2014 Fiscal Year Research-status Report
乱流熱物質輸送過程における重ね合わせ原理に基づく現象の解明と予測
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26420143
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
保浦 知也 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00324484)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 博文 名古屋工業大学, 技術部情報解析技術課, 課長 (30467352)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 熱工学 / 乱流 / 熱物質輸送 / 風洞実験 / 温度変動計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,はく離・再付着を伴う複雑な強制対流乱流場を,スカラー場の重ね合わせに着目して装置実験と直接数値シミュレーション(DNS)により明らかにすることである。そのために,壁乱流を対象とし,温度場や濃度場などのスカラー場が,速度場に対して受動的と見なせる強制対流場を風洞実験とDNSによりシミュレーションし,その乱流特性を素過程の重ね合わせとして理解することで,複雑な乱流場における熱や物質の移流拡散現象をより普遍的に解明する。本年度は以下の3点について研究を進めた。 (1)温度変動の高精度計測手法の開発: 壁乱流における温度変動を正確に測定するために,細線温度センサの応答関数に及ぼす種々のパラメータの影響を明らかにする必要があった。そこで,既存の理論解析では考慮されていない速度変動の影響を細線温度センサの非定常数値解析により明らかにして,ディジタル応答補償に基づく気流温度変動の高精度計測に向けての知見を得ることができた。 (2)壁面加熱条件が変化する乱流境界層における温度場特性の調査: 複雑乱流場の一例として,平板上を発達する乱流境界層の壁温が流れ方向に急変する系について,風洞実験により,温度場の乱流特性を明らかにした。(1)で開発した温度センサの応答補償を多点プローブに適用し,種々の加熱条件によって温度場乱流構造が大きく変化することを定量的に明らかにした。 (3)複雑乱流場のDNSによる調査: 重ね合わせが成立する乱流熱物質輸送場として,円管内乱流温度助走区間,T型チャネル温度混合場,バックステップ乱流熱・物質伝達場の直接数値シミュレーションを行い,平成26年度はそれらの場における壁面近傍までに至る詳細な基本乱流統計量を取得し,現象の解明を探った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
温度変動を正確に計測することは,複雑な乱流現象を定量的に予測するための基盤となるデータベースの信頼性を担保する上で必要に重要であり,センサの応答を理論的,数値的に解析し,風洞実験で実証する必要がある。現在は,その解析がほぼ終了し,風洞実験による実証が残っている状況である。また,風洞実験における測定対象として,2次元丘モデル周りの複雑乱流場を平成26年度に想定していたが,壁温の挙動に対する材質などの検討が不十分であったため,風洞実験に着手するのが遅れていた。しかし,濃度変動場についてはその影響が小さいことから,当初の予定と変更して濃度場の測定を進めた。一方,DNSによる調査に関しては,当初想定していたケースよりも多くの複雑乱流場についてのデータベース本年度中に構築することができ,重ね合わせの原理を検討するためのデータが十分に揃っている状況である。以上の理由から,研究の目的はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
温度変動の高精度計測手法がほぼ確立したので,今後は,初年度に予定していた風洞実験を進めるとともに,直接数値シミュレーションによる複雑乱流場の解明を継続する予定である。具体的には,下記の2つについて進める。 (1)2次元丘モデルの風洞実験: 丘モデルの上流で点源拡散された濃度場を,高速度応答水素炎イオン化検出器(高速FID)で測定し,はく離・再付着を伴う乱流場の特性を調べる。また,丘モデルの壁温分布を制御することで,種々の温度境界条件を実現し,温度場の重ね合わせに関する特性を明らかにする。 (2)直接数値シミュレーションによる複雑乱流場の重ね合わせに基づく現象の調査: 装置実験と同様に,はく離・再付着を伴う複雑乱流場の重ね合わせを,渦構造に着目して調査する。異なる境界条件での熱・物質輸送は互いにどのような関連があるのか,予測することは可能かについて検討する。
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Causes of Carryover |
壁面材質の再検討のために実験装置の制作が予定よりも遅れたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に2次元加熱丘モデルの制作とこれを風洞内に設置するための実験装置材料費,加工・制作費に支出する。
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Research Products
(8 results)