2015 Fiscal Year Research-status Report
鉄粉散布法による既設コンクリート中の鋼材腐食発生条件の特定
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26420444
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Research Institution | Kisarazu National College of Technology |
Principal Investigator |
青木 優介 木更津工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70360328)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 鋼材腐食発生限界塩化物イオン量 / 塩害 / 鉄粉散布法 / ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム水溶液 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,既設コンクリート中の鋼材腐食発生限界塩化物イオン量を特定する方法として報告者が考案した「鉄粉散布法」の実構造物コンクリートへの適用性を実験的に検証することにある。 平成26年度より開始された本研究だが,同年度は実験室レベルにあった鉄粉散布法を実構造物コンクリートへ適用するための課題の解決に重点を置いた。それらの結果を日本コンクリート工学会年次大会2015にて発表したが,同方法はまだ課題を残していた。すなわち,①実験結果が不安定となる(鉄粉が思うように発錆しない),②実験結果を得るまでに日数がかかる,ということである。 平成27年度は,上記①②の原因の究明と,鉄粉散布法のさらなる改良に取り組んだ。ろ紙上で鉄粉の発錆を観察する実験を行い,上記①②の原因は,「試験体が高アルカリ条件にあるため,鉄粉から発した錆は『黒錆』で留まり,目視でそれとわかる『赤錆』にまで移行していない」ことにあることがわかった。このことから,鉄粉散布法の改良として,「鉄粉の発錆よりも,その発端となる鉄イオンの溶解を確認するほうがよい」と考え,無機化学の分野で鉄イオンの検出に用いられているヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム水溶液の併用を試みた。その結果,塩化物イオンを含む試験体上の鉄粉からは鉄イオンの溶解を示す青色の沈殿が明確に現れること,また,その結果が得られるまでに要する時間は30分程度であり,従来の方法に比べて実験時間を大幅に短縮できることを確認した。 当初の計画より遅れてしまったが,鉄粉散布法は,ようやく,実構造物コンクリートへの実用性を検証できる段階に至った。これらの成果を日本コンクリート工学会年次大会2016の論文集に投稿し,掲載決定の通知を得た。本年7月に発表予定である。また,本年9月に行われる土木学会全国大会でも発表の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始の早い段階から鉄粉散布法の実構造物コンクリートへの実用性の検証に入る予定だったが,結局,同方法を「実験室で使えるレベル」から「実構造物への検証に使えるレベル」にするまでに2年間を費やしてしまった。その意味では,「やや遅れている」というよりも,明確に「遅れている」と評価すべきかもしれない。 ただし,上述のように,当初考案していた鉄粉散布法は,これまでの検討と改良を経て,より実用的な方法になったと考えている。特に,数日以上を要していた実験時間を,わずか30分程度にまで短縮できたことは,今後の検証実験を進める上で大きなプラスになると考えられる。このことも含めて,これまでの遅れを取り戻すことは可能だと考え,現在までの進捗状況を「やや遅れている」と評価した。 また,今後の検証実験の進行にあたっては,当初から想定されていたように,実験に利用できる実構造物コンクリートの確保が課題となる。これまでに,当初からご協力いただける予定の各研究機関に加えて,土木研究所構造物メンテナンスセンター様,また,今回新たに東日本高速道路東北支社様からのご協力もいただけることとなった。これらの準備を徐々に進められていることも,進捗状況を「やや遅れている」に留めた理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度までに,実構造物コンクリートへの実用性の検証に使えるレベルの鉄粉散布法を考案することができた。また,検証実験に利用できる実構造物コンクリートの確保も進めてきた。平成28年度は,本研究の結論を得るべく,検証実験をまさに進めていくこととなる。 具体的には,撤去された実部材より鉄筋ごとコアを採取し,その切断片を試験体として,ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム水溶液を併用する鉄粉散布法を実施する。試験体表面における鉄粉と鉄筋からの鉄イオンの溶解状況を比較して,本方法によって,既設コンクリート中の鋼材腐食発生限界塩化物イオン量を測定できるかを検証する。 なお,本方法の実用性を検証する上で,本方法により測定される(鉄粉から鉄イオンが溶解する)限界の塩化物イオン量と,既往の研究によって明らかにされている鋼材腐食発生限界塩化物イオン量とを比較することも有効だと考えられる。本年度は,この実験も併行していく予定である。 本年度の研究成果は,過去2年間と同様に,日本コンクリート工学会の年次論文集に投稿したいと考えている。また,土木学会や日本非破壊検査協会での研究発表会,さらに,本校や学会委員会などで開催される研究紹介の機会などでも積極的に紹介していきたいと考えている。
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