2014 Fiscal Year Research-status Report
弾性定数からみた環境調和型圧電材料での高圧電性の創出
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26420282
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Research Institution | Shizuoka Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
小川 敏夫 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (40247573)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | チタン酸バリウム圧電セラミックス / 縦波・横波音速 / 超音波厚さ計 / 弾性定数 / ヤング率 / ポアソン比 / 剛性率 / 焼成プロセス解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は高周波超音波が発振可能な超音波厚さ計により、圧電セラミック円板の厚み方向へ伝搬する縦波・横波速度を測定し、その弾性定数(ヤング率・ポアソン比等)を簡便に求める方法を開発している。本方法をこれまで①チタン酸ジルコン酸鉛系圧電セラミックスでの焼成雰囲気効果(焼成プロセスの解析)、②未分極セラミック円板のDC分極電界依存(分極プロセスの解析)及び③弾性定数の観点からの高圧電性をもつ非鉛系圧電材料の組成探索(組成探索法の開発)へ展開してきた。今回、焼成プロセス、特に、焼成温度の異なるチタン酸バリウム圧電セラミックスの縦波・横波速度及び弾性定数を測定し、焼成温度と圧電・弾性定数との関係を明らかにした。 チタン酸バリウム(BT)原料として粉末粒子径の異なる2種類、BT02(平均粒子径0.2 μm)とBT05(平均粒子径0.5 μm)とを用い、1,300-1,350℃(BT02)及び1,300-1,360℃(BT05)で2時間焼成後、60℃, 2.0 kV/mm, 30 minでDC分極処理を行った。誘電・圧電特性を測定後、超音波厚さ計により、円板試料の縦波速度(VL)・横波速度(VS)を測定し、ヤング率(Y)・ポアソン比(σ)を求め、その焼成温度依存を調べた。 分極前後のVL・VS・Y・σの焼成温度依存より、VLは分極処理の有無によらずBT02では1,340℃でピークを取るが、BT05では単調に増加する。この結果は径方向の電気機械結合係数(kp)の焼成温度依存と同傾向であった。一方、VSはBT02, BT05共単調に上昇するが、分極後、BT02では全温度範囲、BT05では1,320℃以上で低下した。これは1,320℃以上でのkpの急激な上昇に対応していた。又、Yは焼成温度と共に上昇したが、1,320℃以上で分極後低下した。更に、σはkpが上昇する焼成温度範囲(>1,320℃)で分極後、大幅に上昇した。以上の結果は、これまでの検討結果と一致し、kpの上昇はYの低下、σの上昇に繋がっていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々の開発した手法が材料開発でなく、圧電セラミックス製造プロセスへ適用できることを明らかにした。これまで焼成プロセスの解析はセラミックス物性(バルク密度・焼結度合・セラミックスの微構造等)や誘電・圧電測定に因ったが、本手法を使うことにより、これらを総て含んだ材料定数(弾性定数)により評価できることが明らかとなった。更に、従来ノウハウ的要素が強かった焼成プロセスを科学的に解析できることが分かった。 これらの成果は、6月イタリアでの13th International Ceramics Congress (CIMTEC 2014)や10月ラトビアでの12th Russia/CIS/Baltic/Japan Symposium on Ferroelectricity and 9th International Conference on Functional Materials and Nanotechnologies (RCBJSF-2014-FM&NT)での招待講演に繋がると共に、その他の関係学会での研究発表も含め、次のような論文投稿に結びつき、この分野で大きな成果を上げることができた。--- T. Ogawa:“How can be Realized High Piezoelectricity from Measuring Acoustic Wave Velocities?” Advances in Science and Technology Vol. 90 (2014) pp 33-42; T. Ogawa and T. Ikegaya: “Elastic constants measured by acoustic wave velocities in barium titanate piezoelectric ceramics”Japanese Journal of Applied Physics Vol. 54, 011501 (2015).
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Strategy for Future Research Activity |
「圧電性発現の起源探求-ポアソン比及び体積弾性率による圧電材料の材料設計-」を取り上げる。ニオブ酸アルカリ、チタン酸アルカリビスマス及びチタン酸バリウムからなる非鉛系圧電セラミックス、PZT及びチタン酸鉛で代表される鉛系圧電セラミックス、更に、高圧電性をもつ鉛系リラクサ圧電単結晶での縦波・横波音速を測定することにより、材料定数、特にポアソン比及び体積弾性率を求め、これらと電気機械結合係数の関係を明らかにする。具体的には高周波超音波が発振可能な超音波厚さ計により、圧電セラミック円板の厚み方向へ伝搬する縦波・横波音速を測定し、その弾性定数(ヤング率・ポアソン比等)を求める方法を利用する。特に、ポアソン比と体積弾性率とに注目し、圧電材料での圧電性発現の起源に迫りたい。これまで縦波音速(VL)と横波音速(VS)との比(VS/VL)とポアソン比(σ)との関係よりVS/VLが小さくなるほどσが大きくなる。σの増加とともに圧電性(電気機械結合係数: kp)も大きくなることも既に明らかになっている。例えば、VS/VLが小さく、σが大きな材料としてポリエチレンや合成ゴムが挙げられるが、圧電性は発現しない。圧電性の発現には体積弾性率が寄与しているものと考え、これらとの関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
物品費支払い差額として、195円の繰越金額が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金額はH27年度物品費に充当し使用する。
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Research Products
(15 results)