれ特性実験においても,実験結果のばらつきがあり,研究の達成度がやや遅れている.しかし,平成27年度には,実験を繰り返して,この遅れは取りかえす見込みがある.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,しゅう動面における血液の存在割合を検討する.人工心臓用メカニカルシールには,しゅう動面の潤滑・冷却・洗浄を目的としたクーリングウォータシステムが搭載されている.しかし,しゅう動面にどの程度の血液が存在しており,潤滑特性にどのように関与しているかはこれまで調べられたことがない.そこで本研究では,まず,しゅう動面での血液とクーリングウォータを完全混合状態と完全分離状態の2通りに仮定し,血液の見かけの粘度と接触が摩擦損失トルクに寄与することを利用してその割合を推定する. 次に,しゅう動面の可視化による血液の存在割合の観察する.メカニカルシールを構成するシートリングを透明セラミックスで製作し,しゅう動面を可視化する.また,ハイスピードカメラ機能を有するマイクロスコープで観察し,しゅう動面にどのように血液が存在しているのかを実際の観察からも明らかにする. さらに,しゅう動面観察によりしゅう動面における双方向もれ特性を明らかにする.上述のように,しゅう動面には血液とクーリングウォータが混在している.そのため,このメカニカルシールでは血液からクーリングウォータ側へのもれ量とクーリングウォータから血液側へのもれ量の双方向のもれが存在する.これらの双方向のもれ量を測定する. 最後に,血液シール下特有の付着性生物の有無や摩耗特性を明らかにする.実験前後のしゅう動面のSEMによる表面観察および表面分析を行い,血液シール下特有の生成物や摩耗特性を明らかにする. 本研究の最終目的である人工心臓用メカニカルシールのしゅう動面からのもれ量最少化の設計は,本研究で計画しているこれらの結果を総合的に判断して行う必要がある.そのため,上記の研究すべてにおいて表面粗さをパラメータともれ量に着目し,その影響を明らかにしながら行う計画である.
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Causes of Carryover |
若干の実験の遅れのため,購入すべき備品や消耗品の購入をしなかったため,予定より使用額が少なかった.また,国際会議の発表も準備不足のため断念したので,予定の使用額より少なかった,しかし,この遅れは取りかえせる見込みが立っている.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究は,血液シール下という超特殊環境下におけるメカニカルシールの潤滑特性を扱い,また,ここで得られた成果は人工心臓という非常に社会的注目度の高い技術において応用が期待されている.そのため,得られた成果は広く社会や産業界に還元されるべきものであり,随時論文発表を通じて発信する予定である.論文別刷費用はこれに当てるために必要である.また,研究成果の発表は国内外の学会およびシンポジウム等において,年に数回程度行う予定であり,そのための交通費,参加費,日当,宿泊費として,事前に提出したとおり使用予定である.しなければならない実験も多く,それに対して,試料などを購入する予定である.
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