2014 Fiscal Year Research-status Report
エネルギ型情報縮集約原理の開発に基づく構造的ネットワーク設計論
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26420422
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 博 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (70274561)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | キーワード / 非線形システム制御 / ダイナミクス / ネットワーク / 安定論 / 制御理論 / 国際研究者交流(オーストラリア) |
Outline of Annual Research Achievements |
あらゆる機器の要素間作用を物理伝達から電子信号伝達に置き換えるICTへの加速的期待は、ネットワークを通した情報共有による効率化・安全性の確保にある。しかし、無造作なネットワーク化は停滞や動揺による効率低下をもたらし、予期に反する不安定状態をまねく。これは、相互作用の大規模・複雑非線形な連鎖と、電子信号伝達によってエネルギ保存が失われることが理由である。したがって、ICTにより効率最適化・安全化を達成するためには、個別を超えた大域的なネットワークとしての設計が肝要であるという立場から。本研究は、構成モジュール毎のエネルギ情報に基づく縮約と、モジュール相互のエネルギ収支の集約の2つのみにより、構造からのネットワーク設計を可能にする数理原理を開発するものである。そこで初年度は主に「縮約」の手法を開発し、以下の3つの結果を得た。 1.合成写像として閉じないエネルギ型縮約法の開発:積分状態安定性という概念で多くのエネルギ消散・収支特性を識別・包含し、エネルギースケーリングという数学的道具を新しく提案・整備し、ネットーワークでの相互作用に妨げられることなく縮約できる枠組みを作り上げた。 2.空間分布するエネルギの境界収支に基づく縮約法の開発:空間分布が合成写像として閉じることをさらに阻むことを突き止め、複数のケースにおいてソボレフ空間を使うことで解決する方法を見出した。 3.ランダムノイズ不確かさへのエネルギ型縮約の拡張:ノイズが引き起こすエネルギーの拡散を特徴づける定式化と結合方法を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
合成写像として閉じないエネルギ型縮約法の開発については、当該課題の提案の一つの基となっている代表者が外国研究協力者が2013年に交わした予備的な意見交換・討議がとても役に立った。この外国研究協力者を予定通り本年度に招へいし、さらに深い意見交換・討議を行うことで、非線形系システムのエネルギースケーリングによる積分状態安定性の保存という発想に10月に至り、これを12月には国際学会の論文としてまとめることが出来た。成果の達成度が高いことから、非線形システム論をリードする主要な世界大会として始まるIFAC MICNON2015に投稿し、採択された。空間分布するエネルギの境界収支に基づく縮約法の開発については、博士研究員として6月まで在籍した研究協力者と偏微分方程式に取り組み、放物型方程式が縮約によりネットワーク結合に有益な情報が残りやすいことを突き止めた。そこで得た最大で独創的なアイディアは、エネルギーをソボレフ空間で特徴化することである。この成果は制御システム数理の世界主要誌にを投稿し、現在査読中である。ランダムノイズ不確かさへのエネルギ型縮約の拡張については、既存の安定性・ロバスト性の実用上の限界をまず明らかにし、サンプル過程毎に安定性とロバスト性を定義する新しい着想に至り、これを確率微分方程式に対する積分入力状態安定性として整備した。この特徴化に成功は過去に類のない成果であることから、非線形システム論を含む制御システムの分野をリードする世界大会ACC 2015に投稿し、採択された。なお、以上の成果の一部は速報として年度内に国内の専門分野の会議で発表を済ませることが出来た。このように得たすべての成果は、次年度から本格的に開始する「集約」手法の開発という研究ステージへの遷移をよりスムーズにした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に得た「縮約」で特徴化した情報を「集約」してネットワーク全体の振る舞いを導き出す手法を平成27年度に開発し、平成28年度に統合する。そこで、今後は集約の代数演算法の検討から始める。平成26年度に開発した縮約によりサブシステムの情報が消散不等式として得らることを利用して、元の物理ネットワークを消散不等式のネットワークへと書き換える。そこにスケーリングという自由度を持ち込み、ネットワーク全体の振舞いを特徴付ける。これをプラグアンドプレイ型の代数計算へとつなげるために、代表者の以前の研究で有効性が示されたグラフ被覆と、完全化を活用する。また、平成26年度にエネルギースケーリングの開発過程に発見した不変性の定式化をロバスト性の特徴化へと展開する。また、27年度はリアプノフ関数の構成理論という側面から外国研究協力者を招へいし、意見交換・討議を通じて従来のリアプノフ理論体系と26年度の成果の接点を整理し、集約として枠組化する。また、26年度に得た縮約法の実用性および27年度に開発を進める集約法を評価するため、代表者機関の大学院生を中心に、交通流、ビルのエネルギーマネージメント、クラウドコンピューティング、電力網需要平準化などのモデルをPC上に構築し、シミュレーションを行う。確率ノイズを使ったシミュレーションでは、サンプル過程だけでなく、大数の法則に基づいて平均を用いた期待値による検証を行う。非常に膨大な計算量となるが、並列的な計算とデータの階層化により効率的な検証を工夫する。平成27年度には平成26年度に投稿した会議論文の改訂や発表を行い、26年度に投稿した雑誌論文の改定を行う。27年度以降の成果の一部を速報として国内外の学会発表会で公開・発表するとともに、集約に関わる数理手法をまとめて世界トップの雑誌に投稿する。
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Research Products
(5 results)