2014 Fiscal Year Research-status Report
古典・量子混合物理計算による光物質相互作用の解明と光直接記録への応用
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26420321
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
大貫 進一郎 日本大学, 理工学部, 教授 (80386002)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 混合物理計算 / 電磁界理論 / 量子論 / 光物質相互作用 / 電子・デバイス機器 / データストレージ / 磁気記録 / 光直接記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.古典・量子混合物理計算法の開発 光を古典論(:マックスウェル方程式)、物質を量子論(:シュレディンガー方程式)により時空間同時解析し、信頼の高い数値シミュレーションが可能な古典・量子混合物理計算法を開発した。これにより、光物質相互作用に物質の波動関数から求めた分極電流、量子力学的トンネル効果などを考慮した混合物理シミュレーションが可能となった。多重井戸型のポテンシャルに電子が拘束される解析モデルでは、トンネル効果が顕著に表れるため、本提案手法でのみ物質中の電流密度やナノ物質近傍の電磁界を正確に計算できる。また、非調和型のポテンシャルに電子が拘束されるモデルに対しても、本提案手法の有効性を示した。信頼性に関する検証では、シミュレーション結果を必要な計算精度内に制御できることを明らかにした。また、クラスタコンピュータによる分散コンピューティングを行い、10倍程度の高速化も併せて実現した。 2.ナノ物質の共鳴吸収プロセス解析と周波数分散モデルの検証 局在表面プラズモンが励起された微小金円柱列に対して共鳴吸収プロセス解析と周波数分散性モデルの検討を行った。分極の局所的効果のみを考慮する従来モデルでは、円柱サイズが10 nm以下、円柱間距離が 5nm以下になると、共鳴吸収が起きる波長、共鳴のピーク値ともに、数値結果と報告されている実験値に違いが現れた。円柱サイズ、円柱間距離が更に小さくなるにつれ、この傾向は顕著となり、従来の分散モデルは破綻することを確認した。一方、非局所的効果を考慮した新しい分散モデルでは、共鳴吸収が起きる波長、ピーク値とも数値結果が改善され、実験値と一致する傾向となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の大きな目的は、光を古典論(:マックスウェル方程式)、物質を量子論(:シュレディンガー方程式)により扱う古典・量子混合物理計算法を開発し、高密度光直接記録の実現に向けたシミュレーション検証を行うことである。今年度の研究課題である、1)フルベクトル解析可能な古典・量子混合物理計算法の開発、2)ナノ物質の共鳴吸収プロセス解析と分散モデルの検証は、以下に述べる理由により「おおむね順調に進展している」と判断する。 今年度は、古典・量子混合物理計算法を開発し、ナノ物質の波動関数から求めた分極電流、量子力学的トンネル効果などを光物質相互作用に考慮できる混合物理シミュレーションを実現した。併せて、シミュレーションにおける計算精度の制御法の確立、複数の井戸型ポテンシャルに電子が拘束されている解析モデルに対して検証を行い、本提案手法の信頼性及び計算のロバスト性を明らかにした。また、ナノ物質の共鳴吸収プロセス解析と周波数分散モデルに対する検討では、円柱サイズが10 nm 以下、円柱間距離が 5nm 以下になると分極の非局所的効果が顕著に表れ、従来モデルは破綻することを示した。これらの解析サイズにおいては、非局所的効果を含めた分散モデルの必要性を明らかにし、妥当性の検証も行った。 今年度得られた成果を活かし、次年度以降は古典・量子混合物理計算法による光直接記録の検証などを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.古典・量子混合物理計算法の開発 古典・量子混合物理計算法の更なる高速化を分散コンピューティングおよびアルゴリズムの点から引き続き検討する。また、混合物理シミュレーションの検証を目的とした、光物質相互作用の時空間応答解析を様々なポテンシャル構造のナノ物質に対して実施する。平成26年度の研究成果から、光パルスによるナノ物質の状態制御には、物質近傍の電磁界を正確に考慮できる本提案手法での設計開発が必須であることを明らかにした。平成27年度以降は、ナノ物質の状態を最適に制御できる光パルスの形状設計も併せて検討する。 2.光直接記録の基礎検証 混合物理シミュレーションによる光とナノ物質の相互作用を、物質近傍に励起される近接場の点から解析を進める。その際、従来の古典的な分散モデル、非局所的効果を考慮した分散モデル、などと比較することで本解析結果の妥当性を検討する。これら得られた成果より、光直接超高密度磁気記録システムのシミュレーション設計に向けて、記録粒子媒体を含めた局所的円偏光生成用アンテナの設計、超短光パルスの照射方法、などの基礎検証を予定している。
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Research Products
(34 results)