2015 Fiscal Year Research-status Report
パルスレーザーラマン散乱法によるLED発光部のリモート温度計測
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26420237
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山形 幸彦 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (70239862)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 照明用白色LED / ジャンクション温度 / パルスレーザー / GaN / ラマン散乱 / 蛍光樹脂 / 1次元分布 / 同時計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
パルスレーザーラマン散乱法を用いた照明用白色LEDジャンクション温度のin-situ計測法の確立を目的とし,本年度は主にLEDモジュール内の複数チップからのラマンスペクトルの計測,及び白色LED用の蛍光樹脂がラマン散乱計測に与える影響の定量化を行った.具体的には,シート状レーザー光と高波長分解能パルスラマン受光システムを用いて,蛍光樹脂無し青色LEDモジュールの無点灯時,及び点灯時の複数チップからのラマンスペクトルの同時取得,無点灯の蛍光樹脂有り白色LEDモジュールでのスペクトル解析を通じたGaN-E2Hラマンスペクトルの同定を行った. シート状レーザー光を蛍光樹脂無し青色LEDモジュール内の複数チップに垂直入射し,レーザーと同軸方向からの散乱光を分光器の入口スリット上に結像し,ゲート機能付きICCDカメラにより各チップ位置でのラマンスペクトルを計測した.5個のチップのジャンクション温度に対応するGaN層のE2Hラマンスペクトルの同時取得に成功し,LEDモジュール内の複数チップのジャンクション温度計測システムの構築に成功した. 次に,白色LED前面に塗布された蛍光樹脂の吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの解析を行った.また,蛍光樹脂有り白色LEDモジュールに633nmのシート状レーザー光を入射し,各位置での散乱スペクトルを取得した.白色LEDモジュールにおけるチップ位置とそれ以外での計測スペクトル,及び青色LEDモジュールでの計測スペクトルとを比較検討することで,白色LEDジャンクション部のGaN-E2Hラマンスペクトルの同定・検出に初めて成功した.レーザー条件を最適化して蛍光樹脂の影響を抑制することで,白色LEDのジャンクション温度計測が可能である事を実証した. パルスレーザーラマン散乱法による白色LEDモジュール内の複数のジャンクション温度計測の有用性と実現可能性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では最終的な被測定対象を照明用として複数のLEDチップが配置された白色LEDモジュールとしている.本年度の主な目標は,研究遂行中に新たな優位点として見出したLEDモジュール内の複数チップからのラマンスペクトルの同時取得である.また,本研究申請時の研究計画や昨年度の実績報告書に記した,白色LED用の蛍光樹脂体がパルスレーザーラマン散乱計測に与える影響の定量化である.これらを効率的に行うために,レーザー光/ラマン散乱光のLED表面への垂直・同軸入射/受光を行う新たな計測・分光システム(H26年度構築),及びシート状レーザー光を用いて,先ず蛍光樹脂無し青色LEDモジュール内の複数のチップからのラマンスペクトルの同時取得を行った.5個のチップのジャンクション温度に対応するGaN-E2Hラマンスペクトルを同時に取得できた.また,白色LEDモジュールの前面に塗布された蛍光樹脂がラマン散乱計測に及ぼす影響を調査し,レーザー条件を最適化することで蛍光樹脂の影響を抑制して,白色LEDモジュールにおいてもラマン散乱計測が可能である事を示した.実際に633nmのパルスレーザー光を使用して,白色LEDモジュールの複数チップからのラマンスペクトルを計測することに初めて成功した.それらの結果として,動作中の白色LEDモジュール内の複数のジャンクション温度のリモート計測法として,パルスレーザーラマン散乱法の実現可能性と有用性を示せた.しかしながら,現状では目標とした温度測定誤差±5℃を達成できていないため,本年度の達成度として表記の自己評価とした.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究成果により,パルスレーザーラマン散乱法が発光中の照明用白色LEDモジュール内の複数チップのジャンクション温度計測に非常に有効である事が示された.一方で,現時点では,当初からの目標としている温度測定誤差±5℃を達成できていない.これを達成するためには,さらに高感度で高波長分解能を有する計測システムを構築する必要がある.レーザー入射系はLEDチップの光学的損傷や白色LED用の蛍光樹脂の影響抑制から,現状以上の改善は困難であり,これを達成するためには受光システムの改善が必須となっている. 高感度で高波長分解能を有する受光システムとして,最終年度に新たにダブル分光器を構築する予定である.そのための大まかな設計に既に着手している.現状に比べて刻線本数,有効面積が共に約1.5倍のホログラフィックグレーティングを2個使用し,それとともに明るいレンズ系を使用することで,ラマン信号強度が約1.1倍,温度の測定誤差が±5℃を達成できる予定である.これが設計通りに構築できれば,照明用の白色LEDのジャンクション温度計則に非常に優位なものとなると思われる. また,本手法の新たな拡張のターゲットとして,最近脚光を浴びてきた照明用レーザーダイオードのジャンクション温度計測の可能性についても検討する予定である.
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Causes of Carryover |
主に,成果発表のための学会参加における旅費が少額だったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に光学部品,及び電子部品等の購入に充てる.
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Research Products
(7 results)