2015 Fiscal Year Research-status Report
低誘電率絶縁膜の電荷捕獲メモリへの応用に関する研究
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26420280
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
小林 清輝 東海大学, 工学部, 教授 (90408005)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 不揮発性半導体メモリ / 電荷トラップ / シリコン炭窒化膜 / シリコン窒化膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
電荷トラップ型不揮発性メモリの電荷捕獲絶縁膜として、これまでシリコン窒化膜(比誘電率~7、バンドギャップ~5 eV)が用いられてきた。本研究では、低い誘電率(比誘電率4.8-4.9)と狭いバンドギャップを有するシリコン炭窒化膜(SiCN膜)の電荷捕獲絶縁膜への応用と、その物性がメモリ素子の電気特性に及ぼす効果について検討している。H27年度の成果として以下の(1)と(2)が得られた。 (1)ブロッキング酸化膜/SiCN/トンネル酸化膜(17.3/31.5/2.4nm)構造を有するメモリ素子(以下ではSiCN素子と呼ぶ)が、シリコン窒化膜素子と比べ、室温において優れた電子保持特性を示した。 SiCN膜とシリコン窒化膜のエネルギーバンドギャップと、トラップ準位深さ、X線光電子分光測定により求めた価電子帯上端のエネルギーに基いて、電子がトンネル効果によってトラップからシリコンの伝導帯に放出される際のエネルギー障壁をSiCN素子とシリコン窒化膜素子について比較したところ、SiCN素子のエネルギー障壁が大きいことが分かった。これにより室温における電子保持特性の実験結果を定性的に説明することができた。 (2)素子のデータ消去速度は、SiCN膜とシリコン窒化膜への正孔注入確率及び、正孔捕獲確率、捕獲正孔分布、誘電率に依存すると考えられる。本年度は、トラップが電荷を捕獲していない状態のSiCN素子とシリコン窒化膜素子の正孔捕獲確率と捕獲正孔分布について調べた。その結果、正孔注入初期段階において、SiCN膜とシリコン窒化膜に注入された正孔のほぼ全てが膜中のトラップに捕獲されること、及びSiCN膜中に捕獲された正孔の分布がシリコン窒化膜の場合に比べてブロッキング酸化膜に近いことが分かった。得られた知見はメモリ素子の設計に有益な指針を与えものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電荷トラップ型不揮発性メモリの電子保持特性(書込みデータの保持特性)は主として、トラップに捕獲された電子がトンネル効果で放出される過程と、熱励起によって放出される過程に支配されていると考えられている。H26年度からH27年度に掛けて、SiCN素子におけるこれらの過程について以下の結果と知見を得ることができた。(1)SiCN素子とシリコン窒化膜素子におけるトラップからの電子のトンネル放出確率を比較検討した結果、SiCN素子における電子放出確率が相対的に小さいと見積もられ、SiCNメモリ素子の特徴の一つを見出すことができた。(2)SiCN膜中の電子トラップの準位が、不揮発性メモリで多用されるシリコン過剰組成のシリコン窒化膜と同程度の深さであることから、熱励起によるトラップからの電子放出の速さに関しては、シリコン窒化膜素子と同程度と考えられる。 加えて、SiCN素子のデータ消去特性について定電流キャリヤ注入法を用いて詳細に調べ、シリコン窒化膜素子との比較検討を行った。素子のデータ消去速度は、SiCN膜とシリコン窒化膜への正孔注入確率及び、これらの膜の正孔捕獲確率、捕獲正孔分布、誘電率に依存すると考えられる。これらのパラメータの内、データ消去初期段階における正孔捕獲確率と捕獲正孔分布に関する新たな知見を得た。研究は概ね計画に沿って進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
SiCN素子の電子保持特性に関する実験は、研究計画に沿って概ね完了することができた。 H27年度は、トラップが捕獲電荷を放出した状態のSiCN素子とシリコン窒化膜素子の正孔捕獲確率と捕獲正孔分布を求めた。H28年度は、トラップが電子を捕獲した状態のSiCN素子において正孔捕獲確率と捕獲正孔分布を求め、正孔捕獲過程において捕獲電子が及ぼす影響について議論する。 上記の実験・解析に並行して、SiCN膜のエネルギーバンド構造に関する検討を行い、バンド構造と正孔注入確率との関係を議論する。 最後に、SiCNメモリ素子の書き込み消去特性、電子保持特性ならびに正孔捕獲過程に関する研究結果をまとめ、SiCN膜のエネルギーバンド構造と誘電率がこれらの諸特性に及ぼす効果を整理し、研究のまとめとする。
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