2014 Fiscal Year Research-status Report
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26420157
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
松本 浩二 中央大学, 理工学部, 教授 (60229549)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 過冷却 / 制御 / 界面活性剤 / 気液界面 / 固液界面 / 臨界ミセル濃度 / 特異濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
親水性と疎水性の8種類の非イオン系界面活性剤に関して,表面張力と界面活性剤濃度の相関から臨界ミセル濃度(以下,C.M.C.)を算出した後,気-液界面を有するガラス製試験管中で,それぞれの界面活性剤と純水の混合液の過冷度を界面活性剤濃度を変えながら測定した.そして,各濃度での30回の過冷度の測定結果から算出した平均過冷度により結果を評価した.その結果,界面活性剤濃度の変化により,平均過冷度の能動的制御が可能であることが分かった.また,平均過冷度の傾向は,C.M.C.以下とそれより大きい場合では全く異なり,特に,各C.M.C.で各界面活性剤混合液の平均過冷度が最大となることを解明した.さらに,C.M.C.において,気-液界面での各界面活性剤分子の単位面積当たりの吸着量をギブスの吸着式より算出し結果,吸着量の多い界面活性剤ほど,平均過冷度は大きかった.以上より,吸着量と平均過冷度には強い相関があり,即ち,C.M.C.未満では界面活性剤濃度の増加に伴い吸着量が増加することで,平均過冷度も増加し,C.M.C.で吸着量と平均過冷度が共に最大になると予測された.一方,C.M.C.より大きい場合,液中でのミセルにより決まる可能性があるが,今後の検討が必要である. C.M.C.は気液-界面のみに関連するに物理量であり,それ故,固-液界面を有する系での検討も不可欠であった.そこで,ガラス製シリンジで固-液界面のみを有する系を実現し,試験管と同様の実験を行った結果,この系においても,平均過冷度の能動的制御が実現できることを明らかにした.また,平均過冷度の傾向の指標となる濃度,即ち,”特異濃度“がC.M.Cと同様に,各々の界面活性剤混合液で存在し,それらは各々のC.M.C.と完全に一致することを明らかにした. 上記結果を考慮して,平均過冷度の制御に対して最も有効な界面活性剤を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本来は,H26-27年度で広範囲のHLB値(親水性と疎水性)を有する界面活性剤を用いて気-液界面を有する系と固-液界面単独系での平均過冷度の能動的制御の可能性や平均過冷度の傾向の指標となる界面活性剤濃度を明らかにすること及び能動的制御に対する最適界面活性剤の選定などを終了する予定であったが,実験が非常に順調に進捗し,H26年度でHLB値が17.3から5.5までの親水性と疎水性の8種類の界面活性剤に対して,科研費申請書に記載した研究の主たる目的である,①界面の種類によらず,界面活性剤濃度を変化させることで平均過冷度の能動的制御の実現と平均過冷度の傾向の指標となる界面活性剤濃度を明らかにすること及び②最適界面活性剤の選定が達成できた.これは,研究代表者のこれまでの研究で得られた界面活性剤に対する多くの知見や科研費申請時に既にHLBが10以上の親水性の4種類の界面活性剤を選定ができ,補助金交付開始までに,それらの4種類の界面活性剤に関しては,概ね評価が終了していたことが最大の理由であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
非イオン系界面活性剤混合液の平均過冷度の能動的制御が可能であることを明らかにしたので,次に平均過冷度の支配因子の解明が重要となる.そこで,特異濃度未満, 特異濃度,特異濃度より大きい濃度でのそれぞれの平均過冷度の支配因子解明の一つの方法として,文献値より得られるまたは算出できる各々の界面活性剤分子の断面積,炭素数そして界面活性剤分子の長さから算出したミセルの体積を検討し,それらの中に支配因子となりうるものがあるかを,固-液界面のみを有するガラス製シリンジを用いて検討する. 併せて,支配因子解明の別のアプローチとして,H26年度で得られた平均過冷度は界面への界面活性剤分子の吸着量と強い相関がある可能性が高いという知見により,既存の装置であるQCM(水晶振動子測定システム)により,ガラス表面への界面活性剤分子の吸着量を界面活性剤濃度を変えながら測定し,界面活性剤濃度,吸着量及び平均過冷度の相関を明らかにすることで,吸着量が平均過冷度を決定していることを実証する. また,界面活性剤の氷の付着力に及ぼす影響を検討するために,付着力測定装置を当初はH28.2.~H28.3の間に製作する予定であったが,予定を早めて,H27.8~9月中に装置を完成させた後,平均過冷度の能動的制御に関連する実験と並行して実験を開始する予定である.
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Research Products
(3 results)