2014 Fiscal Year Research-status Report
重み分布を用いた直交振幅変調方式の多元符号化とその復号法
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26420376
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
小西 たつ美 愛知工業大学, 工学部, 教授 (00340159)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | QAM / 誤り訂正符号 / 時空間符号 / MIMO / 重み分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
ディジタル通信において、限られた周波数を効率よく使用し、一度に沢山の情報を送信することが出来る、多値の直交振幅変調(quadrature amplitude modulation : QAM)に、誤り訂正符号や時空間ブロック符号、時空間トレリス符号などを組み合わせる場合、従来の方式では、ある距離(例えば下界)において最適な符号であっても、QAMの多値数が増えるにしたがい距離構造が複雑になるため、全ての距離で最適である符号を探索または構成することは困難であった。そこで本研究では、QAMの全ての信号点間の距離を重みとして表現し、その重み分布を利用して探索や構成が可能な、多元符号化方法について検討している。 多値変調において、ユークリッド距離をユークリッド重みで表すことが可能な符号を用いる利点は、主に二つある。一つは、符号の距離分布を求める計算量の著しい減少である。これにより信号点数の多い多値QAMの符号化においても、真に最適な符号を見つけられる可能性が出てくる。二つ目は、そのような多元符号による符号化方式が、二元符号よりも通信路容量や誤り率において、良い性能を持つ可能性があると言われている点である。 これまでのところ64QAMと256QAMに対し、整合写像という考え方を基に効率よく重み分布を調べる手法を提案し、従来から知られているUngerboeckのトレリス符号や、Alamoutiの時空間ブロック符号と比較して、優れたビット誤り率を示す符号を見つけることが出来ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
符号の距離分布を重み分布で表す手法については、多値QAMを整合写像の概念で拡張し、ユークリッド距離を最大4種類のユークリッド重みで表現可能であることを示した。その手法を、非二元QAMトレリス符号化変調へ適用し検討したところ、整数剰余環の零因子によって符号の性能が劣化することが分かったため、零因子を持たない乗算部に変更することで、良い符号が得られている。 得られた符号のAWGN通信路とレイリーフェージング通信路でのビット誤り率について、提案手法を用いて重み分布から理論的に求めた平均誤り率と、シミュレーションで得られた結果を比較したところ、それらがほぼ等しいことが判明した。これらの結果から、QAMトレリス符号化変調方式において、重み分布で探索する手法の有効性が裏付けられたと考えている。 また、先行研究として64QAM時空間ブロック符号への適用を検討していたため、当該年度では、256QAM時空間ブロック符号への適用についても検討し、Alamouti符号との比較を行ったところ、受信アンテナが2本以上の場合に、得られた符号が優れたビット誤り率を示すことが判明している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、256QAM時空間トレリス符号の検討を行う予定である。時空間トレリス符号は、複数本の送信アンテナを使用し、符号化による冗長性を空間ダイバーシチを利用して実現するため、使用するアンテナ数は増えるものの、通信速度を落とさずに誤り訂正符号を適用することがが可能である。そのため大容量で通信を行いながら信頼性を高めることが出来る。 しかしこれまで時空間トレリス符号は、QAMの距離構造の複雑性から、設計基準を満たす良い符号を見つけることが難しく、現在一部の64QAMのための符号が得られているものの、それより多い信号点集合については、まだほとんど検討されていない。 これまで我々が重み分布で探索した64QAMの時空間トレリス符号は、その一部の知られている64QAMの最適符号と、同性能の符号となっている。よって256QAMの符号や、それ以上の多値の信号点集合からなるQAMに対しても、有効な符号が得られるのではと予想している。 また提案している多元符号は、二元符号と比べて復号計算量が増加する。これは提案手法の実用化を妨げる要因になるため、復号方法の簡略化についても検討する予定である。特に、提案符号の持つ準線形性を利用する復号の簡略化についての検討を考えている。それ以外に、既存の優れた性能で知られている多元符号を提案手法に適用する手法についても検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初の予定より、旅費にかかった費用が少なかったため、わずかではあるが残金が出た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の旅費の一部として使用する予定である。
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