2015 Fiscal Year Research-status Report
左手系進行波型トランジスタを用いた非線形パルス生成制御に関する研究
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26420296
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
楢原 浩一 神奈川工科大学, 工学部, 教授 (00422171)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | メタマテリアル / 非線形波動 / 進行波型トランジスタ / 複素ギンツブルグ・ランダウ系 / 共鳴相互作用 / フラットトップソリトン / 分岐理論 / 停留パルス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度当初までに,1次元線形右手左手混在進行波型電界効果トランジスタ(以下,CRLH-TWFET)のプリント基板回路試作を行い評価まで行った。時間領域で線路各セルの電圧波形を非侵襲に検出し波形伝搬の時空間での振る舞いを詳らかにする形態をとった。CRLH-TWFET中の一様非線形振動,空間的に伝搬しない孤立波として知られるフラットトップソリトン,および左手系孤立波伝搬を確認することができた。あわせて漸近的手法である逓減摂動法を伝送方程式に適用してCRLH-TWFETをモデル化する複素ギンツブルグ-ランダウ方程式(CGLE)を導出した。これを用いて,CRLH-TWFETが亜臨界アンドロノフ-ホップ分岐を行うための設計指針を得た。そして,フラットトップソリトン解の数値解析による表現に成功した。以上によって,平成26年度の懸案としたCRLH-TWFET中の非線形振動の包括的理解に成功した。 CRLH-TWFETはある周波数を上限として左手系波動を誘起する属性を有している。そして,その上限周波数で波数がゼロとなる性質をあわせ持つ。この分散特性によって調和共鳴を引き起こすことができる。周波数と波数がともに倍となるような2波がある場合,一方から他方が自励的に発生する。基本波を一端から入力し倍波を成長させるとともに,線路長を倍波がキャビティ共振するようとることによって,倍波を高効率生成することができる。効率や素子歩留まり率に対する耐性とあわせた特性付けに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の一つである,CRLH-TWFET中の非線形孤立波設計理論精密化については,逓減摂動法の適用にCGLEの導出によって線路損失,トランジスタ利得の効果をこれまでにくらべ遥かに精緻に表現することができるようになったことにより十分な進捗を得た。それらの取り扱いを必ずしも軽微とせずとも成り立つ設計指針を得ることができる。こうした設計論については,論文として提出し査読結果を待つ状態にある。こうした散逸系としての定式化を,CRLH-TWFETにおける共鳴相互作用のそれよりも優先した。 一次元線路については試作評価による原理確認に成功した。計画にしたがって線路上全セルの時間領域波形計測を行い原理動作が期待される非線形波動伝搬をさまざま確認した。ただし,数値解析との定量的な一致には至らず課題も多く生じている。平成27年度には,非線形孤立波間の共鳴相互作用の実証を計画時目的とおいた。これには至らず十分な達成度とまではいえない。しかしながら,非線形振動解属性の線路定数依存性を簡便に知ることが可能となり,手間を惜しまず試作回路評価を行うことで,課題解決の道筋は明確である。定量性確保によって再びの1次元線路試作を計画から排除することは十分に可能であり,概ね予定通りの進捗を得たものと理解している。また,倍波生成の新しい手法構築に成功した。 以上によって上記記載のように判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
CGLEへの縮約を受けて,CRLH-TWFETにおける非線形波動相互作用に議論を進める。CGLEのコヒーレント構造はよく調べられているが,それらの相互作用については不明な点も多い。パルス制御の観点からも現象理解を進めたい。散逸成分が軽微であれば,ソリトン崩壊,三波混合,調和共鳴といった共鳴現象が生ずるはずである。系統的に精査したい。 試作評価に関しては,一次元CRLH-TWFETについての定量設計法の確立が最優先の検討課題となった。平成27年度の研究実施によって,線路定数と非線形波動特性の依存性を明確化することが可能となった。そこで,試作線路の直流バイアス電圧値を系統的に変化させたときの応答変化を精査することによって,設計性向上に資する試作評価が実施できる。試作の繰り返しよりも解析的・数値的検証の推進が有意義と考え,次年度の予算は計算機リソースの拡充に当てたい。 定量設計法の確立をまって,二次元線路の設計を開始し,配線構造,基板サイズ,使用デバイス,測定治具の策定までを完了させ将来につなげたい。
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