2014 Fiscal Year Research-status Report
P-セレクチン上での好中球のローリング特性に与える接触力の影響に関する実験的研究
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26420101
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白井 敦 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (20302226)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | HL-60 / P-selectin / rolling / adhesion |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,各種濃度のP-セレクチンを塗布したガラス平板上における,all trans retinoic acidで好中球様細胞に分化させたHL-60細胞の挙動を解析した.そのために,(1)ガラス平板に対するP-セレクチンコーティング技術の確立,(2)種々の押しつけ力および駆動力下におけるHL-60細胞の挙動解析を行った. まず,(1)のガラス平板に対するコーティングでは,洗浄後に心素か処理したガラス平板を,滅菌蒸留水に0.01,0.1および1.0μg/mlの濃度で溶解させたRecombinant Human P-selectin (R&D Systems)に浸漬させ,4℃で一晩静置した.また,比較対象とする基板として,PBSに1wt%濃度で懸濁したBSAに浸漬したガラス平板を用いた.本研究で用いたP-セレクチン濃度はレンジが非常に大きく,抗体抗原反応を用いた蛍光染色では定量的な比較は不可能であったが,定性的に,高濃度の基板ほど多くのP-セレクチンが付着することを確認した. 次に(2)の挙動解析では,独自に開発した傾斜遠心顕微鏡を用いて,各種基板上におけるHL-60細胞の挙動を解析した.ここで,押しつけ力FNは30pNで一定とし,駆動力FNを15,30,47pNと変化させた.各HL-60細胞の挙動をPTVによって得た後,移動する細胞の平均移動速度と基板への付着率についてP-セレクチンの濃度とFNが与える影響を解析した.その結果,平均移動速度に関しては,FNが増加するに従って減少し,また,P-セレクチンの濃度上昇によっても減少することが示された.しかし,付着率に関しては,FNの上昇にともなって増加するものの,P-セレクチンの濃度の影響は見られなかった.ではなぜ平均移動速度にのみ影響があるのか.それを明らかにするために,現在,個々の細胞の挙動をトレースするプログラムを開発中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に予定した研究は順調に消化され,以降の研究のための重要な基礎データを蓄積した.この中で,ガラス平板に対するP-セレクチンやBSAのコーティング技術を確立するとともに,傾斜遠心顕微鏡による解析で,HL-60細胞の平均移動速度はP-セレクチンの濃度に反比例して減少するにも関わらず,付着率が変化しないことが示された. このP-セレクチン濃度が平均移動速度と付着率に与える影響について,細胞のstick-slip運動を考慮して,個々の細胞の挙動をトレースして,従来の平均移動速度および付着率に加えて,短時間の付着であるstick状態と,長時間の付着であるadhesion状態について纏める必要があると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要および現在までの達成度の理由に述べたように,P-セレクチン上におけるHL-60の挙動に関して,平均移動速度がP-セレクチンの濃度に反比例して減少するにもかかわらず付着率に影響が見られない原因を明らかにするため,個々の細胞の挙動をトレースし,細胞のstick-slip運動を詳細に解析する予定である. 平成27年度に予定している,血管内皮細胞を模擬した樹脂上におけるHL-60細胞の挙動解析に関して,現在,樹脂を一様の厚さで塗布するための治具を設計している.また,研究協力者であるフランスリヨン第一大学の研究者と密接に連絡を取り合い,最適な樹脂の選定および樹脂の表面形状の設計について議論を行っている.
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Causes of Carryover |
次年度使用額は当該年度所要額の3.7%であり,ほぼ計画通り使用されたといえる.内訳について,消耗品の購入とフランスリヨン第一大学への渡航のために物品費と旅費が研究計画調書より増加したがその誤差は10%未満であり,人件費・謝金とその他より補充した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については,次年度の物品費の補充として使用する予定である.
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Research Products
(4 results)