2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26420103
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
堀内 潔 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (10173626)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 反変・共変性要素 / 乱流 / 粘弾性流体 / 抵抗低減 / 圧縮性流体 / スカラー散逸 / Elasto-inertial 乱流 / Pressure dilatation |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、共変性要素の導入が流体乱流に付与する効果を明らかにする事を目的とし、平成27年度は、非圧縮性および圧縮性の粘弾性流体、ならびにNewton性非圧縮流体を対象とした解析を行った.非圧縮性粘弾性流体においては、多重スケール法の一つであるBDS-DNS法を一様等方乱流に適用して、高Weissenberg数におけるエネルギー伝達機構の解明を行った。溶媒の流動に対する高分子の追随性が強い場合、高分子は反変型として運動するが、伸長が大きくなると伸長時に蓄積した弾性エネルギーを保持できず、溶媒の運動エネルギーへの変換が起きるため、粘性散逸が増大するのにたいして、追随性が低い場合は共変型として運動し、大きな伸長を受けても弾性エネルギーが保持されるため、顕著な抵抗低減が得られる事を明らかにした。次に、圧縮性が粘弾性流体に及ぼす影響を検証した。反変性と共変性の弾性を持つ要素の添加による流体への応力の印加を模擬するため、高分子応力の構成方程式を解いて応力を算出しNavier-Stokes方程式に付加する方法を採用し、共変性要素が反変性要素に比べて、より大きな抵抗低減を生じる事を示した。また、圧縮性に固有なPressure-dilatation項が、溶媒の内部エネルギーの運動エネルギーへの変換を促して弾性エネルギーの生成を行って、抵抗低減を促進する事、その効果は共変性の場合に強まる事を示した。Newton性流体における反変型要素として渦度があるが、渦度の伸長の検証を行い、反変型の高分子と同様に、伸長が大きくなると散逸の生成を伴うため、伸長が抑制される事を示し、反変型要素が有する普遍的な特性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
非圧縮性と圧縮性の粘弾性流体、ならびにNewton性流体の広範囲の流体において反変性要素の付与が乱流の挙動に与える効果の検証を完了し、その普遍的な特性を明らかにした。また、粘弾性流体においては、近年注目されているElasto-inertial turbulence(EIT)と呼ばれる、高分子の大きな伸長時における弾性エネルギーの溶媒への伝達の機構を明らかにした。更に、共変型高分子では、EITの発生が抑制できる事を示したが、これは世界的に見ても、過去に全く指摘されていない先駆的な結果であり、2015年12月にフランスで開催された国際会議で招待講演を行い、高い評価を得た。このため、計画以上の進展と成果が得られたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、共変型要素の付与が乱流に与える効果の検証を中心に研究を進める予定である。先ず、平成27年度に明らかにされた共変型高分子の添加によるElasto-inertial turbulence発生の抑制と抵抗低減機構をより詳細に検証する。伸長が中間値程度の場合、弾性エネルギーへの変換については、反変型高分子は共変型高分子よりも効果的に機能する。したがって、実際の高分子は伸長が中間値では反変型として振舞い、伸長がより大きい場合に共変型として振舞うという仮説を立てている。この検証のため、反変型と共変型の混合型の高分子のモデルを構築し、そのBDS-SNS法を用いた検証を行う。共変型要素の例としてスカラー場の勾配ベクトルが挙げられる。そこで、次に、温度場における温度の散逸における共変性の効果の検証を行い、共変性要素が有する普遍性の解明を図る。
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Causes of Carryover |
主として下記の2つの理由により、差額が生じた。 ・平成28年度に、Technical University of Delft, Process & Energy departmentのGerrit E. Elsinga教授と粘弾性流体の実験に関する共同研究を開始する予定であり、この研究打合せに関してデルフト市に出張を行うための旅費が必要となった。 ・平成27年度は、当初11月下旬に外国出張を予定して予算を計上していたが、その後、直後の12月はじめにフランス・リール市で開催された国際会議への招待講演の招請があり、11月の外国出張を取り止めた。12月の国際会議では、旅費が開催者側から支給されたため、11月の出張分予算が未使用のまま残る事になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Gerrit E. Elsinga教授(Technical University of Delft)との共同研究のための研究打合せに関して、デルフト市に出張を行うための旅費に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)