2015 Fiscal Year Research-status Report
ディジタルホログラフィによる高性能3次元空間粒子計測法の研究
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26420110
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
村田 滋 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 教授 (50174298)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 流体計測 / 混相流 / ディジタルホログラフィ / 3次元計測 / 波動光学 / マイクロ粒子 / 噴霧計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高速燃料噴霧の液滴径・数密度などの空間分布情報計測や,材料変形と周囲流体の連成運動の3次元同時計測は従来の流体計測法では困難であり,簡便で高性能な計測法の開発が望まれている.そのような計測を実現するための一つの有用な技術にディジタルホログラフィが挙げられる.これは撮像カメラとパーソナルコンピュータを組み合わせ,従来のホログラフィをディジタル化したもので,微小粒子など計測対象物の3次元空間分布状態を干渉縞パターンとしてディジタル画像に記録し,その画像を波動光学に基づき解析すると,粒径・数密度・移動速度など様々な計測対象物の量が同時計測できるという特長を持つ. 本研究課題では,単眼で3次元空間に高密度分布する数マイクロ~数十マイクロメートルの微小粒子・液滴群に関する様々な量を時系列同時計測できるディジタルホログラフィ粒子計測システムの高性能化を目的としている.このシステムの高性能化は,「記録現象の高速化」「計測情報の高精度化」によって達成し,実用レベルの単眼3次元空間粒子計測システムを実現するとともに,この粒子計測システムの高い計測性能を実証実験により検証する. 先ず,「高精度化への対応」として,粒子計測結果の信頼性改善方法の開発と噴霧計測における実証研究を推進した.ディジタルホログラフィにおける数値像再生では,測定対象の粒子像が再生像空間にその影として生じるが,干渉性の高いレーザー光を用いるためスペックルノイズが発生し,これを粒子像と誤解することで計測精度を低下させてきた.平成27年度は一旦検出した粒子情報を元に再度再生像を構成して粒子像とスペックルノイズを見分ける方法を開発し,粒子計測結果の信頼性の向上を図った. 次に,「高速現象への対応」として,超短時間照明が可能なレーザー光源による観測光学系を利用して,実際の水噴霧を計測し,その実用性を実証的に検証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「高精度化への対応」は平成26年度に提案・性能評価した2つの粒子測定精度改善手法をさらに発展させ,より信頼性の高い計測結果を得るために,検出粒子固有の回折パターンを利用した回折像指標を新たに導入し,誤検出排除する後処理手法を提案した.この計測手法の性能を数値シミュレーションで評価したところ,粒子像特定のための閾値の影響を受けず,信頼性の高い計測結果が得られ,粒径10,20,30ミクロンの3つの異径粒子が混在する計測において,誤差率はそれぞれ3.0,2.5,2.0% であることが示された.また,基礎実験では標準粒子を用いた誤差評価を行い,公称粒径10,20,30ミクロンの3つのピークを持つ粒径分布に対して,計測結果は与えられた粒径分布とよく一致しており,標準粒子の公称値の平均値との誤差率はそれぞれ11.2,6.2,4.3%であることを確認した. 「高速現象への対応」は,前年度に超短時間照明が可能なレーザー光源を導入し,これを高速噴霧現象の観測に利用するため,同期信号系統を整備すると共に,実際の水噴霧の計測に適用した.噴霧の高速現象をフリーズさせるため,レーザー照明時間を250nsとし,ファンクションジェネレータの信号駆動により,噴霧タイミングからの経過時間によって測定結果を整理した.そして,噴霧圧力を10MPa とした条件下で得た結果をバックライト観測による噴霧の巨視的構造と比較しながら,その信頼性を確認した.噴霧液滴は噴射ノズル直下で密集しており,時間経過に伴い液滴径ピークは小さくなるとともに,その液滴が幅方向に広がる傾向が計測できることを示した.また,噴霧圧力を変化させ,液滴数,粒径,空間分布の変化を確認し,噴霧圧力を大きくすると噴霧液滴は微細で数密度が高くなり,噴霧現象の一般的な傾向とよく一致する計測結果が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度までの研究成果に基づき,平成28年度は「高精度化への対応」および応用計測によって高性能ディジタルホログラフィ粒子計測システムの性能実証研究を完了させることによって,次の研究ステップへの基礎を固める. 先ず,「高精度化への対応」として,多波長レーザー照明と3板式カラーカメラを利用した多波長ディジタルホログラフィによって粒子計測の精度向上を図る.測定精度改善のための計測原理の理論的展開を踏まえ,数値シミュレーションによる性能改善評価を行う.実証研究として,本研究計画開始までに既に所有していたHe-Neレーザー(633nm)と固体レーザー(波長532nm)に加え,本研究課題で購入した固体レーザー(波長488nm)によって3波長によるカラーレーザー照明と,インターレース方式であるが現有の3板式カラーカメラによって,静止カラーホログラムを取得し,基本性能試験を実施する. 次に,応用計測として,構造体の運動と周囲流体の流動を同時に計測する実験装置を用いて流体-構造体連成同時計測を行い,連成問題におけるディジタルホログラフィ粒子計測法の有用性を実証する.対象流れ場は静止流体中に垂直に直立する角柱周りのはく離流れであり,角柱の周囲に形成される旋回流と角柱の振動現象を同時観測する.上述の観測実験およびその解析は,平成27年度までに構成したホログラム観測光学系による観測装置と数値シミュレーションで性能評価した粒子計測ソフトウェアを用いて実施する. 研究成果は,日本機械学会流体工学講演会,可視化情報学会全国講演会のほか日本光学会,日本実験力学会等の国内講演会や国際シンポジウムを中心に報告するとともに,関連学会論文誌などに印刷物で公表する.
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Causes of Carryover |
「高速現象への対応」では,前年度に連続発振レーザー光源を導入し,これを高速噴霧現象である実際の水噴霧の計測に適用したが,レーザー照明時間を長めの250nsとし,アナログモジュレーションによってレーザー照明をパルス化したため,現有ファンクションジェネレータを利用で済み,さらに短時間パルス化のために必要なディジタルモジュレーションのための信号処理系が不要であった.また,年度後半に国際学術誌へ学術論文を投稿したが,査読プロセスが遅く,その結果が平成28年度に入ったため,これに必要な学術論文掲載料が次年度先送りとなった.さらに,流体-構造体連成同時計測のための実験装置構築が遅れており,その試験材料費もまた先送りとなっていることと,大学院生の修士論文研究との兼ね合いで数値シミュレーションに関するデータ整理・補助の使用額が必要なくなったことにより,次年度使用額667,005円が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は,流体-構造体連成同時計測および多波長ディジタルホログラフィの基礎試験のための実験装置製作等に若干の費用が必要であるとともに,国内学術講演会における研究成果発表申し込みを多数行っているため,これらに次年度使用額667,005円を追加使用する.平成28年度配分額と合わせた1,367,005円の利用計画は次の通りである.流体-構造体連成同時計測実験および多波長ディジタルホログラフィの基礎試験には物品費として追加的に450,000円,日本機械学会流体工学講演会,可視化情報学会全国講演会および日本光学会年次学術講演会外の研究発表に対して,研究成果発表のための旅費として150,000円を追加配分し,合計380,000円,また,人件費・謝金は当初計画通り,280,000円とする.さらに,国際学術雑誌などへの論文投稿を積極的に行い,これに70,000円を追加配分し,250,000円とする.
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