2017 Fiscal Year Research-status Report
撥水性評価技術の革新によるシリコーンゴムがいし材料の非接触劣化診断技術の開発
Project/Area Number |
26420285
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Research Institution | Gifu National College of Technology |
Principal Investigator |
所 哲郎 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10155525)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シリコーンゴム / がいし / 撥水性 / 劣化診断 / 望遠計測 / 動的接触角 / 表面粗さ / 温度依存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
大震災後特に注目されているポリマーがいし材料であるシリコーンゴムは、撥水性とその自己回復能力を有している。軽量で重汚損環境でも優れた絶縁性能を発揮するなど、世界各国で使用実績を高めつつある。一方、磁器とは異なり高分子材料であるため、その経年劣化や撥水性能の低下が問題となることが指摘されてきた。本研究では、材料表面の撥水性を定量的に解析し、その性能向上へ向けたデザイン上の指標を得ることを目的とした。 具体的には、撥水性は試料温度や表面粗さ、試料の吸水状態など、多くのパラメータによりその発現状態を変化させるが、各パラメータ変化時の撥水性評価値の変化を計測指標として用いれば、より正確な撥水性診断が定量的に可能となることを明らかとした。例えば計測温度の低下は、表面自由エネルギーの温度依存性により、液体の表面張力と固体面の表面自由エネルギーを増加させる。前者は撥水性の向上に寄与し後者は撥水性の低下に寄与する。これら両方が同時に行われる場合、どちらの効果がより顕著となるかについて、低温側では撥水性は低下して観測されることを明らかとした。 本研究の成果として、撥水性の代表的評価指標である接触角を、材料面に非接触で測定する手法を開発した。また、表面粗さや温度の変化が、撥水状態を用いた材料劣化診断に極めて有効である事を明らかとした。特に材料の劣化は前進接触角と後退接触角の差として現れることを明らかとした。 本研究では、以上の検討をシリコーンゴムなどの具体的材料に対して実施し、研究成果は電気学会の調査専門委員会による技術報告や論文および学会発表として積極的に広報した。更には研究成果の応用として、コンクリート材料表面に形成される撥水層の評価や、国際大電力会議(CIGRE)の新試験法に関する日本代表委員とも連携し、国際共同研究としても研究成果の活用と応用に携わっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、電気学会調査専門委員会共通試料などを用いた、シリコーンゴムなどの撥水性材料の、撥水状態の温度依存性と表面粗さ依存性を、試料の吸水状態と乾燥状態の違いを含めて詳細に実験的に明らかとした。そのなかで、非接触での接触角の測定方法や撥水状態を平面的に画像評価するスプレー法の定量化手法、更には前進接触角と動的接触角を用いた撥水性の動的評価手法など、撥水性の各種計測手法への各パラメータの影響の変化について明らかにした。 計測手法の改善に関しては、上記非接触での接触角計測、水滴体積増減による動的接触角測定、スプレー法の定量化および、CIGREにて検討中のダイナミックドロップテスト(DDT)の撥水性維持能力低下過程の定量化手法を確立した。 表面自由エネルギーに影響する試料温度や表面粗さなどの各種依存パラメータの活用に対しては、それらの変化が撥水性各評価指標にどの様に影響するのかを明らかとし、撥水性能のデザインによる制御手法に対する有益な示唆を得た。 これらの研究成果の広報に関しては、電気学会調査専門委員会による技術報告を取りまとめ、出版した。その成果として、電気学会優秀技術活動賞技術報告賞を平成29年に受賞した。さらに、本研究成果を応用した、建設部材であるコンクリートの撥水性診断を用いた非破壊劣化診断技術の開発に関して、土木系教授の科学研究費の共同研究者として平成29年度からの研究に携わっている。この本研究の成果の応用に関して、科研期間を延長し、平成30年度の関連学会で報告予定である。 更にはCIGRE日本委員である豊橋技術科学大学長尾教授と日本ガイシ委員からの要請により、DDTの国際ランウドロビンテストにも参加し、本研究の成果をふまえた国際貢献を平成29年度より進行中である。以上、本研究分野の研究成果の公開と組織的取りまとめが評価され、継続した研究活動を推進できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方法としては2つある。1つは電気学会調査専門委員会の活動の延長で、CIFREによりDDTのラウンドロビンテストを継続し、日本側の知見を国際的に発信することである。平成30年4月にプラハで行われた研究成果発表では、ヨーロッパの試験結果と本研究室の試験結果に大きなずれがあることが確認できた。この試験結果の違いの理由を明らかにできれば、国際的にも大きな学術上の貢献を成すことができる。 もう一つは平成29年度より開始した、コンクリートの劣化診断に対する科学研究費共同研究者としての本研究成果の応用である。電気絶縁材料の撥水性評価指標は土木・建築材料であるコンクリートの劣化診断にも活用可能である。本研究で開発した撥水性の各種評価方法と評価指標は、表面自由エネルギーの具現化である撥水性の発現には同様に働くため、研究成果の応用が可能である。特に撥水性に加えて誘電特性の計測など、現在土木分野で応用が進みつつある電気的な計測手法についても本研究室は十分な知見を有しており、複合領域・複合分野での共同研究には適した環境にある。 また、本研究の成果は学会関係での広報は以上であるが、高専学生への教育の分野でも活用予定である。本校電気情報工学科の高電圧工学や専攻科先端開発専攻における環境材料学や新エネルギー特論などで、撥水性の計測技術や評価指標について、また、シリコーンゴムやコンクリートへの撥水性表面形成など、新しい社会基盤技術についても講義を通して、学生に伝えてる。
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Causes of Carryover |
本研究を総括し、電気絶縁材料の撥水性の定量化手法についてまとめたものを第49回電気電子絶縁材料システムシンポジウムにて発表予定である。その成果発表には研究成果でも述べているCIGREのDDTの評価における定量化を含める予定である。また、コンクリート部材の撥水性計測への応用など、電気絶縁材料に留まらず撥水性計測による劣化診断や材料性能の改質デザイン手法への知見についても報告予定である。 この、本研究成果取りまとめ論文の研究発表を行うための予算を次年度使用額として平成29年度末に申請した。
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Remarks |
過去の研究内容の紹介など 過去に採択された研究費獲得実績の紹介など
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