2015 Fiscal Year Research-status Report
多次元信号復元のための事例に基づく非分離冗長重複変換の設計と実現
Project/Area Number |
26420347
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
村松 正吾 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (30295472)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 冗長変換 / スパース表現 / ボリュームデータ復元 / 辞書学習 / GPGPU実装 / 確率的勾配降下法 / タイトフレーム / 画像処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、非分離冗長重複変換の設計、実現および信号復元応用について検討している。平成27年度は特に、事例に基づく設計の効率化、三次元ボリュームデータ復元応用、多重解像度解析構成に対応したGPGPU実装について検討を行った。 非分離冗長重複変換は、我々が提案している多次元信号に対する冗長変換で、対称性と重複性を有する水平垂直不可分な要素画像により構成される。本変換は任意の有理数の冗長度を選択できる上、エネルギー保存制約を構造的に与えられる利点をもつ。IoT時代を迎え、信号センシング環境は多様化している。また、大規模計算時代を迎え、高次元信号処理の普及も必然である。このような背景から、高次元信号のノイズ除去、超解像、欠損修復等を効率的に実現できる信号復元技術について、その可能性を明らかにする本研究の意義は大きい。 平成27年度の具体的な成果を以下にまとめる。まず、非分離冗長重複変換の事例に基づく設計の効率化を行った。目的関数の解析的勾配を導出し、確率的勾配降下法を利用して、大規模な設計を可能とした。また、三次元光コヒーレンストモグラフィー(OCT)画像のノイズ除去に提案法を応用したほか、周波数領域でのGPGPU実装による多重解像度解析構成の高速化を行った。 これらの研究成果について、アジア太平洋信号情報処理学会年次大会(APSIPA ASC2015)や信号処理シンポジウムなど国内外の学会にて積極的に発表を行い、広く情報を発信すると共に、今後の発展に有効な情報の収集を行った。また、非分離冗長重複変換の信号境界処理法のほか、指向性重複直交変換の混成構成によるポアソンノイズ除去および画像融合に関して学術論文にまとめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の当初計画は、非分離冗長重複変換の事例に基づく設計の効率化と復元問題に特化した設計手法の提案、周波数領域でのGPGPU実装の実用化に向けた改善、具体的な三次元ボリュームデータを対象とした復元応用への展開を予定していた。 物品購入、成果発表なども含め概ねこの研究計画のどおりに進めることができた。特に、設計の効率化によって、これまで困難で事実上不可能であった大規模な設計が可能となり、応用範囲が広がった。また、多重解像度解析構成の二次元および三次元変換の周波数領域処理をGPGPU上で実装し、処理速度の向上を確認することができた。さらに、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)により観測したマウス肝細胞の三次元ボリュームデータに対するノイズ除去を実施し、提案法の効果を確認することができた。 これまでの研究成果として、非分離冗長重複変換の信号境界処理法のほか、指向性重複直交変換の混成構成によるポアソンノイズ除去および画像融合に関して学術論文にまとめた。現在、事例に基づく設計法に関する学術論文を投稿中である。今後、研究目標を達成するための準備を整えることができた。しかしながら、信号復元問題のおいて観測過程を考慮した設計について未検討である。他にも、提案変換の対称性や局所性などの特徴を考慮した高速実装も課題として残されている。再利用しやすいモジュールやライブラリの整備も不十分な状態である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策を設計、応用、実現に分けて以下に述べる。 1.設計:平成27年度の成果として、提案変換の事例に基づく学習設計の効率化による時間短縮を実現できた。今後は、応用ごとに異なる対象信号や観測過程に特化した設計の問題に取り組むほか、実信号から複素信号へと理論の拡張を進める予定である。 2.応用:平成27年度は、非分離冗長重複変換を三次元光コヒーレンストモグラフィー(3D-OCT)画像のノイズ除去に適用し、有効性を確認した。今後は、観測過程の推定とボケ除去など信号復元の実現に展開するほか、提案変換と畳込みニューラルネットワーク(CNN)の畳込み層との類似性からこれらの関係を整理し、テクスチャ画像の特徴抽出等への適用について検討を進める予定である。 3.実現:平成27年度は、多重解像度解析構成の変換について周波数領域処理をGPGPUで実装し、高速化の効果について有効性を確認した。しかしながら、提案変換の対称性や局所性といった特徴が未だ活かされていない。さらに、設計時の最適化処理についてはGPGPU等による高速化が未検討となっている。今後は、これら課題について検討するほか、提案法のモジュール化やライブラリの整備を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
当初、論文掲載費の支払いを予定していたが、論文の掲載が平成28年度となったため、平成27年度内に支払うことができなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に掲載を計画していた論文が平成28年度4月に掲載されたため、この論文の掲載費の支払いに充てる。
|