2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26420170
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
涌井 伸二 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70334472)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 幸紀 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90574012)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 空圧式除振台 / 加速度 / 速度 / 振動 / SI値 / スペクトラム / DI値 / 長周期地震 |
Outline of Annual Research Achievements |
精密計測装置や精密位置決め機器を搭載する空圧式除振装置は,精度を維持するための必須の構成ユニットであり,精度を満たすために多重のフィードバックが施されている。具体的には,本体構造体を変形させないための圧力フィードバック,構造体の振動を抑制するための加速度フィードバック,そして平衡位置に除振台を定位させるための位置フィードバックを備える。これら多重のフィードバックの調整指針は,除振装置の性能指標である除振率を良化することに焦点があたっている。しかし,地震発生時には,除振率を良化するためのフィードバックが災いして,例えば機械衝突を引き起こしやすくなる。 そこで,空圧式除振装置を標準として備えている半導体露光装置の場合には,地震を検知したとき,装置の稼働を停止させる機能が付与されている。具体的には,空気ばね内の空気を強制排気して装置全体を着座させている。しかし,地震の種類によっては,望ましい機能の発現ができなかった。例えば,軽微な地震に過敏な反応をして稼働停止になった場合,装置全体の再起動に時間がかかるため,製造物であるICの生産性を著しく阻害するものであった。 この問題を解決するためは,地震の性状を判定して,軽微な地震については,装置の稼働を停止させずに連続稼働させることが好ましい。そのために,地震波形からこの性質を捉え,空圧式除振装置に施されている制御系のパラメータを切り替えるという手段を考案した。本研究課題は,この方法を深化させる目的を持つ。初年度は,(1)地震観測の多点化によるパラメータ切り替えの検討,(2)地震のスペクトラム分析のために使用していたSI値に代えてDI値を用いる可能性について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来までの切換えでは,空圧式除振装置が設置されているその場所での地震波形分析に基づいていた。したがって,除振装置に地震が実際に入って,揺れが起こっている途中から切換えが実施され,その後に除振台の揺れが抑えられるという結果であった。一方,観測網を設けると,着目地点に地震が到着する前に地震性状の判定が可能である。数種類の地震波形をK-netから入手して試行した結果,観測網を設けることによって,地震が入力される直前から制御系のパラメータ切り替えが行えた。すなわち,地震入力の直前まで生産性が重視される半導体露光装置を稼働し続けられる利点を示せた。 さらに,地震到来の寸前まで装置を稼働させ続ける方法を探索した。地震の性状および大きさを判定する観測網のほかに,着目地点(露光装置が集結する四日市に設定)の数キロ周辺に,地震到来だけを検出する補助観測網を設定した。性状を分析する観測網で地震到来が検知できても,実際には着目地点に到来しない地震もあり,この場合には,観測網での地震判定だけを使用すると不要な制御パラメータに切換えを実施してしまう。しかし,補助観測網の地震検知によって,まさに到来した地震に対処することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
従来,地震のスペクトラム分析のためにSI値を使用していた。しかし,計算機に負荷がかっており,かつ時間窓を用いる計算方式のため計算時間を要する欠点があった。そこで,SI値よりもリアルタイム性に優れるDI値を用いることにした。実験系に持ち込むため,現在,DI値メータを2台試作している。うち1台については検査完了の状態である。これを除振台上,および装置の設置床に据え付けることによって,地震波形の中に含まれている周波数成分をリアルタイムで分析したのち,地震振幅の大小判定によって,空圧式除振装置に施されるフィードバック,あるいはフィードフォワードの切換え実験を行う予定である。このための実験系の準備をおこなっている。購入した永久磁石加振器は,空圧式除振装置に振動を与えるための機器である。 併せて,SI値に代えてDI値を用いることにともない,空圧式除振装置内の制御系パラメータ切り替えに関する論理の改良が必要と判明した。過去に発生したさまざまな性状の地震波形を用いて,実用に耐える切換え論理の構築を行っている最中である。 なお,本年度,観測網を設け,ここでの地震性状の判定によって,着目地点に設置されている露光装置に対する制御切り替え命令を出す方法の検討をおこなった。既存の地震観測網を活用できるのであれば,実現の可能性は否定されるものではない。しかし,民間企業の生産設備保護のために公の観測網を使うことはできないかもしれない。そこで,観測網を使用せずに,オンサイトで地震波形を分析し,かつ制御系のパラメータ切り替えを実施することが望ましいと考えるようになった。この方法の実現のため,SI値に代えてDI値を用いることにしている。
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Research Products
(3 results)