2014 Fiscal Year Research-status Report
交通振動応答を用いる橋梁損傷同定手法の構築および実用性検証
Project/Area Number |
26420450
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
何 興文 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20454605)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 橋梁健全度評価 / 構造損傷同定 / 橋梁ヘルスモニタリング / 交通振動解析 / 車両と橋梁との連成振動 / 橋梁の維持管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,鉄道・道路橋を対象に列車・自動車などの走行荷重による交通振動応答を利用し,橋梁-車両連成振動解析手法とソフトコンピューティング理論を活用した,経済的かつ効率的な橋梁健全度一次抽出手法の構築およびその実用性検証を目的とする。 本年度において,本課題の先行研究ですでに構築した,シンプルな平面車両モデルおよび単純桁橋モデルを用いた基本的な損傷同定アルゴリズムをもとに,報告者がこれまで成し遂げた高度な橋梁-車両連成振動に関する解析的研究成果を活用し,前述基本アルゴリズムを拡張し, 15自由度列車および12自由度自動車の三次元車両モデルを用いた実用可能な損傷同定法の確立を進めている。そして,15自由度列車モデルによる損傷同定アルゴリズムは,すでに構築でき数値モデルによる解析的検討を実現している。その研究成果は,国際ジャーナルにSmart Structures and Systems, Vol. 13, No. 5, pp.869-890,2014に掲載されている。また,12自由度三次元自動車モデルを用いた検討も順調に進めている。 一方,損傷同定において,理論上無数にある橋梁の損傷パターンを実態に基づき適切に設定することは,同定手法の精度および実用性に大いに影響する。実橋梁の損傷実態を把握するため,現在,共同研究者や申請者が委員を務めている関連する学術委員会の協力を得て,実際の鉄道・道路橋の損傷箇所・程度の統計結果を調査している。 そして,共同研究を行っている研究協力者の協力で,すでに橋梁模型とラジコン車両による室内走行実験を行い,実験データを入手している。また,解析結果との比較検討より,開発した損傷同定手法の妥当性および精度の検証もすでに開始し,手法の妥当性を初歩的に確認できている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究目標は,おおむね達成している。手法の開発において,三次元列車モデルによる同定アルゴリズムの構築が順調に実現され,研究成果を国際学術雑誌に掲載するまでに至っている。三次元自動車モデルによる研究成果は発表までに至っていないが,おおむね計画通り進んでいる。また,橋梁損傷実態の調査は,協力者の都合もあり,期待するほどデータを入手できていないが,予想される範囲内である。そして,室内模型実験が順調に実施され,必要なデータを入手し,開発手法の妥当性の確認も順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,前年度に有効性を確認した損傷同定アルゴリズムの実問題への応用を検討する。この際立体列車・自動車さらに複雑な構造を有する実橋梁の三次元モデルを用いる。ここで,実測値と整合性を取るため,路面やレール踏面凹凸および地盤ばねなどの影響も考慮する。さらに,実橋梁における振動実験データを用いて手法の有効性検証も行う。 さらに,実構造に対する損傷同定は,複雑で大規模な問題であり,同定アルゴリズムの精度およびロバスト性向上を最新技術により図ることは不可欠である。本研究では,ソフトコンピューティング専門家の協力を得て,NNとGAに関する最新技術を本手法へ応用する。具体例として,本研究ではNNの学習対象の入出力関係が複雑で微分不可能,あるいは不連続性を有する可能性があり,降下法に基づく逆誤差伝搬法ではうまく学習できないことも考えられる。その場合,微分不可能な問題にも単純な計算プロセスで応用できるPSO (Particle Swarm Optimization)などの先端手法を用いて,NNの構造最適化を試みる。また,現在用いているシンプルGA(SGA)アルゴリズムでは,損傷状態が複雑なケースでは,対処できない可能性がある。そのため,ハイブリッドGAや多目的GAといった進化した手法を適用し,局所探査や複数の評価基準から最適解を求め,手法の高度化を図っていく。
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Causes of Carryover |
本年度の研究計画で予想した,室内実験の費用および橋梁損傷実態の調査費用について,研究協力者の協力によって,節約できた部分や,実態調査が協力先の都合により,すべて計画通りにできず,調査旅費の一部も節約てきた理由によって,繰越額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は,前年度に実施できなかった実態調査をさらに進め,そして室内実験で節約できた費用は,追加実験や多大な費用が必要となる実橋梁での実験に使用する予定である。
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