2014 Fiscal Year Research-status Report
広域ビル空調群の高速電力需要制御における確率的均し効果不安定現象の解明と対策
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26420226
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
蜷川 忠三 岐阜大学, 工学部, 教授 (80630821)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | デマンドレスポンス / スマートグリッド / ビル空調 / OpenADR / 電力需要応答 / アグリゲータ / 電力系統 / 電力管理システム |
Outline of Annual Research Achievements |
スマートグリッド電力需要制御ADR(Automated Demand Response)の対象需要モデルとして,20棟からなるビル群空調設備の電力需要動特性モデルが完成した。モデリングに当たっては,実際のオフィスビルの空調運転の1分間隔実測時系列データから,ニューラルネットワークによりシステム同定してモデル化した。このモデルと,スマートグリッドOpenADR通信ゲートウェイと,ADR広域通信Dummynetと,ADRサービスプロバイダであるAggregatorソフトウェア,電力系統のOpenADRサーバソフトウェアを統合して,実時間ADR制御シミュレーション設備が完成した。この設備をADREX(Automated Demand Response EXperiment)と命名した。 電力系統からのスマートグリッド電力需要応答指令に基づき,Aggregatorが20棟のオフィスビル空調電力を制御対象として,PI制御するシステムの動特性振る舞いをMatlab/Simulinkで予備検討した。次に,上記ADREX設備において,Aggeregatorが20棟のビル空調設備群に対して,PI制御をするエミュレーション試験を実行できるようになった。ここで,エミュレーションとは実時間で実物と忠実な動作させるという意味である。 その結果,電力系統側の要求指令に対するステップ応答を調べてところ,数10%オーバーシュートして,かつ400秒程度の周期振動現象がみられる場合があることが分かった。これは,10分程度の時間間隔で高速に電力需要応答指令を切り替えようとするスマートグリッドFastADRにとって問題となる現象が発生しうることを発見した。この問題現象の発見は,本研究が当初から目指していた主要な研究実績といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は2年間かかって推進する予定だった目標は,ビル20棟分の空調電力エミュレーション設備に対するADRのフィードバック制御においてステップ応答に発散する振動状態が現れること発見するところまで到達することであった。しかし,1年目でADRエミュレーション設備に対するPI制御において発散振動現象を確認できるところまで研究が加速度的に進展した。 また当初は研究計画の予定になかった,Matlab/Simulinkによる机上検討および各ビル空調の伝達関数を合成するAggregated Transfer Functionとして伝達関数に数式表現することができて論文採録決定となった。さらに,予定以上の成果として,個々のビル空調電力応答特性を,サンプリング時間が30秒または60秒毎の離散系として,広域ネットワーク通信のタイミング遅れによる無駄時間なども含めた,ビル空調電力需要フィードバック制御系をz変換伝達関数で表現した離散系解析モデルも開発することができた。これは予定を大幅に上まわる成果である。 本研究1年目で構築したADREXエミュレーション設備と,Matlab/Simulink制御系モデルと,上記のz変換離散系解析モデルの3つの手法を比較検討できる体制が整った。これで,ビル空調電力をFastADRフィードバック制御した場合の発散振動現象の性質を解明していくことが可能となったので,3年目に予定していた20棟ビル空調設備に対する5分毎ステップ指令に対するフィードバック即応安定化させる検討作業を2年目に完了できる目途が付いた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度完成した20棟のADR対象ビル空調電力エミュレーション設備使って,5分ごとに電力会社中央給電指令所からADR電力需要指令が変更された場合,Aggregatorが出す5分ごとの各ビル空調設備に対するフィードバック制御ステップ応答において,安定であることはもちろん,オーバーシュートが少なくオフセット残偏差もなく,即応制定するフィードバック制御系を実現する条件を解明する。具体的には,広域ADRネットワーク通信のADR指令タイミングとデータ伝送時間からなるむだ時間,ディジタルPID制御パラメータ,ディジタル制御周期サンプリング時間,ビル通信Gatewayから空調設備のビル内通信のむだ時間など,制御系のシステム設計必要条件を解明する。そのうえで,現実のビル空調設備の電力制御応答特性,広域インターネットVPN(Virtual Private Network)データ伝送状況などを踏まえた上で,近未来のビル空調群に対する高速デマンドレスポンスの広域フィードバック制御実現するシステム設計条件を提言する。
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Causes of Carryover |
米国電気学会IEEEの国際会議Internatinal Conference on Smartgrid Technologies(ISGT2014)に欧州出張して発表する予定であったが,電気学会国内発表に切り替えたため約40万円の支出減となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画になかった自動制御系のMatlab/Simulinkによる制御性能シミュレーションおよび離散伝達関数による解析のため,研究補佐員を採用する。そのための増加費用に40万円を充てる。
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