2015 Fiscal Year Research-status Report
想定を超える地震動に対抗しうる構造制振システムの構築
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26420183
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
渡辺 亨 日本大学, 理工学部, 教授 (80265933)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 振動制御 / 動吸振器 / 連結制振 / 免振 / 可変ピッチプロペラ / 長周期地震動 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず「免振+連結制振」においては,昨年度製作した実験装置を用いて,より実際的な制約の元での振動抑制効果の評価を行った。すなわち,昨年度の装置では過大であった減衰係数を持つ4ダンパを,無次元化の手法を用いて実構造物で許容可能な弱い減衰係数のものに置き換え評価を行った。その結果,制振効果は大幅に低下したが,昨年度に確認した制振特性(ダンパの配置により加速度応答と変位応答の間にトレードオフ的な特徴が見られること,一般に頂部にダンパを集中させたほうが制振効果は高まることなど)はおおむね不変であることを確認した。 次に「ワイヤ動吸振器」においては,昨年度製作した実験装置を改良した装置を製作し,より大振幅での加振実験を可能とした。これにより,実際に大振幅での加振が実現したが,装置自体の質量が加振台の容量に対して過大であり,実際に大振幅加振を行うと加振台がフレームアウトしてしまうという問題が判明した。より大型の加振台を用いるか,より小型で精度の高い実験装置を作り直すか,精緻なシミュレーション解析に切り替えるか,現在検討中である。 次に「プロペラダンパ」については,大出力のモータに交換して本格的な推力測定を行った結果,推力が(理論値より)大幅に低下していることが明らかになった「推力低下」の問題を解明すべく様々な試行錯誤を行った。当初「プロペラのねじれ」を原因と予想していたが,高速度カメラ撮影による解析結果ではプロペラねじれはほとんど生じていなかった。更なる理論計算および吹流しによる検討の結果,原因は「動力(モータ出力)不足」および「装置内部の空気の流れ」にあるということが判明した。また,昨年度(田島氏の協力による)マルチボディ的解析の結果見出された原因不明の挙動であるが,田島氏に再度指導を依頼し解明に取り組んだがそのメカニズムは依然未解明である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず「免振+連結制振」についてはおおむね順調に推移している。当初の予定とはややずれたが,実験により提案するシステムの有効性の検証と特性の解明が達成されており,順調な進行と言える。 これに対し「ワイヤ動吸振器」は,動吸振器を含む装置の製作自体には成功したが,加振台とのマッチングを考慮していなかったため肝心の性能評価が行えなかった。 また「プロペラダンパ」については,依然として予定通りの推力が得られていない。ただしその原因についてはおおむね解明されたので,今後装置の改良が順調に進めば当初予定の研究は遂行可能と思われる。また原因不明の挙動については「単なるプログラムミス,ないしは数値誤差の累積」という見方も田島氏から早くから指摘されていたが,「理論的な解明」に固執していたためそのような見方からの検討への着手が遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
「免振+連結制振」においては,1方向(平面振動)での制振効果は確認できたので,より実用性の高い制振システムをめざし「2方向振動」へ対応可能な装置を製作し,その有効性を実証する。また,無次元化の手法を用いて,実地震波に対する免振層変位の実構造物換算を行い,より実証的な性能を明らかにする。 「ワイヤ動吸振器」については,学内外の大容量加振台を利用しての実験を試みると共に,精緻なシミュレーションプログラムを開発しこれによる理論解析も同時に試みる。ワイヤ動吸振器の場合,ワイヤに作用する内力が変数となるためシミュレーションは非常に複雑となるが,何らかの方法で簡略化できないか検討する。 「プロペラダンパ」については,動力源を電動モーターから内燃機関に切替え,出力を大幅に像対されると共に,空気力学に詳しい研究者に協力を仰ぎ,プロペラハウジング内部の導流部を改良することで,所与の推力を得ることを目指す。その上で当初予定の制振実験を行う。また原因不明の挙動については引き続き田島氏の指導を仰ぎ検討を進める。ただし今後は「エラー」の可能性も排除せず検討を行う。
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Causes of Carryover |
最大の理由は「ワイヤ動吸振器」および「プロペラダンパ」の実験の遅れである。当初予定ではこれらの実験遂行のためセンサ類を調達する予定であったが,装置不調による実験の遅れでそれらセンサ類を使う実験の見通しが立たなかっために調達を見送った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでの報告で述べたとおり,まず「ワイヤ動吸振器」においては,研究室外の大型加振台の利用,もしくは精緻なシミュレーションプログラム開発を行うため,加振台使用料ならびに開発ソフトウェアプラットフォーム購入に支出する。一方,「プロペラダンパ」においては,動力源を電気モーターからエンジンに変更するため,新たにエンジンの購入が必要となる。これにも支出する予定である。
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Research Products
(4 results)