2015 Fiscal Year Research-status Report
ループヒートパイプにおけるウィック内蒸発に関する研究
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26420139
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
長崎 孝夫 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (30155923)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ループヒートパイプ / ウィック |
Outline of Annual Research Achievements |
ループヒートパイプにおけるウィック内の蒸発現象を基礎的に解明するため,目視観察可能な測定部に設置した幅50mm,高さ20mm,奥行き5mmの焼結金属性ウィックの上面に断面5mm×5mmの銅製角柱を押し付け,その根本をマイクロセラミックヒーターで加熱するとともに,ウィック下側から作動液を供給して蒸発実験を行った。本年度はウィックの孔径と材質、および作動流体の影響について系統的な実験を行った。まず作動流体をエタノールとし、ステンレス製ウィックの焼結粒子径を約70μm、150μm、220μmとした実験結果より焼結粒子径が中程度の約150μmの場合が最も蒸発性能が良く、ウィック孔径に最適値があることが分かった。さらにブロンズ製ウィックを用いた場合、蒸発性能は高いがウィック裏面へのヒートリークが大きい問題があることが分かった。さらに作動媒体として水を用いたところエタノールの場合に比べて蒸発性能が低く、ウィックに対する作動液体の濡れ性が重要であることが分かった。 さらに蒸発器の性能向上を図るため、蒸気流路を設けた加熱プレートの凸部先端をウィック内に埋め込んだ蒸発器を製作し、加熱量の増加に伴う各部温度変化を測定するとともに作動媒体として水とエタノールを用いた実験を行い、この場合にもエタノールの方が蒸発器の性能が優れることが分かった。 以上の実験に加え、ウィック内に蒸気領域が形成される場合の数値解析方法について検討を行った。手法として気液界面位置は距離関数を用いて表し、気液界面付近で流体物性値を滑らかに変化させるとともに気液界面での表面張力による圧力差を運動方程式中の外力項で表す方法を用いた。この方法はいわゆるレベルセット法に対応するが、距離関数による流体物性値変化および蒸発領域を適切に設定することによりウィック内部での気液相変化流れを扱えることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度完成した実験装置を用い、ウィックの孔径と材質および作動流体の影響について妥当な実験結果を得ることができた。また実験概要に記した通り、新規なウィック構造を有する蒸発器を製作し定常動作させることができた。比較のための従来型蒸発器の実験準備もできている。ウィック内に蒸気領域が形成される場合の数値解析について、まず気液共存セルにおける気液の速度不連続と圧力不連続を厳密に扱う手法を考案して平面二次元場に適用し、比較的粗いメッシュでも精度のよい結果が得られたが、その手法は非常に複雑で今後の三次元場への拡張が非常に困難と予想された。そこで方針を再検討し、気液界面追跡で従来用いられているレベルセット法を適用することとし、本問題に対応した修正を施すことによってウィック内の気液相変化流れにも適用することができた。実験上の問題点として、依然としてヒートリークによるウィックの液側での蒸気発生が見られることがあり、特にウィック厚さを小さくした場合にその影響が顕著であった。その解決のため、ウィックの液側の温度調節を積極的に行うことを今後予定している。また、新規なウィック構造を有する蒸発器の実験ループについて、時により原因不明の不安定流動が生じることがあり、その原因究明も課題である。以上のように実験上の検討課題はいくつかあるが、これらはループヒートパイプでは起こりがちな問題であり、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ウィック内での蒸発を含めた数値解析を本実験系に適用し、実験結果との比較検討を行い、ウィックの孔径、材質等の影響を実験と解析の両面から明らかにするとともに、加熱プレートの突起寸法の最適条件について検討する。また新提案の蒸発器について従来型の実験を行い、提案方式の優位性を明らかにする。
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