2014 Fiscal Year Research-status Report
制御性能の向上に寄与するゆらぎのメカニズムの解明とその工学的応用
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26420431
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
牛田 俊 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (30343114)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ゆらぎ / ロボットアーム / 倒立振子 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来より,ゆらぎやノイズといった不確定要素は制御系を乱す外乱であるという固定観念があった.しかし,申請者は生命活動におけるゆらぎに着目し,制御系に含まれるゆらぎによって制御性能が向上する可能性を理論的に予測した.さらに,シンプルな構造のメカニカルシステムを用いて,その予測を実機実験により自ら確かめた結果が注目を集めている.本研究課題の目的は,ゆらぎの機能に関してさらなる理論的な解析を行い,その成果を工学的に有益な実システムとして体現することである. 本年度はカメラ-ロボットアーム-倒立振子系やカメラ-プロジェクタ系をプラットホームとして利用し,制御系のダイナミクスにゆらぎを含む場合の制御性能評価を行うための実験装置の導入,設置を行った.具体的には,数値シミュレーション実験と実機による実験の両側面から,ゆらぎが振子の安定化と時間応答性能に与える影響を明らかにするための方法論を模索することである.倒立振子系のシミュレータは,将来の2 リンク2 自由度のマニピュレータの実装を見込んで汎用性を重視して設計を進めている.実機実験では,ロボットアーム上に倒立振子の物理系がすでに設置されているが,振子の長さ・重さ・慣性モーメントを自由に設定できるように一から設計をやり直す必要がある.なぜならば,確率モデルに対する安定解析では,制御器のゲインと制御対象である振子のパラメータの二つを可変な設計パラメータとして用いてきたからである.カメラ-プロジェクタ系では見かけの制御を行う際のモデル予測制御のアルゴリズムへゆらぎを導入することを模索している. 以上のように,初年度の成果は次年度以降に工学的な応用を探索する切口となるため,特に実機による実験を様々な条件設定の下で行い,ゆらぎの効果の性能評価に力を注ぐことに主眼を置いている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実機実験でのゆらぎの評価が進まない場合は,シミュレータを用いて条件変更の検討を繰り返すことで問題解決を行うことを計画していた.これは当初の予定通り,シミュレータの構築を進めることができているが,実機実験のセットアップには,時間を要している状況である.これは,振子の長さ・重さ・慣性モーメントを自由に設定できるように一から設計をやり直す必要性に対して,その実装方法の難しさに起因している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は昨年度に引き続き,ロボットシステムに対するゆらぎの印加実験の成果を,ロボットシステム以外の様々な制御系に適用することを試みる.一方で,メカニカルシステム以外の見かけの制御系等への応用についても導入を試みる.本研究課題の重要なトピックの一つは「むだ時間補償」であった.汎用の標準的で安価な30fps のカメラを用いてむだ時間を再現してきたが,本研究課題では,制御性能の良し悪しの原因を「ゆらぎ」「むだ時間」の間で切り分ける必要がある.そのためには,むだ時間を自由に調節できる高速な視覚系を構築しなけらばならない.そこで,今年度は,高速な視覚系を導入し,ゆらぎとむだ時間を含む制御系に対する性能評価を行う環境を整える予定である.
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