2015 Fiscal Year Research-status Report
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26420258
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Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
大下 祥雄 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10329849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 俊和 明治大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20500458)
町田 英明 気相成長株式会社(CVD研究部及び合成研究部), その他部局等, その他 (30535670)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電気エネルギー / 発生 / 変換 / 貯蔵 |
Outline of Annual Research Achievements |
再生可能エネルギーである太陽光発電は、今後の基幹エネルギー源としてその重要性が高い。しかし、夜間に発電ができない、雨天時には発電量が大きく減少するなど、エネルギー源としての不安定性が今後のさらなる普及に際して問題である。そこで、本研究では、太陽電池により光エネルギーから変換して得られた電気エネルギーを安定な分子の形で保存することにより先の問題と解決することを目標としている。具体的には、太陽電池を用いて水を分解して水素分子を発生させ、その水素分子から触媒を用いてプロトンを発生させる。そのプロトンを分子中に存在する酸素の2重結合部分にOHの形で貯蔵させ、最終的には分子中に貯蔵した水素を水素分子として取り出して燃料電池により電気を得る。この時に重要なのは、プロトンを付加する分子が無毒であるなど環境に対して負荷を与えないことが重要である。本研究では、天然化合物を基本に材料を選定している。一方、水素分子からプロトンを生成するためには、ポリシランパラジウム触媒を用いている。これまでに、本触媒によりデヒドロアスコルビン酸に水素が添加され、アスコルビン酸に還元されることを示した。次のステップとして、アスコルビン酸を用いて、燃料電池により電気を取り出せることを確認した。これらにより、太陽光発電による水の分解、触媒により分解して生成した水素分子からのプロトンの生成、生成したプロトンの分子への付加、燃料電池によるプロトンを付加した分子を用いた発電、の一連のプロセスが実証された。ただし、循環システムとしての課題は未だ残されており、今後この点に関する研究が必要な状況にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、ポリシラン金属触媒を充填したフロー型の反応装置を用いて、水素分子を分解したプロトン付加によりデヒドロアスコルビン酸がアスコルビン酸に還元されることを示した。そこで、次のステップとして、アスコルビン酸水溶液を燃料電池に流すことによる発電を検証した。燃料電池は株式会社ケミックス製のPEM-004DMを使用した。サイズ4cm2、触媒はアノードにPtRu/C、カソードにPt/C、電解液はNR212、酸化剤は空気(0.2ml/min.)を用いた。発電が視覚的に分かりやすい様に100mV以上で駆動するモーターを用いたところプロペラが回り、発電が確認された。そこで、燃料電池の発電後の水溶液をTLCとNMRにより、発電時の酸化によりデヒドロアスコルビン酸が生成されているか調べた。しかし、注入したアスコルビン酸の一部しか燃料として使われないために燃料電池から排出された水溶液からはTLCとNMRでチェックしてもデヒドロアスコルビン酸が生成されていることの確認は困難であった。一方、燃料電池ではメタノールは使えないため、デヒドロアスコルビン酸の還元が水溶液で可能かどうか検証した。その結果、アルコール系溶媒を用いなくても1時間以上のフローを行う事により還元が可能であることが示された。最終的に、還元装置と燃料電池キットを溶液でループさせて水素がキャリアされる事を検証した。しかし、予想に反して時間とともに発電量が減少した。以上に加え、アスコルビン酸以外で水に溶解して燃料電池で発電できる水素キャリアの探索を行った。その結果、チルヒドロキノンを用いた場合に発電が確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
ポリシラン金属触媒により水素分子を分解生成したプロトンの分子構造への付加によりデヒドロアスコルビン酸をアスコルビン酸に還元し、得られたアスコルビン酸を用いて燃料電池により発電する循環系システムを構築した。しかし、時間とともに発電電圧が低下した。その理由を調べるため、3000分循環した後の水溶液のTCL測定を行ったところ、アスコルビン酸、デヒドロアスコルビン酸以外の信号が確認された。より詳細に調べるために、ポリシランパラジウムのフロー装置を用いてアスコルビン酸水溶液を水素還元したところアスコルビン酸、デヒドロアスコルビン酸の信号は消え他の信号だけが観察された。これは触媒の還元能力が高過ぎたために、デヒドロアスコルビン酸がアスコルビン酸を通り越しグコノラクトンまで還元された可能性が高いことを意味する。そこで、今年度は、燃料電池によるアスコルビン酸の使用効率を上げ、還元装置にはデヒドロアスコルビン酸だけが送り込まれる様に改造することによりグルコノラクトンの生成を抑えることを試みる。このためには、発電された電力を積極的に消費する様に装置などを改善する。一方、パラジウム以外のポリシラン金属触媒を調整し、その還元能力を調べ、適度な還元力を有する触媒を探索する。加えて、昨年度に発電が可能であることが示されたメチルヒドロキノンへの水素添加を試みる。最終的には、還元装置と燃料電池系において溶液をループさせ水素がそれら分子にキャリアされる事を検証する。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通りに予算を消費した。ただし、当初予定していた実験内容を実験結果に基づいてい変更したため、実験消耗品に関して一部予定より使用実績が低くなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験用消耗品代に使用する予定である。
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