2014 Fiscal Year Research-status Report
超高次デルタシグマ変調器を用いた高精度・高能率A/D変換器の開発
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26420360
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鮫島 俊哉 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (00298192)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 符号化 / A/D変換器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,これまで実現されていない超高次のデルタシグマ変調器(ΔΣ変調器)を,ロバスト制御理論に基づいて理論的に設計し,それを用いた高精度・高能率のA/D変換器を開発することである。数10次を超える超高次のΔΣ変調器がもし実現できれば,量子化ビット数がたとえ1ビットであっても,現実的な標本化周波数のまま高い信号対量子化雑音比(SNR)が得られ,しかも通常のマルチビット方式では不可能な広帯域信号のディジタル記録が,非圧縮でかつ伝送容量を増やすことなく可能となる。それにより,音響・映像信号を対象とした記録媒体・伝送経路のさらなる有効利用を図る。 本年度は,ΔΣ変調器の設計に対して,ロバスト制御理論の一つであるμ設計法を効果的に適用するための理論的検討を行った。ΔΣ変調器における量子化器Qを線形利得としてモデル化し,それを加法的不確かさを有する制御対象とみなし,そしてΔΣ変調器におけるループフィルタはフィードバック制御器と位置づけた。これにより,ΔΣ変調器の設計問題を,制御対象の不確かさに対してフィードバックシステムの安定性を保ちつつ,信号周波数帯域内のSNRを大きくするようなループフィルタを求めるという,ロバスト制御問題として取り扱うことができるようにした。つぎに,μ設計法によって当該のロバスト制御問題を解くための手順を構築し,ΔΣ変調器の設計を簡単に実行することができるようにした。さらに,構築した設計手順に従って実際にΔΣ変調器の設計を行い,制御性能の評価を行って,μ設計法を使用する際のパラメータ値の選択,評価関数の設定の仕方についても,ある程度の目安を求めた。 以上により,従来のような試行錯誤的な手法に頼らずに,簡便・迅速に性能の良いΔΣ変調器を設計することができるようになったと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画時に想定していた研究目標を,完全には実現することはできていないものの,計画していた国内学会の研究成果発表1件を行うことはできたため,おおむね計画とおりに進展しているものと自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,ΔΣ変調器の設計に対して,ロバスト制御理論の一つであるスライディングモード制御を適用するための理論的検討を行う予定である。 まず,ΔΣ変調器の設計問題をスライディングモード制御理論によって解釈することができるように,ΔΣ変調器のシステム構成を再構築する。つぎに,スライディングモード制御器を設計する際に必要となる各種パラメータの理論定式化を行う。μ設計法を適用したときと同様に,スライディングモード制御を使用する際のパラメータ値の選択,評価関数の設定の最適化を含めて,一般的な設計手順として整理し,誰でも簡便・迅速にスライディングモード制御理論によるΔΣ変調器を設計できるようにしたい。 またそれに平行して,μ設計法あるいはスライディングモード制御理論によるΔΣ変調器をハードウェアとして実現するために,Field-Programmable Gate Array(FPGA)を用いた試作システムの開発準備を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画時当初に,購入予定としていたソフトウェアを今年度は購入せず,他のソフトウェアで代用したため,若干の未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に計画している,ハードウェア開発をするための電子部品類の購入へ充てる。
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