2015 Fiscal Year Research-status Report
スマート材料のシステム論的モデル化による高効率エナジーハーベスティング
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26420174
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高木 賢太郎 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60392007)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安積 欣志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 無機機能材料研究部門, グループ長 (10184136)
井上 剛志 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70273258)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スマート材料 / エナジーハーベスティング / イオン導電性高分子 / 誘電エラストマー / 電磁アクチュエータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題が対象とするトランスデューサはひとつではなく,高分子アクチュエータや圧電材料などのスマート材料と,電磁トランスデューサである.1年目と同様,以下に,トランスデューサの種別ごとに研究実績の概要をまとめる. IPMC(Ionic Polymer-Metal Composite)について:本年度は,新たにIPMCの発生電圧を表すモデルについて検討を行った.物理モデルについて,共同研究者の産総研の安積欣志博士のグループとともに研究を行い,曲げ変形に対する電場とイオン流,溶媒流に関する方程式を得た.導出された物理モデルは,湿度(IPMCの含水率)をパラメータとして含んでおり,環境の水分によって応答が異なる現象が再現できるものとなっている.実験では,変形によって生じる電圧を計測し,ステップ応答と調和応答について特性を調べた.また,電圧計測に比べて比較的計測しやすい電流についても計測を行った.以上の結果は国際会議SPIE Smart Structures/NDEにて報告を行い,また,共同研究の成果として論文が掲載された. 誘電エラストマーについて:昨年に引き続き,従来提案されている発電回路のモデル化,動作原理の解明と最適設計を行った.成果は国内学会SICE SI2015にて報告を行い,また,論文を投稿中である. 電磁アクチュエータについて:エナジーハーベスティングにおいてインピーダンスのモデル化は重要と考えられる.本年度は,渦電流の影響を考慮することによって,実験で観察されるインピーダンスの周波数応答を説明しうる新しいモデルを構築した.その成果については論文投稿の準備を進めている.さらに,エナジーハーベスティングの回路解析について,国際会議ICAST2015にて報告を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究概要の項目と同様,以下に,トランスデューサの種別ごとに進捗状況をまとめる. IPMCについて:今年度は,IPMCの物理モデリングについて研究が進展した.とくに,湿度をパラメータとして物理現象を説明しうるモデルに着目しているところが大きな特徴である.実験においても,発生した電圧や電流の計測方法についての検討を行っている.本年度のはじめに,今後必要と考えた内容についての進展があったと考えている. 誘電エラストマーについて:初年度に得られた成果をもとに,発電に必要な回路であるself-priming circuitの解析をすすめ,学会発表を行うことができた.また,学会発表だけではなく,発電に関する解析的なモデルが得られ,論文投稿につなげることができた. 電磁アクチュエータについて:本年度は,インピーダンスのモデル化において,従来にない新しいインピーダンスのモデルを提案することができた.具体的には,渦電流を考慮することによって,高周波における分布定数系としての特徴をもつモデルを導出したことである.現在,論文投稿の準備をすすめている.さらに,エナジーハーベスティングのための発電回路の解析を行い,理論的には従来提案されている方法よりも多くの充電が可能であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
以上の項目と同様,以下に,トランスデューサの種別ごとに今後の研究方策をまとめる. IPMCについて:湿度がとくに重要なパラメータであることがわかってきたため,精度良く湿度の条件を制御したうえで実験を行うことを考えている.得られたモデルは電圧が出力されるモデルであるが,電流についても表現できるモデルを導出する必要がある.また,物理モデルが導出されたが,偏微分方程式で表されており,そのシミュレーションを有限要素ソフトウェアによって行う必要がある.さらに,物理モデルでは,工学的に使いにくい.そのため,これまでに得られた物理モデルをもとに,低次元のモデルを導出することを検討していく. 誘電エラストマーについて:発電に必要なSelf-priming circuitの数理モデル化と解析を行うことができたが,電圧を降圧する必要や,蓄電については新たなアイデアが必要である.先行するAuckland大のグループとも可能であれば協力し,降圧や蓄電に関する研究を進める. 電磁アクチュエータについて:エナジーハーベスティングのための従来回路について,制御方法を提案したがシミュレーションに留まっている.そのため,実験によって提案した制御則の有効性を確認する必要がある.実験には,回路作製が必要となる.また,従来の回路でも,どのような回路が最もよいのか,十分に検討がなされているとはいえないため,いくつか他の回路を試していくことを検討する.
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Causes of Carryover |
初年度,トランスデューサのマルチフィジックスなシミュレーションのため,数式を用いた支配方程式のカスタマイズを行うことが可能とされる市販の有限要素シミュレーションソフトウェア(COMSOL)を購入した.本年度,オプションモジュールの追加購入を予定していたが,IPMCのモデル化においてはまだその機能を必要としなかったため,保留している.ほかに,研究の進展により,エナジーハーベストされた電力を計測する必要が今後出てくることが予想されるため,微小な電力が計測できる電力計の検討を始めている. また,今年度は海外への出張旅費を抑えることができた. 以上の理由により,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
トランスデューサのマルチフィジクスシミュレーションのため,COMSOLのオプションモジュールの追加購入を最終判断する.一方,電力計測の必要性も出てきたため,電力計についても検討を行い,総合的に判断を行う.また,誘電エラストマーの実験に用いるため,誘電エラストマー発電用の回路キットの購入を予定している.なお,実験に用いている計測制御用のPCが古くなり,実験用PCの購入を予定している.さらに,国内学会,国際会議の出張旅費についても必要と予想される.
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