2014 Fiscal Year Research-status Report
超音速旋回流を利用したコンデンセートガスの分離に関する研究
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26420116
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
瀬戸口 俊明 佐賀大学, 海洋エネルギー研究センター, 教授 (90145186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 繁 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60229424)
塩見 憲正 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80284610)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超音速旋回流 / コンデンセートガス / 非平衡凝縮 / 気液分離 / 数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,地球規模でエネルギー構造の高度化と環境問題の解決に直面している.このような状況に対して,石炭の代替エネルギーとしてクリーンで効率のよい天然ガスの普及が重要視されるようになっている.しかしながら,採掘された天然ガスの中にある凝縮性気体(コンデンセートガス)の分離・抽出のプロセスでは化学物質等が使用されており,環境汚染の問題が指摘されている. 本研究は,化学物質を全く使用せず,流体力学的現象のみを利用した凝縮性気体の分離・抽出技術の確立に向けた基礎研究である.具体的には,空間中の凝縮性気体が加速膨張する際に生ずる凝縮現象とスワールフロー(旋回流)の組み合わせによる凝縮性気体の分離・抽出の可能性を調べることを目的としている. 本課題の実施に関し,現時点では凝縮現象の理論的な取り扱い方法に比べ,効率的な旋回流を得るための計算手法が不足している.よって,初年度は,円形ノズル(アウターノズル)内部に柱状体(インナー)を同心状に挿入することで得られる円環ノズルを用いて圧力計測実験を行い,本研究に用いた3次元非定常方程式と相変化を解くための方程式を使用した数値計算プログラムの妥当性および本計算に好適な乱流モデルについて調べた.また,超音速環状中の非平衡凝縮現象に及ぼす旋回の有無,およびインナー開き角の影響について数値的に調査を行った. その結果,乱流モデルとしてk-omegaモデルを使用した場合の計算結果が実験結果に近い値を示し,流れを定性的に再現できることを明らかにした.また,旋回を伴う超音流れ場では旋回を伴わない流れと比べ,インナー壁側における音速線と凝縮の開始点は,上流側に移動し,旋回を伴う場合のノズル出口での液滴の質量流量分布は,旋回を伴わない場合と比較してアウターノズル壁寄りとなることを示した.さらに,この傾向は,開き角が大きい場合のほうが顕著となることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の具体的な3つの実施計画に対しての達成度を次に示す. (1)非平衡凝縮を伴う3次元非定常超音速流れに関する数値解析については,拡散方程式,乱流モデル,および相変化を含む3次元非定常方程式を組み合わせたプログラムを作成した.また,予備的な計算において,現象を精度よく予測するために必要な乱流モデルの選定を行った.さらに,旋回を伴う場合の予備的な計算を実施し,作成プログラムの動作確認等を行った. (2)実験装置の製作および予備実験については,上記(1)により得られた結果の妥当性を確認するための環状ノズルを含めた実験装置を製作するとともに,高精度の計測が可能であるかを確認した.また,作動気体に湿り空気を使用した場合の流れ場の詳細を把握する必要があるため,圧力計測実験を行った. (3)研究の総括については,上記(1)と(2)の結果を総合して,非平衡凝縮より発生する液滴の空間的分布と流れの流動特性について知見を得た.また,計算の妥当性および非平衡凝縮現象に及ぼす旋回流の影響に関して得られた知見をまとめ,成果の発表を行った. 以上の達成状況から,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に製作した実験装置の改良に加え環状流を効果的に得ることができるノズルを製作し,非平衡凝縮の有無が環状ノズル内の流れ場に及ぼす影響を圧力計測等により調査する.また,初年度に作成したプログラムを使用し,実験と同条件下で得られた結果との比較を行うことで計算の妥当性を検証する.また,旋回流の条件による凝縮生成物(液滴)の分布の非一様性の時間的,空間的範囲を数値的に明確にする.さらに,環状ノズル形状,特にスロート上流の形状が,流路内の液滴の分布に及ぼす影響について,得られた結果をまとめ,成果発表を行う予定である. 上述の成果が得られたのち,環状ノズルのスロート上流と下流の形状が液滴の分布に与える影響を調査し,効果的な旋回流の条件,液相の分布の非一様性の確認,および旋回流と液相の非一様性の関係について考察を行うとともに,凝縮生成物の効果的な分離方法について考察する.また,得られた結果より最適なノズル形状を提案するとともに,これまでの成果を総括し,研究発表を行う予定である.
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