2014 Fiscal Year Research-status Report
楕円型転がり接触関節を有する多自由度筋骨格ロボットフィンガー
Project/Area Number |
26420196
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
西川 敦 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (20283731)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 筋骨格ロボット / ロボットハンド / バイオロボティクス / バイオミメティクス / 中手指節関節 / 筋拮抗比 / 筋シナジー / 空気圧アクチュエータ |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの関節は構造上、屈伸しながら回転軸が移動するという複雑な動きをとる。その一方で、ヒト筋骨格系を構成する拮抗筋ペアへの運動指令値の比(筋拮抗比)が平衡点(目標関節角度)とほぼ線形な関係があることが最近明らかにされている(知見A)。本研究では、ヒト中手指節関節(MP関節)の形状と機構を模倣した「楕円型転がり接触関節を有する多自由度筋骨格ロボットフィンガー」を開発し、ヒトの身体運動メカニズムを構成論的に理解することを3年間の研究目的としている。 第1年度は、MP関節に関与する「筋の配置」、「腱の付着位置」、「拮抗筋ペアの特性の差」に着目した研究を実施し、以下の成果が得られた。 (1)(a)筋取り付け位置が回転軸に近い「手内配置モデル」、(b)楕円型転がり接触関節を有する「手内配置転動モデル」(c)筋取り付け位置が回転軸から遠い「前腕配置モデル」、(d) 楕円型転がり接触関節を有する「前腕配置転動モデル」(e)(c)において屈筋の牽引力が大きい「前腕配置屈曲重視モデル」の5種類の実機を製作し、関節角度制御実験を行った。その結果、(d)および(e)がヒトMP関節の屈曲と同じ可動範囲を保持しつつ「筋拮抗比―関節角度」の関係が直線に最も近くなることがわかった。 (2)(a)腱付着位置が回転軸に近い「近位付着モデル」、(b)同位置が回転軸から遠い「遠位付着モデル」、(c)(b)において屈筋の牽引力が大きい「遠位付着屈曲重視モデル」の3種類の挙動を計算機シミュレーションで確認した。その結果、(c)がヒトMP関節の屈曲と同じ可動範囲を保持しつつ「筋拮抗比―関節角度」の関係が直線に最も近くなることがわかった。 以上より、ヒトの関節構造、深指屈筋や指伸筋が前腕部にあることや腱の付着位置が指先付近に位置していること、屈筋の方が伸筋よりも牽引力が強いことが「知見A」の結果に関係していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目的は、「楕円形転がり接触関節を有する多自由度筋骨格ロボットフィンガー」を開発し、ヒトの身体運動メカニズムを構成論的に理解することである。この目的に対して、本研究費交付申請時の研究実施計画においては、【サブ課題1】屈曲・伸展運動と外転・内転運動を行うことができる「自由度2」の転動関節モデルの構築、【サブ課題2】主動筋と拮抗筋の協調に基づく筋骨格「転動」関節モデルの構築と制御方式の確立、の2点を平成26年度(第1年度)の実施項目として掲げていた。 これに対して、サブ課題1は当初計画よりも早く進展・完了したため、前倒し支払請求を行い、平成27年度(第2年度)実施予定であった【サブ課題3】楕円型転がり接触関節を有する筋骨格ロボットフィンガーの構築に着手することができた(本課題は次年度も継続実施)。一方で、サブ課題2については、モデル構築ならびに制御方式の考案ともに、順調に進んでいるが、現時点では、当初の目的に掲げていた「確立」(すなわち提案手法の実装・評価)までには至っておらず、次年度も引き続き実施していく必要がある。 以上をまとめると、一部の課題については当初計画より進展があり、一部の課題については、おおむね順調に進んでいるものの次年度に継続実施する必要があるため、3年間の研究目的・研究実施計画に即してトータルで自己評価した結果、「おおむね順調に進展している」と結論づけた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(平成27年度)は、当初計画より先行して進めているサブ課題3(楕円型転がり接触関節を有する筋骨格ロボットフィンガーの構築)、ならびに、前年度の継続事項であるサブ課題2(筋骨格転動関節モデルの制御方式に確立)の2つの課題を「並行(※)」して進めていく。 (※:交付申請時の計画では、平成26年度にサブ課題1・2、平成27年度にサブ課題3を集中的に実施という方針を掲げていたが、26年度の実施状況を踏まえ、今後は上記の計画で推進する。) なお、サブ課題2の検証は、前年度までに構築したハードウェア(関節モデル)を利用するものとし、サブ課題3で構築するロボットフィンガーへの制御方式の実装ならびに評価(平成27年度に並行実施するサブ課題の統合)は、最終年度(平成28年度)としたい。
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