2015 Fiscal Year Research-status Report
大気圧ハイドロカーボンプラズマ支援CVDによるDLC成膜技術開発に関する基礎研究
Project/Area Number |
26420247
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
小田 昭紀 千葉工業大学, 工学部, 教授 (70335090)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ダイヤモンドライクカーボン膜 / プラズマ支援CVD / 大気圧プラズマ / ハイドロカーボンプラズマ / プラズマ診断 / プラズマシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度で実施された本研究課題の成果を以下にまとめる.
(1)プラズマシミュレーション:当該年度では,(a)非平衡大気圧ヘリウムプラズマのシミュレーション,(b)低圧ハイドロカーボンプラズマのシミュレーションの2つの柱で研究を遂行した.(a)では,大気圧条件下で安定なプラズマ生成に実績のあるヘリウムガスを原料ガスとして,非平衡大気圧ヘリウムプラズマの軸対称3次元モデルにより,高周波(100 kHzと13.56 kHz)駆動条件時のプラズマの基礎特性や径方向均一性に及ぼす誘電体材料特性(誘電率,熱伝導率,二次電子放出係数)の影響を解析した.その結果,安定かつ径方向均一な大気圧プラズマ生成には,誘電率や誘電体表面からの二次電子放出係数のみならず,熱伝導率も複雑に関与していることが明らかとなった.(b)では,ハイドロカーボンプラズマの軸対称3次元モデルを構築し,シリコン含有ダイヤモンドライクカーボン成膜で利用される容量結合型RFテトラメチルシランプラズマのシミュレーションを実施し,本プラズマが与えられたリアクタ内で如何なる密度で空間的に分布するかを解析した.
(2)プラズマ診断:当該年度では,アルゴン希釈されたハイドロカーボンガス(メタン)中の容量結合型RFプラズマの基礎特性(基板へ入射する本プラズマ中で生成されるラジカル種やイオン種の同定,これらの存在比,入射イオンエネルギー分布の外部パラメータ依存性など)を四重極質量分析装置により調査を行った.その結果,低ガス圧条件にもかかわらず,メタンガスが直接電離に伴って生成された低次のハイドロカーボンイオンのみならず,電子による解離性電離もしくは電子衝突解離を通じて生成された解離種(ラジカル種)が直接電離を通じてイオン化した高次のハイドロカーボンイオンも存在しており,特に後者のイオンが前者のイオンに比べて相対的に多いことが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究課題の進捗状況から達成度を(1)プラズマシミュレーション,(2)プラズマ診断の観点からそれぞれ以下にまとめる. (1)プラズマシミュレーション:当該年度では,(a)非平衡大気圧ヘリウムプラズマのシミュレーション,(b)低圧ハイドロカーボンプラズマのシミュレーションの2つの柱で研究を遂行した結果,得られた知見や構築したプラズマモデルをもって,次年度(最終年度)に向けた非平衡大気圧ハイドロカーボンプラズマのシミュレーションを実施するための基盤が形成できたと考えられ,その意味において当初の計画以上に進展していると判断される. (2)プラズマ診断:当該年度では,ハイドロカーボンガスとしてメタンを適用し,アルゴン希釈されたメタンガス中での容量結合型RFプラズマにおける,ダイヤモンドライクカーボン成膜に直接作用する意味で非常に重要な,基板へ入射するハイドロカーボンラジカル種およびイオン種の同定,これらの存在比,入射イオンエネルギー分布が外部パラメータ条件(ガス圧力,入力電力,ガス流量など)で如何なる依存性を示すのかを四重極質量分析装置により調査を行った.本実験を行うに際し,ハイドロカーボンガスのみでプラズマを生成し質量分析を行った結果,質量分析装置内部が成膜されてしまい,それに伴い修理を行っていたため,その分,数ヶ月研究の進捗が遅れてしまったため,急遽アルゴンガスで希釈したハイドロカーボン(メタン)ガスにて計測実験を進めることになった.そのため,実験においての進捗は若干遅れている状況と判断される.
以上をまとめると,当該年度としての研究進捗としては,全体的に概ね順調に推移していると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の研究の推進方針を,(1)プラズマシミュレーション,および(2)プラズマ診断とに分けてそれぞれの方策を示す. (1)プラズマシミュレーション:当該年度で構築した,非平衡大気圧ヘリウムプラズマおよび低圧ハイドロカーボンプラズマのシミュレーションモデルをもって,非平衡大気圧ハイドロカーボンプラズマのモデルを構築する.その上で,本プラズマのシミュレーションを行い,径方向均一かつ安定な非平衡大気圧プラズマ生成に関する知見をまとめる. (2)プラズマ診断:容量結合型高周波ハイドロカーボンプラズマの四重極質量分析装置によるプラズマ診断を行い,ダイヤモンドライクカーボン成膜に寄与するハイドロカーボンイオン種およびラジカル種に関する知見を外部パラメータ毎にまとめる.その際,使用する原料ガスとして,アルゴン希釈されたメタンやアセチレン,そして水素希釈されたメタンやアセチレンなどを予定している. その後,上記(1)および(2)とで得られた成果を比較し,本研究課題に通ずる研究成果としてまとめる.
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