2016 Fiscal Year Research-status Report
地球スケール電磁環境問題のための数値電磁界解析手法の確立
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26420224
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
安藤 芳晃 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (30323877)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | VLF/LF帯伝搬 / FDTD法 / PML |
Outline of Annual Research Achievements |
地球スケールの電磁界解析で必須な技術である吸収境界条件の開発に成功した。吸収境界条件ではPerfectly Matched Layerが最も高性能かつ広く使われているが、球座標系のPMLは径方向のみ吸収性能を持つものしか存在せず、全方位に吸収するものはこれまで確立されていなかった。地球規模の電磁環境工学において中心となる周波数帯であるVLF/LF帯では、球座標系において全方位で計算領域を有限距離で打ち切る必要があり、PMLの確立が重要となる。本研究では、Complex stretched coordinateを用いた定式化で所望の性能を持つPMLの開発に成功、十分な吸収性能が得られることを確認した。またこの周波数帯では、電離圏を磁化プラズマとモデル化した空間を打ち切る必要があり、これも本研究で開発したPMLで実現が可能である。開発した吸収境界条件は計算機サーバ上で実装した。現在は最後のテーマである各種ケーススタディを進めているところである。 ULF帯伝搬については、無条件安定となる数値解法を検討しているが、近年注目を集めているLaguerre多項式を時間積分に用いた無条件安定FDTD法の適用を検討している。この手法は吸収境界条件の性能がまだ不十分であるが、計算効率が従来法に比べて高いことが知られており、ULF帯伝搬の解析に適していると考えている。問題となるLaguerre型FDTD法の吸収境界条件であるが、複素周波数シフト型や補助微分方程式型といったPMLも各種開発されており、ULF帯に適した手法を検討しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
VLF/LF帯の計算においてネックとなっていた吸収境界条件が開発できたことで、汎用シミュレータの完成に近づいたと言える。計算をさらに高速にするにはメモリや計算負荷の効率化を図る技術を取り入れる必要があるが、現時点では時間をかければ計算が可能な段階に至っている。開発した計算技術を用いてケーススタディを進めることが残された課題である。 ULF帯ではまだ極めて効率的と言える解法は見つかってはいないが、現在開発された各種手法について、その特性を比較できるところまで進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した計算技術を用いてケーススタディを進める。VLF/LF帯伝搬では観測デバイスも開発して、実際の伝搬の計測を行う予定である。 観測デバイスは、マイコンを利用して小型のものを多数準備することで、下部電離圏の状態などをモニタリングすることを考えている。 また、ULF帯伝搬については、近年注目を浴びているLaguerre多項式を用いた無条件安定FDTD法の適用可能性について検討しており、こちらの吸収境界条件の検討を完成させ、各種手法の効率について比較検討する。
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Causes of Carryover |
VLF/LF帯伝搬を計算するための球座標系FDTD法におけるPMLが既存のものでは不十分であることが分かり、この開発を本年度行った。開発は成功したが、その性能評価を精密に行っていたため、まだ成果発表までは至らなかった。成果発表に使用する予定であった助成金を使用しなかったため、次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
開発した球座標系PMLの成果発表に使用する。また、開発したシミュレータでケーススタディを行っているが、観測との比較を行う予定でいるため、観測デバイスの開発に必要な計測装置と電子部品に使用する。
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