2015 Fiscal Year Research-status Report
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26420159
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中垣 隆雄 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30454127)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 吸収速度 / 拡散抵抗 / 多孔質体 / 化学反応 / 未反応核モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
CO2分離回収技術の炭素循環製鉄プロセスの一時貯留媒体として,高温での使用が可能であり追加的なエネルギー投入が少ないリチウムシリケート(以下LS)を使用する.LSはCO2を650℃で吸収し,800℃で放出することで繰返し使用可能なセラミックス吸収材である. 平成25年度に既製球状LSペレットの吸放出挙動を未反応核モデルにより定式化し,吸収挙動はペレット内拡散距離による影響が大きいことが判明した.平成27年度は拡散距離が短い形状のペレットとして,当初の計画通り押出成型により円筒状LSペレットを内製した.得られたLSペレットは30%-CO2雰囲気において最大吸収量が25wt%であり,吸収完了までの時間を約10分にまで短縮させることができた.しかしながら吸放出サイクルとともに吸収容量および吸収速度が低下し,ペレットの収縮も見られた.そこで平成27年度は高い吸収速度を確保しつつ,CO2吸放出サイクルによる吸収容量低下の抑制を目指し,シンタリング防止効果の高いチタン酸カリウムウィスカをLSに対し2wt%添加した.また共晶による液相焼結の低減を目的として,特許を参考に平均粒径が1~2μmになるまで粒径を細分化し,焼成条件の変更により粒子間の結合強度を増大させた.作製したペレットの吸放出試験における5サイクル目の吸収容量はペレットに対し23.5wt%であり,初期値の78.4%の容量を保った.また,試験後のペレットに収縮も見られなかった. これまで開発した未反応核モデルでは球状ペレットの吸収挙動を精度よく模擬可能であることが分かっているが,反応律速条件の温度・分圧条件では実験値との乖離が見られた.そこでCADによる形状選択性を持ち,吸収反応と内部拡散を同時に評価できるCOMSOLにより,CO2の吸収反応と多孔質体内物質移動を同時に考慮したモデルを構築し,未反応核モデルで乖離の大きい反応律速条件での予測精度を向上させた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)吸収材の作製手順の確立 平成27年度はLS粉体および押出成型によるLSペレットの作製手順を確立することができた.しかし,内製LSペレットは同条件で作製しても最大吸収量のロット差が大きい課題がある.また,一度の押出成型で作製できるLSペレットは60個程度であり,充填層試験に必要なペレット数の準備には時間がかかる.完全な粉体の内製化が完了したわけではないが,当初の計画通り成型外注に踏み切ることで,均一な性能を持つペレットを大量生産し,吸収性能の均一化を図る.また外注ペレットを用いて,計画通り充填層試験による評価を実施する. (2)数値計算 平成26年度までにCOMSOLで円柱状ペレットモデルの作製に成功しているが,既製球状LSペレットの吸収挙動データが基である.また,このモデルは吸収反応と多孔質体内物質移動を同時考慮しない.そこで,全吸収量を実数解とし,CO2の浸透フラックス分布を汎関数とする変分法に基づいた時間発展の微分方程式をCOMSOLにより構築した.内製LSの吸収挙動を模擬するには,反応速度定数や気層境膜内拡散係数のデータとともに,ペレットの最大吸収量を予測してモデルに組み込む必要がある.そのためには,外注製作したペレットを用いた試験による最大吸収量の定式化の後に,単粒子の吸収性能を予測する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
1)実用化に向けた最適なLSペレットの形状設計 実用的な充填層反応器の設計と性能評価のためには,単粒子の吸収性能の予測が不可欠である.LSペレットのCO2吸収反応は固気界面で進行し,生成層の形成に伴う拡散距離の増大とともに吸収速度は低下するため,LSペレットの設計指針として内部への拡散距離の短縮と比表面積の確保が挙げられる.さらに,充填層反応器ではペレット充填時の容器内空隙率が反応器全体の吸収容量や流通ガスの圧力損失に影響するため,容積あたりの吸収量やペレット充填効率も考慮する必要がある.候補として,円筒やストロー形状が挙げられ,外注する予定である.これまで開発した未反応核モデルでは反応律速条件の温度・分圧条件で実験値との乖離が見られたことから,CO2の吸収反応と多孔質体内物質移動の同時考慮モデルをCOMSOLで構築し,予測精度を向上させる.また,開発したモデルを用いてペレットの形状を変化させ,高さや厚さをパラメータとして感度解析を実施することで最適な形状を決定する. (2)内製LSペレットの最大吸収量の予測およびペレット充填反応器モデルの確立 内製LSペレットの吸収挙動の模擬には最大吸収量の予測が必要である.最大吸収量はCO2濃度と温度に影響するため,外注した均一な性能を持つペレットを用い,最大吸収量を定式化した上で,(1)のモデルに組み込み,単粒子の吸収性能を予測する.また,実用的な反応器の設計と性能評価のためには,充填層反応器内の熱および物質移動をモデル化した数値解析による吸放出挙動の予測が必要である.そこで単粒子モデルを用いて反応器を非定常・不均質の充填層でモデル化し,充填層内における熱および物質移動の挙動を数値的に解析する.また,数値計算による吸放出性能を,学内で実施する流通型断熱充填層反応器を用いた吸放出試験により試験的に確認する.
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Causes of Carryover |
進捗に記載の通り,繰り返し特性の向上に時間が掛かったため,円筒形状ペレットの外注が少し遅れている.そのために未使用額が発生した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の報告の通り,繰り返し特性は目標値に達した.当初の計画通り,数値計算で形状設計したペレットの外注試作費用に充当する予定である.
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