2015 Fiscal Year Research-status Report
組み合わせ論的および数理計画論的高位レベル合成手法の研究
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26420323
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉村 猛 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80367177)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高位レベル合成 / スケジューリング / リソース割り当て / 低消費電力 / ポート割り当て / アルゴリズム / 最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
高位レベル合成の最適化を目指し、スケジューリング問題とリソース割当て問題の両面から研究を進めた。 まず、スケジューリング問題では、閾値電圧の調整による漏れ電力最小化に取り組み、BCG(Binding Conflict Graph)とよばれるグラフを提案した。これは演算リソースの割当の制約を表わすもので、このグラフに基づく演算ユニット数最小化スケジューリング手法を検討した。そして、このグラフをタイミング等、他の制約も表現できるよう拡張し、漏れ電力の最小化手法を提案した。計算機実験により、本手法が前年度の手法に比べ、回路の性能を落とすことなく、漏れ電力を10.2%削減できることを確認した。また、前年度開発した、電源電圧調整による動的電力最適化手法を拡張し、動的電力および漏れ電力の双方を最小化する手法の検討をほぼ完了した。次年度に、計算機実験および手法の改良を行う予定である。 次に、リソース割り当てについて、ポート割り当てアルゴリズムの高性能化に関する検討を行った。高位レベル合成では、二つの変数の加算を行う場合、各々の変数を加算器のどちらのポートにつないでも結果は同じであるが、必要なHW資源量に差が生じることがある。ポート割り当て問題は、HW資源を最小化するようポートを割り当てる問題である。この問題に対して、前年度に引き続き行列表現による手法を検討し、実装を行った。そして計算機実験により、前年度の木の変換に基づく手法に比べ、計算時間が約80%削減できることを確認した。 更に、リソース割当手法に関して、配線量最小化を行う手法が知られているが、本研究では、この手法で用いられているグラフの規模を大幅に削減し、スケジューリング問題と同時に解く手法を提案した。そして、計算機実験により、乗算器、加算器、レジスタ、MUXの数がそれぞれ5%, 15%, 5%, 4%削減できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高位レベル合成におけるスケジューリング問題とリソース割り当て問題に関する研究を行い、いずれも問題においても、既存手法を凌駕する結果を出している。 まず、スケジューリング問題では、BCG(Binding Conflict Graph)グラフに基づく新しい手法を提案し、前年度の手法に比べ、回路の性能を落とすことなく、漏れ電力を約10%削減できることを確認している。また、既に開発しているネットワークシンプレックス法による動的電力の最適化手法を拡張することにより、漏れ電力の更なる大幅削減と計算時間の短縮が可能であるとの見通しを得ている。 また、リソース割り当てに関しては、ポート割り当て問題で、前年度検討した行列表現に基づく手法を実装し、前年度提案した木の変換に基づく手法に比べ、計算時間を約80%削減している。配線量最小化リソース割り当て問題に対しても、スケジューリング問題と併せて解く手法を開発し、乗算器、加算器、レジスタ、MUXの数がそれぞれ5%, 15%, 5%, 4%削減した結果を得ている。 以上の通り、今年度は、リソース割り当て問題に対して、前年度に提案した手法を実装し、計算機実験によりその有効性を確認するとともに、スケジューリング問題に対して、新しい手法の開発を並行して行い、実装・評価まで行っている。さらに、動的電力最適化手法の拡張により、漏れ電力の大幅削減の見通しを得ていることから、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、高位レベル合成におけるスケジューリング問題とリソース割り当て問題の研究を行なう。まず、スケジューリング問題においては、今年度、動的電力最適化手法を拡張することにより、漏れ電力の更なる大幅な削減と計算時間短縮の見通しを得たが、次年度はその手法を実装し、ベンチマークデータによる計算機実験を行う予定である。そして、漏れ電力、動的電力、使用リソースの評価を通じて、手法の有効性を確認する。 また、リソース割り当て問題では、ポート割り当て問題に対して、今年度、木の代わりに行列演算に基づく手法を開発し、計算時間の大幅短縮を実現したが、次年度は、更なる解の改良と計算時間短縮を目指し、2部グラフとタブサーチ手法を組み合わせた手法の検討を行う。既に、予備的な検討を通じて、実現の見通しを得ており、この手法の実装と計算機実験を通じて、実用的な観点からの有効性を確認する。さらに、配線量最小化リソース割り当て問題に対して、今年度開発した手法ではリソース割り当てを行う際、最長経路アルゴリズムを使用しているが、動的計画法を用いることで、目的関数のより精密な評価を可能とし、更なる解の改良を試みる。 一方、近年、3次元LSIの重要性の増大に伴い、高位レベル設計でも、TSV割り当ての考慮が必要となりつつある。そこで、本研究で開発した、グラフ理論的手法を応用することにより、TSV割り当て問題の高速解法の検討を行う。
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Causes of Carryover |
本研究課題は次年度が最終年度であるが、プログラム開発の作業量が当初の予定より大幅に増加することが予想されるため、当年度の支出は当初の当年度予算の額に近い値にとどめ、残り(前年度からの繰越額とほぼ同額)を次年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
プログラム開発の作業量増加に伴い、繰り越し分は人件費(学生アルバイト)に充当する。その他の主な支出項目として、プログラム開発用コンピュータの購入と論文掲載費を予定している。
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Research Products
(5 results)