2015 Fiscal Year Research-status Report
噴霧燃焼法を利用したコアシェル酸化物微粒子の新規合成手法の構築
Project/Area Number |
26420155
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
横森 剛 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (90453539)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 燃焼合成 / 粒子合成 / 噴霧燃焼法 / コアシェル粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,様々な機能性を有する粒子として近年注目を集めているコアシェル粒子について,噴霧燃焼法を利用した新規合成手法の開発・確立を目指すことを目的としている.本手法は,燃焼場(火炎)中に噴霧を行う前駆物質溶液中にコア及びシェルを構成する特定の前駆物質を混合させ,溶媒の蒸発・化学反応・結晶化の合成段階で,コアおよびシェル物質が自発的に分離し,最終的にコアシェル構造が形成されることを念頭においたものである. 本年度(平成27年度)は,昨年度に試行した対象物質についてさらなるデータ取得により精度を向上させると共に,新たな対象物質として,セリウム硝酸塩水和物およびオルトチタン酸テトライソプロピル(TTIP)にシリカコロイド溶液を混合させた前駆物質溶液を対象に合成を試みた.合成された粒子に対するTEMおよびEDX分析結果より,燃焼温度(火炎温度)および前駆物質混合濃度の合成条件が特定の範囲内に収まった場合に,コアシェル構造が形成されることが明らかとなった.また,TTIPについてはどの条件でもコアシェル構造を得ることができなかった. 以上のように各種物質および合成条件に対し多くのデータを得ることが出来たため,さらに本年度は,それら試験結果をもとにコアシェル構造の形成メカニズムについても検討を行った.結果として,燃焼高温場での合成プロセス中において対象物質が溶融状態にある際,コアおよびシェルの二物質混合比率が,対象物質の相平衡図中における二液不混和条件に当てはまる場合に良好なコアシェル構造が形成されることが示唆された.ただし,TTIPを前駆物質とした際にはコアシェル粒子が得られないこと,また,二液不混和条件より若干シェル物質過濃側の条件で特に良好なコアシェル粒子が形成されること等,メカニズムについて不明瞭な部分も多く残っているため,次年度により詳細に検討を進めていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記した平成27年度実施項目である「平成26年度に引き続き,合成試験,粒子特性分析を実施する.また,平成26年度の対象物質に加え,他の各種主要酸化物に合成対象を広げる.」において,実際に各種酸化物に対して多くの合成試験と評価を行い,貴重なデータを得るに至っている.合成対象とする酸化物組成については若干の変更を加えたが,本研究の主目的である噴霧燃焼法によるコアシェル粒子合成法の確立とそのメカニズムの解明に対しての影響は殆どなく,合成メカニズム解明への広範なデータ取得という点で利点の方が大きい. また,本年度は合成メカニズムの解明に向けた初期検討も実施し,その糸口を掴むに至っているため,次年度において本研究はさらに進展することが期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り,平成27年度に引き続き,合成試験,粒子特性分析を実施するとともに,本手法におけるコアシェル粒子構造化メカニズムについて検討を行う.メカニズムの検討においては,2 次元-燃焼反応数値解析の実施などによる燃焼反応場状態の詳細なデータも加え,合成粒子が辿る温度履歴と相平衡図特性の観点からコアシェル構造形成過程の各現象を明確にする.また,実際の試験結果および合成メカニズムの検討結果を元に,コアシェル粒子合成における主要な物理パラメータを特定し,合成条件の最適化を行うこととする.
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Causes of Carryover |
4,436円が生じたが,その金額は微小な額であったため,次年度の物品費と合せて使用する方が有効に活用できると考え,次年度使用額へと繰り越した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
4,436円については,次年度(平成28年度)に購入を予定している物品費(燃焼用ガス)として使用する予定である.
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