2014 Fiscal Year Research-status Report
撥水性評価技術の革新によるシリコーンゴムがいし材料の非接触劣化診断技術の開発
Project/Area Number |
26420285
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Research Institution | Gifu National College of Technology |
Principal Investigator |
所 哲郎 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10155525)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シリコーンゴム / 撥水性 / 接触角 / がいし / 劣化診断 / 表面自由エネルギー / 非破壊計測 / 表面物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、撥水状態の立体的な計測を非接触で行うために、光源とカメラの位置関係を色々制御して、水滴に写り込む光源の位値や大きさ、光源による水滴の陰の長さから、水滴の立体形状を評価した。その結果、接触角が90度以上の撥水性が良好な場合についても、カメラ位置を斜めにするか、カメラ位置は試料面に鉛直方向でも、光源を斜めに入射させて水滴の陰の長さを計測することで、接触角の非接触計測が可能であることが確認できた。 本手法は、幾何学的な光源や陰の位置関係を計測するため、接触角の大きさの範囲ごとに適した光源とカメラの位置関係など、接触角の変化の状況により、複数の計測手法を活用することが必用である。しかしながら、非接触での接触角評価が可能となったので、凹面内の撥水状態など、従来は計測不可能であった箇所の水滴の接触角も計測可能である。 次に、撥水状態の形成過程が、固体面の粗さや表面温度により、どの程度影響されるのかを定量的に計測した。本年度は接触角の測定を水滴体積増加時と減少時に連続的に動的接触角として「ヒステリシス測定」し、それらの影響を5種類の電気学会調査専門委員会共通試料で確認した。 その結果、試料の状態変化は、試料面温度を変化させて、前進及び後退接触角のヒステリシス測定を上記手法で行う事で、非常に良い撥水状態診断指標が得られることが確認できた。これらは、材料表面の劣化が動的接触角のヒステリシスに顕著に表れることを示唆しており、接触角の大きさの変化以上に重要な劣化診断指標となる事が確認できた。 次年度はスプレー法やDDT方など、接触角以外の測定手法ごとに、各試料の撥水状態が異なって観測されてしまう原因に、上記撥水状態の形成過程が影響することが示唆されたので、この計測手法ごとの特徴について、更に検討し、より良い評価指標を得るための計測技術へと改善していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シリコーンゴムなどの高分子材料の撥水状態を水滴の接触角と水滴高さとして、非接触で測定する手法を開発した。特に、接触角が90度以上と、良好な撥水状態の試料面に対しても非接触測定を可能とした。 光源位置や種類を色々と検討する事により、透明な水滴の立体的な形状を画像として取り込むことに成功した。 試料面の温度を正確に制御できる装置を導入し、任意の温度での接触角を測定可能となった。 水滴の接触角を、水滴体積増加時と減少時など、プログラム制御によるマイクロポンプを活用して自動計測化できた。以上の事により、試料の違いを飛躍的に撥水性評価指標により可視化できた。 電気学会調査専門委員会については、前委員会時の技術報告書を電気学会技術報告第1325号として12月に発行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時に提案した平成27年度の、実験室環境下において確立した非接触での接触角計測を含む撥水状態計測手法が、実機器に対しても適用可能か検討する。具体的には現在も問題となっている鉄道トンネル内のポリマーがいしの撥水状態を非接触計測可能なシステムの構築が可能かを検討する。高電圧機器の架電下も含めた計測を考慮して、望遠拡大レンズとレーザ距離計を用いた水滴形状観測が可能かについて検討を行う。光源の水滴に対 する位値と、望遠分解能が解析の鍵となる。高速度カメラとの連動(高速で移動しながらの各がいしの連続的な評価など)についても検討していくが、分解能と解像度の観点から、現有の設備等では不可能と判断する場合は、計画書で平成28年度と29年度に予定していた、接触角計を設置不可能なマイクロ構造物内の、撥水状態を用いた表面物性評価システムの開発を進める。長焦点レンズとスポット温度計を用いた微小水滴形状観測を行う事になり、こちらについては観測が可能であることが示唆されている。
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Causes of Carryover |
主に旅費について、国内で開催された国際会議に参加し、費用の削減に努めた。また、電気学会の調査専門委員会については、現在はメールでの連絡等を中心としており、国内旅費を削減できた。また、測定用温度制御装置に附属する装置の一部が予算オーバーしたため、他の経費(外部資金)にて購入した。これらの部分を次年度使用額とし、本研究予算の有効活用に努めた。 また、先行して前年度から研究がスタートしている、本研究の計測手法の応用の一つであるコンクリートの劣化診断に関する共同研究予算を、旅費等で活用したため、本研究の予算に次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度にその有効性が確認できた、マイクロポンプおよびそのコントローラなど、水滴形成過程を制御する実験系の改良に、この次年度使用予算を活用する。 旅費に関しては引き続き国内で開催される国際会議を優先し、予算の有効活用に努めつつ、研究成果の発信を実施する。望遠レンズ等は既に校費で購入済みであり、この距離をおいた実験の設備関係では、予算使用計画に変更は無い。
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Remarks |
科学研究費に関する研究成果等も随時公開しています。 外部資金導入部分に獲得した研究費等が記載されています。
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Research Products
(5 results)