2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26420310
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小野寺 武 九州大学, 味覚・嗅覚センサ研究開発センター, 准教授 (50336062)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 匂いセンサ / ポリマー / 抗原抗体反応 / バイオセンサ / 表面プラズモン共鳴 / 蛍光 |
Outline of Annual Research Achievements |
表面プラズモン共鳴(SPR)法と,蛍光測定を組み合わせたSPR励起増強蛍光分光(SPFS)装置の改良を行った. 5, 10, 20mWの半導体レーザで,Alexa Fluor 647で蛍光標識された抗トリニトロトルエン(TNT)抗体を5, 50,500 ppbの各濃度で流通させ,それぞれの蛍光強度を確認し,20 mWのレーザを選択した.また,金センサチップを検討し,ガラス基板上に全面を被覆する金チップで散乱光が抑えられた.エチレングリコールを有する自己組織化単分子膜(SAM)を形成した金センサチップで,間接競合法により,本SPFS装置のTNTの検出限界は315 pptとなった. SPRセンサ表面で匂い応答性ポリマー形成のため,まず,表面の3次元化を行った.ポリビニルアミン(poly-VAm)にコハク酸を結合させたポリマーをセンサ表面に固定化し,そのポリマーにTNT類似物質としてDNP-Glyをポリマーに固定化した.作製したセンサチップ表面において,置換法で測定を行ったところ,TNTの検出限界は2.8 ppbであった.また, 固定化するTNT類似物質m-ニトロフェニル酢酸,4-ニトロフェニル酢酸の比較を行った結果,4-ニトロフェニル酢酸では親和性が低くなり標準偏差が大きく,検出限界が得られなかった.一方,m-ニトロフェニル酢酸では検出限界が0.9 pptとなった. ラクトン類の検出のため,類似物質である3-(5-オキソオキソラン-2-イル)プロパン酸(OOP)とロコガイヘモシアニン(CCH)を結合させた免疫原により得られた抗OOP-CCH抗体を用いて,ラクトン類の検出を試みた.その結果,OOPを固定化した金チップを用いてγ-ヘプタノラクトン,γ-オクタノラクトン,γ-ノナノラクトンを間接競合法により測定した.検出限界はそれぞれ,9.0,4.0,2.6 ppmとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光学系にくさび形の光を採用することで駆動部のないコンパクトなSPFS測定装置を実現した.これらの成果について,国際会議での発表,およびプロシーディング論文の執筆を行った.金属消光の影響の評価とフローセルの改良が遅れているため,表面開始原子移動ラジカル重合(SI-ATRP)によるポリマー作製の開始が遅れた. ポリビニルアミンを用いた匂い応答性のポリマーについて置換法や間接競合法で,ポリマーの有用性が得られ,学会発表を行った.匂い応答性ポリマーとして機能させるべく,ビオチン-アビジンシステムを用いてエチレングリコールを有するSAMに抗体を固定化させたセンサチップ表面に,TNTの類似物質であるDNP-glyを固定化したポリマーを流入し,抗体-類似物質の複合体を形成させた.しかしながら,TNT溶液の流入によるポリマーの解離は見られなかった.これはポリマー1分子に結合しているDNP-glyが多数あり,解離できなかった可能性がある. 獲得済みであった抗OOP-CCH抗体や抗フルフラール抗体を用いて,ラクトン類およびフルフラールのSPR測定を行い,それぞれについて,学会で成果報告を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
金属消光の影響の評価とフローセルの改良を引き続き行うと共に,匂い応答性ポリマーのヘアピン状のループを形成するため,ポリマーの長さの最適化を行う.重合反応時間と膜厚の関係により,ポリマー長をコントロールする.成膜レートや制御のしやすさ,抗体,類似物質および消光剤の固定化のしやすさなどから,適したモノマー,触媒,還元剤を選択する.例えば,モノマーはこはく酸1-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル],メタクリル酸2-ヒドロキシエチル,メタクリル酸2-アミノエチル 塩酸塩の組み合わせが考えられる.SI-ATRP開始剤を有するアルカンチオール(Bis[2-(2-bromoisobutyryloxy)undecyl] disulfide)とヒドロキシル基を末端に有するアルカンチオール(11-Mercaptoundecanol triethyleneglycol ether)等を用いて,混合SAMを形成する.この混合比を変化させ,匂い応答性ポリマーの密度の制御を行う.密度過多であれば,立体障害により,ループの形成ができなくなることが予想される.膜厚や抗体結合性の評価を行う. SPFS法の非特異吸着の影響を受けにくいというメリットを活かして匂い物質以外に,唾液中のストレスマーカーの検出について検討する.
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Causes of Carryover |
金属消光の影響の評価とフローセルの改良が遅れており, SI-ATRPによるポリマー作製に至っていない.そのため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は,匂い応答性ポリマーのヘアピン状のループを形成するためのモノマー,触媒,還元剤,SI-ATRP開始剤を有するアルカンチオールとヒドロキシル基を末端に有するアルカンチオール等の試薬に使用する.
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Research Products
(9 results)