2016 Fiscal Year Research-status Report
大規模並列計算による弾性乱流の統計性及び物質混合特性の解明
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26420106
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡邊 威 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30345946)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 弾性乱流 / 大規模計算 / 物質混合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、希薄な高分子溶液の遅い流れで観測される不規則流動現象”弾性乱流”の基本性質の解明およびその物質混合特性の評価を行うことにある。アプローチの方法としては、鎖状高分子を離散的な粒子モデルで扱い、これが流体力学の基礎式に従う溶媒中に多数分散した系の大規模数値解析を行うことでその性質を明らかにするものである。 これまでテイラー・グリーン流れにおける弾性乱流の発生機構について研究を行ってきたが、その過程で高分子ストレス場に発生するカスプ状の特異構造の存在が明らかになった。これは流れ場の計算精度の低下を引き起こすため、例えばエネルギースペクトルの振る舞いを正確に予測するには注意が必要であることを意味している。 この計算精度の向上の試みとして、本年度は離散的な高分子鎖からストレス場を構成する際に用いるデルタ関数の正則化法について検討を行った。まず近年提案された、非定常ストークス問題の厳密解に基づく正則化手法(P.Gualtieri et al. J.Fluid Mech. (2015) 773, 520-561)の本研究課題への応用可能性について検討し、その検証のためのコードを作成した。いくつかの予備的な計算を実施したが、計算が進むにつれて高分子鎖が異常に伸長して途中で計算が発散しやすくことがわかった。この発散の原因についてはよくわかっていないが、この正則化手法は遅延時間項を伴う偏微分方程式の数値積分になるため、その計算精度を保証する手法は通常の計算とは異なると予想される。これについて現在の申請者の知見が不足しているため、今後関連研究の調査を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予想に反して計算の発散が生じたため、デルタ関数の適切な正則化についての方針を定めることができなかった。そのために弾性乱流の計算を先に進めることが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
高分子ストレス場の計算手法に関して改善が見られない場合は、これまでの研究で用いた手法に一旦戻し、計算条件を緩めて弾性乱流の計算を先に進めることを考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定していた大規模計算が計算手法の見直しに伴って思うように進捗しなかった。よって計算機使用料や論文発表にかかる経費の支出が当初の見込みよりもかなり少なかったために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
第一には抱えている問題を解決して研究を先に進めることで、自然に経費の使用が増えていくと考えている。特に計算にかかる費用(計算機使用料)に多くの経費を費やすことになると予想している。また学会発表や論文投稿も増えることが予想されるので、併せてこれらの経費として使用する予定である。
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