2014 Fiscal Year Research-status Report
拡張現実に適用可能な携帯端末を考慮した印刷画像へのデータ埋込・抽出手法の開発
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26420378
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
棟安 実治 関西大学, システム理工学部, 教授 (30229942)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | データ埋め込み / 印刷画像 / データ読み取り / 携帯端末 / タブレット / レンズ歪み補正 / ユーザインタフェース / 仮想現実感 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の実績として,携帯端末を用いたデータ抽出アルゴリズムの開発においては,手持ち可能なAndroid 4.4.2をOSとするタブレット端末である,SamsungのGalaxy Tab S とSONY Xperia Z ultraの2種類の端末に昨年度までに開発したアルゴリズムを実装した.その上で,実行時間とデータの検出率を評価し,PSNRを40dBと設定した上で検出率は90%以上を得たが実行時間がGalaxy Tab Sで12秒,Xperia Z ultraで20秒と非常に処理に時間を必要とすることがわかった.そこで,アルゴリズム中の各処理における負荷を測定するため,各処理における実行時間の測定を行った.それによれば,Galaxy Tab Sにおいて,画像読み込みに561ミリ秒,コントラスト調整に162ミリ秒,枠線検出に277ミリ秒,余白除去に103ミリ秒,レンズ歪み補正に6518ミリ秒,射影変換に1203ミリ秒,データの復号に3082ミリ秒かかることがわかり,レンズ歪み補正に大幅な時間を必要としていることが明らかになった.これより,レンズ歪み補正に対して何らかの高速化を適用する必要があることが明らかとなった.複数枚の適用については,枠線の端点の位置やレンズ歪み補正時の回帰直線との誤差によって,検出が難しいと考えられる画像を排除する手法を考案し,検討を行い良好な結果を得た. ユーザインタフェースの開発においては,取得画像のサイズと検出率の関係を明らかにするとともに適正なサイズで撮影を行えるようなインタフェースの構築を検討し,実装した.その結果,わずかではあるが検出率の改善を得ることができた.また,枠線検出が正常に行えないと検出が行えないことから,枠線検出に失敗した場合にはエラーを出し,再度検出をうながすようなインタフェースを実装した.その結果,より実用性のある実装が可能になった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,研究実績の概要でも述べたように,懸案であったアルゴリズムのタブレット端末への実装を完成させることができた.さらにそれに関連して,画像撮影のインタフェースについても評価することができた.この2テーマについては,画像特徴量に関連する部分など,若干未検討の部分があるものの次年度に向けて重要となる課題を解決できた.そのため,これらのテーマについては研究は順調に推移していると考えている. しかし,主として実験を必要とする画像の大きさ・種類に応じたデータ埋め込み技術の開発と検討のテーマに着手することができなかった.これは,この研究を担当する予定であった学生の体調が急に不良となったため,研究に着手できなくなり,研究に従事する人員が少なくなったためである.しかし,これは突発的な要因であり,この問題を検討するための準備は本年度で終了していると考えられるため,研究に必要なマンパワーを単に割り当てることで,この問題は解決できると考えている.また,このテーマを実行するために必要とされるスキルはそれほど高くないことも,その理由の一つである.そのため,次年度に多めの人員を割り当てて実験を行うことで,研究期間内にこのテーマをリカバーすることは可能であり,特に研究目標に対する影響は大きくない. 以上の点から,本年度の研究はおおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には,研究は順調に推移しているので,当初の計画通り研究を進めることを考えている.すなわち,今年度得られた結果を踏まえて,平成27年度以降に取り組む課題としてあげた以下の課題について検討する.1)動画像を積極的に用いたデータ抽出アルゴリズムでは,これまでの手法を元に動画像を対象とした場合のアルゴリズムの検討に着手し,アルゴリズムの確立に目処を立てる.2)埋め込み・抽出アルゴリズムの改良では画像サイズと埋め込み情報量の関係を明らかにし,ある程度画像サイズや埋め込み情報量に自由度を与える手法について検討する.3)ユーザインタフェースの改良とその携帯端末への実装と評価では,画像特徴量を用いたより洗練されたユーザインタフェースの開発に取り組む.画像の大きさ・種類に応じたデータ埋め込み技術の開発と検討については,埋め込み・抽出アルゴリズムの改良と並行して取り組んでいく.特に,携帯端末への実装が完了したことから,実装・評価についての検討は大きく進展するものと期待できる. 研究担当の学生については,十分な人数を手当てすることが可能となるので,平成26年度の問題は平成27年度で解消可能と考えられる.仮に同様の問題が生じたとしても,今後については研究代表者のエフォートを増やすことが可能となるため,これにより手当をしていきたいと考えている.また,開発環境についても随時増強することにより,研究の速度を加速するように努める.
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Causes of Carryover |
研究を担当する学生が減ったため,その学生が執行するものとして当初計画していた謝金などの執行が行えなかった.また,旅費などについても同様の理由で執行が十分にできていない.特に,国内の会議に学生を派遣することを十分に行うことができなかった点が計画に差異が生じた理由である. 設備備品などについては,研究当初は比較的高価なWindows8搭載タブレットの購入を予定していたが,安価なAndroidタブレットで実行可能となったことと,大学全体でMatlabのサイトライセンスを購入することになったため,計画した金額と購入した物品の金額に差異が生じた.特に,Matlabの購入では47万程度を見込んでおり,これを見送った点が予定より執行額が大幅に小さくなった理由である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度は,物品費についてはアルゴリズムの実装と評価,特に端末によるスケーラビリティの評価のために,実験用の各種の新しいAndroidタブレットならびに開発用PCを購入することで,今年執行できなかった分を補い,70万の支出を見込む.研究に従事する学生を2人程度増やす予定であるので,それに必要となる物品もここから支出を行う.また,旅費についても,これらの学生も含めて積極的に学会に参加・発表させるために,80万円の支出を行う.人件費・謝金については,当初計画から増加した学生のプログラム作成に関する謝金なども含めて35万円の支出を行う.その他については,ほぼ当初計画通りに19万8109円を支出することとする.これにより次年度使用額と配分額を加えた204万8109円を執行する予定であり,今年度の残額もすべて執行できると考えている.
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