2014 Fiscal Year Research-status Report
水溶液に替わる新規電解溶媒からの磁性膜創製に関する研究
Project/Area Number |
26420274
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
柳井 武志 長崎大学, 工学研究科, 助教 (30404239)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 磁性材料 / Deep Eutectic Solvent / めっき |
Outline of Annual Research Achievements |
Fe, Fe-Ni, Fe-CoなどFe基磁性膜をDES浴から直流電解めっき法により作製し,浴組成やめっき条件が,各種膜特性に与える影響を検討した。Fe膜に関しては,浴温度を60-140 ℃まで変化させ試料を作製し,表面形態や磁気特性,電流効率などを評価した。その結果,浴温度が100 ℃付近で90 %を超える高い電流効率が得られることがわかった。膜の表面形態は浴温度によって変化し,滑らかな膜は浴温度が80 ℃付近で得られることがわかった。80 ℃程度の浴温度は水溶液を用いためっき浴と同程度の温度であり,溶融塩溶媒のように過度に高い温度(400~500 ℃)を必要とせず,高い電流効率で磁性膜が作製できることを示した。Fe-Ni合金膜に関する検討では,Fe試薬とNi試薬の割合によって容易に膜組成を変化させることが可能であることが確認された。電流効率は幅広い組成範囲で90 %を超え,Ni含有量が多くなると若干電流効率が下がる傾向が得られた。また,水を溶媒とするFe-Niめっき膜と同様,Fe22Ni78付近の組成で低保磁力を示すことが確認された。Fe-Co合金膜に関しては,膜組成に関してはFe-Ni膜同様,Fe試薬とCo試薬の割合を変化させることで,容易に制御できることがわかった。電流効率も,Fe-Ni膜と同様,幅広い組成範囲で90 %を超える高い効率を示すことを確認した。膜断面をSEMで観察したところ,空孔などは観察されず,緻密な膜が得られることがわかった。Fe70Co30付近の組成で飽和磁化が最大となり,飽和磁化のFe組成依存性は,スレーターポーリング曲線から予測される飽和磁化の変化の挙動と良く一致することがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度は,装置の改良とFe, Ni, Coの単体膜作製とその特性評価を研究計画に掲げ,それらに着手した。装置の改良に関しては,既設の電源よりももう一桁小さな電流値まで制御できる電源を購入し,装置を改良したことで,実験効率の向上ならびにより細かな実験条件の設定が可能となった。Fe膜は先行研究を進めていたため,構造解析や構成相解析などを進展させた。その結果,めっき条件によっては,結晶粒が微細化するなど新しい知見が得られ始め,現在,その成果をまとめるべく,追加でデータを取得中である。また,NiやCo単体膜に関しては,膜の表面形態や電流効率などの評価を行い,概ねFe単体膜と同様の傾向を示すことを確認した。これらに関しては,構造解析や構成相解析などを今後進める必要がある。また,H27年度に計画していたFe基合金膜に関する研究の一部を実施した。Fe-NiやFe-Co, Fe-Ni-Co系などを検討し,様々な組成を有するFe系合金膜を高い電流効率で作製できることがわかってきた。以上のように,H26年度の研究計画はほぼ達成でき,H27年度の研究計画の一部にも着手できたことからおおむね順調に進展しているとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
H26年度の研究を通じて,DESを電解溶媒として用いれば幅広い組成範囲で高い電流効率が得られることはわかってきたが,磁気特性には改善の余地があることが確認された。めっき条件によって表面平滑性や光沢度が変化するため,磁気特性の悪さはそれらに起因していると考えられるが,現時点では明確にはなっていない。DESを新規電解溶媒として工業的に応用するには,優れた磁気特性を有する磁性膜が作製可能であることを示す必要もあるため,H27年度以降は,膜質改善に関する検討を追加する予定である。これまでの検討の結果,パルスめっきを用いることで表面の改質が達成できそうな結果を得ていることから,装置の構築,パルスめっき条件と磁気特性の相関関係を明らかにする予定である。また,めっき浴へ表面改質効果のある試薬を添加することも検討を行う予定である。加えて,Sm-FeやSm-Coなど希土類元素を含む合金系の膜の作製に着手する予定である。H26年度の研究では,DESには主にエチレングリコールと塩化コリンの組み合わせを用いてきたが,還元電位が大きく卑である希土類元素のめっきには,このDESの組み合わせでは不十分であることが予測されるため,新規DESの組み合わせの適用も予定している。
|
Causes of Carryover |
調達方法の工夫などにより,当初計画より経費の節約ができたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬購入費用の一部として使用する。
|
Research Products
(11 results)