2015 Fiscal Year Research-status Report
古典・量子混合物理計算による光物質相互作用の解明と光直接記録への応用
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26420321
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
大貫 進一郎 日本大学, 理工学部, 教授 (80386002)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 混合物理計算 / 電磁界理論 / 量子論 / 光物質相互作用 / 磁気記録 / 光直接記録 / データストレージ / 電子・デバイス機器 |
Outline of Annual Research Achievements |
円偏光を照射し磁化反転を行う光直接記録の高密度化に関してシミュレーション検証を行った.光直接記録の高密度化には,ナノメートルオーダの局所円偏光を生成するナノアンテナの利用が必須である.今年度は,アンテナ製作プロセスを考慮した加工ずれが生成光へ与える影響を解析した.具体的には,シミュレーション設計した局所円偏光生成可能な理想形状のナノアンテナに,ナノメートルオーダの加工ずれを考慮した.理想形状からのずれに応じて局所生成光の円偏光度は低下し,最終的に直線偏光に近い楕円偏光となった.次に入射光の偏光度および入射角度を再検討し,加工ずれを有するアンテナ形状に対して局所円偏光が生成可能な条件を求めた.導出した条件を満足する入射光を利用することで,加工ずれを有するナノアンテナに対しても局所円偏光を生成でき,高密度記録に利用可能であることを明らかにした. ナノアンテナに利用する微小金属を数ナノメートルまで隣接し,非局所的効果を考慮した光学応答モデルの検証を行った.非局所的効果を考慮すると,プラズモン共鳴時に分極電荷は金属の境界面から金属内部にも広がって分布すること,共鳴時の電界強度は低減し短波長側へシフトすることを明らかにした. 光と物質の相互作用を高精度かつ高効率に解析可能な古典・量子混合物理計算法を用いて,物質の量子状態制御に向けた新規光パルス設計法を開発した.解析モデルは細管内に拘束された電子で,その基底状態ならびに第1励起状態間の光スイッチング動作を検証した.設計したパルス列を入射した際の細管内量子波束の時間応答波形より,基底状態ならびに第1励起状態間のスイッチングがほぼ100%の精度で行えることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,古典・量子混合物理計算法により光物質相互作用を解明し,現行の磁気記録に比べて最大10万倍高速な光直接記録方式の高密度化実現に向けたシミュレーション設計および検証を行うことである.今年度主に研究を行った,1)古典・量子混合物理計算法による光制御パルスの設計,2)非局所的効果を考慮したナノ物質の共鳴吸収プロセス解析,3)高密度光直接記録方式に向けた高ロバスト性のナノアンテナ設計,は以下に述べる理由により問題なく実現できており,「本研究はおおむね順調に進展している」と判断する. 昨年度開発した古典・量子混合物理計算法を応用し,物質が生成する近接場の影響も考慮したシミュレーションを行い,物質の量子状態制御を可能とする光制御パルスの設計法を提案した.設計した光制御パルスを用いると,細管内に拘束された量子波束の基底状態ならびに第1励起状態間のスイッチングがほぼ100%の精度で行えることを示し,開発手法の妥当性と正当性を明らかにした.ナノ物質の共鳴吸収プロセス解析では,微小金属を10 ナノメートル 以下で等間隔に配置したモデルに対して解析を行い,非局所的効果による分極電荷,共振時の波長およびピーク値の特性を明らかにした.複数の微小金属を直線状に配置した場合,配置間隔を変化させることで近接場光の位相制御が可能となることも併せて示した.また,高ロバスト性を有するナノアンテナ実現に向け,アンテナ製作プロセスで生ずる加工ずれを考慮したモデルを解析し,局所円偏光生成の条件を求めた.入射波の偏光度および入射角度,アンテナの厚み等を調整することで,加工ずれを考慮したモデルに対しても局所円偏光が生成でき,ロバスト性の高いナノアンテナを実現した.
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Strategy for Future Research Activity |
古典・量子混合物理計算法の更なる高速化,高精度化を実現するため,引き続きアルゴリズム及びハードウェアの観点から演算の最適化などを検討する.アルゴリズムの観点からは,ポテンシャルのみによる電磁界の表現法,ゲージの選択,数値計算の安定性などを検討する予定である.ハードウェアの観点からは,クラスタ計算機による高効率な並列計算を検討する. 光物質相互作用の解明に関しては,物質が生成する近接場および電磁場との相互作用を引き続き解析する.平成27年度には,物質が生成する近接場の影響を正確に考慮できる本手法を応用することで,物質の電子状態を制御する光パルスの設計に成功した.この成果より,物質が生成する近接場の影響は局所的であるものの,電子を拘束するポテンシャル構造などにより,その影響範囲は変化することが予想される.光物質相互作用の更なる解明を進めるうえで,現在まで報告のないこの問題点について新しい知見を得る. ナノ物質の共鳴吸収プロセス解析においては,現在までの研究成果により非局所的効果を含めた分散モデルの妥当性を示している.また,複数の微小金属を直線状に配置したモデルでは,金属の配置を変化させることで近接場光の位相制御が可能となることを平成27年度に発見した,今後は,複数の金属粒子を用いた局所的円偏光生成及び受光素子についても併せて解析し,光直接記録の読み出し方法の確立に向けた検討を行う. これらの研究成果を総括し,最終年度は光直接記録方式のシステム設計及びシミュレーション検証などの応用を試みる.
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Research Products
(44 results)