2015 Fiscal Year Research-status Report
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26420318
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中野 誠彦 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (40286638)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電子デバイス・機器 / LSI設計 / ブレインマシンインタフェース / パッチクランプ / 電流電圧変換器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では神経細胞と直接やりとりを行う人工シナプス実現に向けて、LSIを設計している。平成26年度に得られた知見をもとに、平成27年度は多チャンネルシステム化に向けた研究を行った。具体的には膜電位固定法の鍵となる高倍率の電流電圧変換器を入力側に置き、その信号振幅を調整可能なプログラマブルゲイン増幅器、その後のアナログデジタルコンバータへ低ノイズで入力するためのアンチエイリアシングフィルタを設計配置し、複数の信号をまとめるマルチプレクサを搭載した。本年度は4チャネルシステムのLSI試作評価を行った。システム化にあたっては、先の増幅率調整、補償回路フィードバック調整、フィルタ調整などを各チャネルで独立に制御できる構成となっている。しかしながら、この調整を全て外部から個別のピンで調整することはパッケージの制約から困難なため、シリアル入力で内部状態を制御できる構成とした。試作結果により内部状態を独立に制御可能であることを確認した。さらに多チャンネルシステムにおいてクロストーク評価を行った。その結果、無視できないクロストークが生じていた。クロストークは隣接チャネルのみならず全チャネルでほぼ同程度存在していたため、基板を介した経路と電源を介した経路の可能性が高い。本問題解決に当たりLSIのレイアウトを修正し、大きな面積を占めるフィードバック抵抗のトリプルウェル化と信号線経路と電源線配置を見直し設計を行った。本試作の評価は28年度に行う。 平成26年度に設計評価を行った方式には抵抗フィードバック方式の他にOTAフィードバック方式がある。こちらの方式は小面積で回路を構成する優位性があるが、欠点としては入力範囲が狭い問題がある。チャンネル数の観点からはOTA方式が有利であり本方式のシステム化も並行して行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究において、計画通り複数回のLSIチップ試作を行い、評価を行った。平成26年度に検討、設計した電流電圧変換器を元に、システム化する上で必要なゲイン制御増幅器、フィルタなどを設計し組み合わせ、チャネルごとの評価を行った。試作においてシミュレーションで得られた性能(特に周波数特性)と実測においてはズレが見られたため、調整改良を行った。LSI設計において寄生成分の影響やモデル誤差、さらにレイアウト依存の影響などからシミューレーション結果が必ずしも実測結果とは一致しない。研究における試作を通して評価できたことにより多チャンネルシステム構築に向けて前進が可能となった。 また、4チャンネルシステムの試作を行い多チャンネル化した時の問題点を明らかにした。多チャンネル化における最大の課題はチャネル間クロストークの問題である。特に本システムで取り扱うハイインピーダンス、高増幅率のシステムでは入力におけるノイズ混入の問題はシビアである。シリコンという導電性を持つ基板を共通化しているシステムにおいてクロストークを完全に除去することは困難である。試作においてクロストーク評価を行い、増幅率をチャネル間において独立に変化させた実測結果を得ることで、高倍率を持つ電流電圧変換器部分においてクロストーク成分が混入していることを明らかにすることができた。これらの知見が得られたことは最終計画に向けて大変有意義であった。加えて昨年度報告時にあげた内部制御回路の組み込みについては達成しプロセッサ制御による動作確認を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年後も研究計画通り進める予定である。最終年度に当たる平成28年度の研究内容は多チャンネルシステムの評価と改善が主たるものとなる。平成27年度までにLSI膜電位固定システム構築のための回路構成を決定し評価を行った。さらに多チャンネル化における課題と知見を得たため、平成28年度はチップサイズを拡大したLSI試作を行い、チャネル数を増やしたシステム構築を目指す。昨年度計画において述べた基本システム設計についてはおよそ固まった。しかしながらシステム化した際の微小電流計測性能が、電流電圧変換器単体評価時と比べて劣るため、組み合わせた回路のチューニングが必要である。平成27年度に改良を行った試作チップが本年度納品されるため本年度初期に評価を行い、必要に応じてその後改良を行う。 現在本LSIシステムの活用方法に応じて抵抗フィードバック方式とOTAフィードバック方式の二つの方式で設計を行っているため、各方式の特徴を踏まえて実測評価を行い神経細胞との結合に適した方式を決定する。 またプロセッサによりLSIの内部状態の制御が可能になったことを述べたが、その制御手法については現行では手動による設定となっている。現実的な利用状況を考えると多くのパラメータをチャネルごと、回路ブロックごとに設定するのは煩雑である。したがって、これらの設定の自動化について検討を進める。特に補償量の調整については自動化の恩恵が大きいため、テスト信号の内部生成を含めたシステムを検討し、システムの有用性を高めていく。
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Research Products
(7 results)