2016 Fiscal Year Research-status Report
電流ストレス印加CVDおよびアニールによるグラフェン配線の低抵抗化
Project/Area Number |
26420319
|
Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
上野 和良 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (10433765)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | グラフェン形成 / 固相析出 / 低温化 / 電流印加アニール / 結晶性改善 / 均一性改善 / 直接堆積 / 配線 |
Outline of Annual Research Achievements |
多層グラフェン(MLG)は、電子散乱が少なく、融点が高いという特徴から、集積回路の微細配線やパワーデバイスの配線など、銅などに代わる低抵抗・高信頼配線材料として期待されている。MLG配線実現のためには、低温で結晶性の良いMLG膜を形成する必要がある。従来、結晶性の良いグラフェン形成には1000℃程度の高温プロセスが用いられている。本研究では、配線応用に必要なプロセス温度の低温化のため、熱以外のエネルギーによるMLG形成促進をねらって、CVDや固相析出(アニール)中に、電流を印加する効果を調べている。今までにCVDにおいて電流印加により、結晶性を表すラマンピーク強度比(G/D比)が4倍程度に向上でき、電流による成長促進効果をに明らかにした。さらに、絶縁膜上に直接MLG膜を形成できる固相析出プロセスにおいても、電流印加により、同温度でMLG膜の膜質向上を明らかにした。本年度は、電流印加固相析出法の課題として明らかになったMLG膜の均一性の劣化を解決するため、不均一性の原因となるコバルト(Co)触媒の凝集を抑制するため、Co触媒の上に蓋の役割をする銅(Cu)膜を堆積する新しい構造を用いて電流の効果を調べた。その結果、この新構造により、凝集が抑制され、膜の均一性が改善したが、従来の電流印加方法では、結晶性の改善があまり見られなかった。その理由として、低抵抗のCu膜をCo触媒上に堆積したことで、Co触媒を流れる電流が減少し、電流による反応促進効果が低減されたと考察し、Co層に電流が流れるように、従来、Cu/Co層の水平方向に流していた電流を、垂直方向に流す改良を行った。その結果、垂直方法に流した場合に、3.5倍程度にG/D比が向上し、かつ均一なMLGが形成できた。この結果から、電流印加固相析出法で、従来より低温で結晶性と均一性の良いMLG膜を絶縁膜上に直接形成できることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、電流印加による、CVDおよび固相析出(アニール)法において、配線応用に必要な低温化を実現するため、熱以外の反応促進手段として、電流印加の効果を調べている。その結果、当初の計画どおり、CVDと固相析出(アニール)において電流印加による結晶性の大幅な改善が得られた。またCVDにおいては、電流による結晶性改善の作用メカニズムについて解析し、触媒の粒径拡大ではなく、グラフェン形成の反応素過程に作用していることを明らかにした。また、電流印加アニールでは、結晶性の改善効果が得られた一方で、Co触媒の凝集という新たな問題が発生したが、Cuキャップ構造の導入、電流印加方向の変更などの改善を行い、問題を解決した。このように、低温で、均一性や結晶性の良いMLG膜の形成に、電流印加が有効であることがわかり、おおむね順調に進展していると考えている。なお、電流印加アニールに関する成果に関して、JJAPに2件論文が掲載され、IEEEの国際会議(査読あり)において1件の発表を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度、新たに見出した、Cuキャップ構造と、膜に垂直に電流を流す方法によって、絶縁膜上に転写なしで直接、均一性と結晶性の良いMLG膜を比較的低温で形成することができた。本方法は、デバイスの配線や電極への応用が期待できる。そこで、本技術をさらにブラッシュアップするため、プロセス条件の最適化による結晶性の改善を図るとともに、縦方向に流す電流の作用メカニズムについて解析を行う。また、作製したMLG膜の電気的な特性の評価や、デバイスへの適用評価を実施する。
|
Causes of Carryover |
本年度行った電流印加固相析出(アニール)の実験において、MLG膜の均一析出のために新たに行ったCuキャップ構造では、従来と同様にCu/Co触媒膜に平行に電流を流した場合に、期待したような大きな電流印加の効果が得られなかった。その理由として、Cuキャップ層の抵抗がCo層に比較して低いため、電流がCu層を優先的に流れ、MLG形成反応に直接作用するCo触媒層を流れる電流が不十分になり、期待したような効果が得られなかったと考えられた。そこで、電流を流す方向を、Co層を流れるように膜の縦方向に流すようにしたところ、期待したような電流による結晶性の改善が得られた。当初の予定と異なり、新たな縦方向電流印加による結晶性改善について、さらなるプロセス条件最適化と、作用メカニズム解明実験を次年度に行った上で、TEM分析などの詳細な分析を行うために費用を使うほうが有意義な成果が得られると考えられるため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
CuキャップCo触媒構造に縦方向電流を印加する電流印加アニール実験を行い、プロセス条件による結晶性や膜の均一性への影響を調べる。また、プロセス温度依存性からMLG析出反応の活性化エネルギーを求めるなど、縦方向電流による結晶性改善の作用メカニズムの解明を行う。それらの実験に必要な、基板、部品、材料などの購入およびTEMなどの分析依頼に使用する。
|
Research Products
(6 results)