2015 Fiscal Year Research-status Report
中赤外~テラヘルツ帯用超高性能偏光子の開発とその技術応用に関する研究
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26420297
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
白石 和男 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90134056)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 偏光子 / サブ波長格子 / テラヘルツ / 中赤外 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.最適金属種の選定による偏光子性能の向上 前年度に引き続き最適金属種の探求を行った。中赤外偏光子用では、AlよりAgの方が優れていることを新たに見出した。前年度までの研究により、AlはAuより優れていることが判明していた。これらの結果よりAgが最も優れた金属種であるとの結論を得た。一方、テラヘルツ帯偏光子用金属種に関しては、AuがAgより優れているとの結論を前年度に得ていた。しかし成膜時のガス圧や金属膜厚を最適化することにより、AgでもAuと同等の優れた光学特性を有する偏光子が得られることがわかった。AgのほうがAuより作製コストを低く抑えることができるほか、中赤外用と同じ金属を使用できるメリットもある。熱インプリント法を用いて格子を作製しており、量産性にも優れた偏光子が実現した。 2.Ag薄膜の微細構造の膜厚依存性 Ag薄膜の表面微細構造を原子間力顕微鏡を用いて調べた。その結果、膜厚が7nmの時に島状構造が顕著になり、膜厚がさらに厚くなると平坦化することが判明した。この知見を偏光子作製条件に反映させ、Ag膜厚は10nm以上とすることが望ましいことを明らかにした。 3.反射防止膜の導入 中赤外用偏光子では基板にシリコンを用いているため、反射損失が大きくなるという問題があった。これを解決するために基板裏面にもサブ波長格子を形成して反射を低減するほか、硫化亜鉛(ZnS)を反射防止膜として用いた。これにより、格子が二重の構造であっても挿入損失を3.5dBに抑えることができた。 4.Ag薄膜の耐環境特性 AgはAuと比べて硫化や酸化など、耐環境特性に劣る。そのため、Ag薄膜の表面にアモルファスシリコン薄膜を保護層として設け、耐環境特性問題を解決することができた。80℃の熱水中に2時間浸漬しても光学特性の劣化はなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以下の主たる4項目の成果を得ることができた。 1.中赤外域およびテラヘルツ帯偏光子用の最適な金属種を決定することができ、実際に優れた光学特性を有する偏光子を実現した。 2.中赤外偏光子では、基板裏面にサブ波長格子とZnS反射防止膜構造の導入により挿入損失の低減化を実現した。 3.テラヘルツ帯用偏光子では、AuのほかAgを用いても高性能の偏光子を実現することができた。テラヘルツ帯での物性を研究している国内の2つの大学の研究者それぞれにサンプルを提供することができた。 4.耐環境特性に優れ、量産性にも優れていることから実用化に近い段階になった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析・試作で得られた知見を整理・分析・考察し、権威ある学術誌に広く公表する。実用上問題となる可能性のある事項を調査し、問題が見つかれば対応方法を検討する。
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Causes of Carryover |
テラヘルツ帯の特性測定経費が主な支出になっている。作製した偏光子サンプルのテラヘルツ帯分光透過特性測定は、有料で外部に委託している。サンプルの作製が順調に進み、測定依頼数が多数になり予算不足になる恐れがあったため、20万円の前倒し請求を行いこれに備えた。実際には最適作製条件を予想以上に早く見出すことができ、測定サンプル数が想定数より少なくて済んだ。このため、前倒し分経費の一部を使用して主要な測定を完了することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度末に新たな成果が得られたため、この新たな知見を整理・分析し、考察を行ってから権威ある学術雑誌に投稿する予定である。成果を広く公開するために、オープンアクセス形式のジャーナルを計画している。内容が多岐にわたるため論文は長くなる見込みであり、掲載費が比較的高価になる。そのため予算の主な使途を、この論文掲載費に充てる予定である。
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