2014 Fiscal Year Research-status Report
高精度な余寿命評価を目指した複合型磁気センサによる非破壊疲労モニタリング法の構築
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26420406
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Research Institution | Oita National College of Technology |
Principal Investigator |
岡 茂八郎 大分工業高等専門学校, 情報工学科, 教授 (80107838)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非破壊検査 / 疲労 / 鉄系構造材 / 磁気センサ / 渦電流法 / 回転磁界 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,複合型磁気センサの試作とその駆動システムの試作,漏れ磁束法を用いるデータ収集システムの構築やLCRハイテスタを用いて複合型磁気センサの渦電流法の有効性も確認することを目的に研究を行った。この中で,複合型磁気センサは,フェライトコアを持った励磁コイル2個から成る一軸励磁系とパンケーキ型検出用コイルを用いて試作した。現在,この試作した複合型磁気センサとシンセサイザやロックインアンプを用いた駆動回路を用いてオーステナイトステンレスであるSUS304やSUS316を試料として疲労検出実験を行っている。また,本年度は,本研究の目的の一つである疲労形態の違いによる試料の材質変化を明らかにし,複合型磁気センサの開発・改良に資するデータを得る実験も行った。この実験は,試料(SUS316, SUS316L)を用い片振り引張疲労の分布状態や進行状態を,従来の平面曲げ疲労の実験と比較するデータを収集した。この結果は,「M. Oka, T. Yakushiji, and M. Enokizono, Evaluation of the Material Degradation of Austenitic Stainless Steel under Pulsating Tension Stress Using Magnetic Methods, Digests of 8th Asia-Pacific symposium on Applied Electromagnetics and Mechanics, pp.27-28, 2014」で発表し,日本AEM学会誌への採録も決まった。さらに,試料をSUS304として,片振り引張疲労と平面曲げ疲労の疲労状態の違いもFG型磁気センサを用いて検証した。この結果は,平成27年9月に神戸で開催され国際会議(ISEM2015)で発表する予定である。加えて,購入したLCRハイテスタを用いて,従来にない高周波励磁による疲労による板厚の変化に影響されない渦電流法のデータ収集も行った。この結果については本年度のいずれかの段階で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記評価の理由は,第1に,複合型磁気センサの試作が終わり,現有の装置を使っての疲労検出の予備実験が始り,複合型磁気センサによる疲労検出の第一段階の実験を行うことができたことである。平成26年度は,疲労検出を比較的簡単に行えるオーステナイトステンレス(SUS304)を用いた予備実験を行っているが,まだ最適な励磁周波数などの決定はできておらず,現在,試行実験を行っている段階である。しかし,複合型磁気センサに関する多くのデータを集めることができたと考えている。第2に,片振り引張疲労と平面曲げ疲労の疲労状態の違いをSUS316およびSUS304の試料を用い,FG型磁気センサを用いて把握できたことである。この両者の間には明らかな違いがあり,片振り引張疲労は微小欠陥が発生するまではその周辺で疲労の蓄積が顕著ではなく疲労発生部に集中しており,平面曲げ疲労では,微小欠陥が発生するその周辺で徐々に疲労が蓄積することが分かった。このため,両疲労形態に適合した磁気センサは,疲労が進んでいない部分でも検出できる感度が必要であることが分かった。この結果は,複合型磁気センサの改良に用いることのできる有用なデータであると考える。第3に,LCRハイテスタを購入することによって3MHz程度の高周波励磁による渦電流法による疲労検出の道筋が構築できたことである。高周波励磁を行うと磁性体,非磁性体に関わらず浸透深さが浅くなり,片振り引張疲労で問題となる板厚の変化の影響を受けない疲労検出が可能になる利点があり,かつ,渦電流法の高感度な利点を活用できることが分かった。以上,総合して,この研究は,複合型磁気センサの開発に関して概ね順調に遂行できていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,現状の複合型磁気センサは,従来から用いているシンセサイザとパワーアンプで駆動し,パンケーキ型の検出コイルからの検出信号をロックインアンプを用いて検出した。これを,平成27年度は,当初の目的であるDAコンバータとパワーアンプを用いた駆動系と,髙安定な差動アンプとADコンバータを用いた検出系に組み直すことを行うつもりである。平成26年度に試作した一軸励磁系の複合型磁気センサであれば現有の機器で構成可能なのでなるべく早く稼働させ,多くのデータを収集したいと考えている。この一軸励磁系の複合型磁気センサを用いて平成27年度は,対象試料の材質を軟鋼(SPCC, SPHC, SS400など)を用い磁性体での疲労検出実験に臨みたいと考えている。また,当初予定どおりパワーアンプを追加購入し,励磁系を二軸とし回転磁界励磁とする複合型磁気センサの試作や評価を行う段階に早く入りたいと考えている。回転磁界複合型磁気センサの場合は,検出系のコイルを現在の試料に垂直方向の磁界の変化を検出するパンケーキ型コイルではなく,ケイ素鋼板などの磁気特性評価に用いられるHコイルのような試料に平行な磁界成分を検出する方式が有効である可能性があるため,これも試作したいと考えている。磁気センサの試作や計測プログラムの開発と並行して,各種の鉄系構造材に対して主に片振り引張疲労とセンサ出力の関係を精密に評価する実験も合わせて行うつもりである。さらに,従来から用いているパンケーキ型コイルを用いた渦電流法を磁性体の試料に適用し,最適な励磁周波数の決定やパンケーキ型コイルの形状の決定も行いたいと考えている。このような,計画でこの研究を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
計画的に経費の執行に努めたが,776円という残金をだした。これを,年度内に執行し,有効に使うことは困難であるので,次年度への繰り越し金とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度中に,電子部品や試料作成のための費用の一部に充てたいと考えている。
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