2015 Fiscal Year Research-status Report
都市高層建物が作る大規模乱流構造に関する数値解析的研究
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26420492
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
稲垣 厚至 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (80515180)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 都市大気境界層 / 筋状構造 / 建物後流 / 格子ボルツマン法 / LES / 大規模計算 / 相似則 / 外層スケーリング |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究により,建物群が作る都市大気境界層においても平板乱流境界層に見られるような,建物の数十倍の大きさを持った筋状の乱流組織構造が発達していることが知られている.これらの筋状構造は境界層内の運動量・熱・物質などの乱流輸送を支配していることが指摘されており,我々の生活圏内である街区内の風・温熱環境に強く影響していると考えられる.一方,ドップラーライダーにより,孤立した高層ビルの背後から十数kmに渡って筋状構造が形成されることが昼夜を問わずに観測されている.しかしその発生環境場や前者との物理的な相似性については明らかにされていない.本研究は数値実験により,両者の物理的な相似性を検討することに加え,後者の発生環境場を明らかにすることを目的とする. 数値実験により建物背後から発達する乱流構造を検討するためには適切な流入条件を選ぶ必要があり,本研究では2つの方法を取る.一つは乱数から流入変動風を作る手法であり,これについては昨年度行った.もう一つは一様流を与えるものであり,この場合乱流境界層が十分発達し,建物高さと境界層高度が十分分離されるためには流れ方向に長い計算領域が必要となる.本年度は後者の方法を取り,東京臨海部の3次元建物形状を底面境界に与えた,水平19.6km×4.8km,高さ1km,格子解像度2mの計算を実施した.流体計算モデルには格子ボルツマン法LESを用いた.計算結果において,孤立した高層ビル群の背後に数km以上に渡って発達する比較的強い筋状構造が再現されており,それがドップラーライダーによる現地観測でも同じ位置に観測されていることを確認した. その他に,筋状の乱流組織構造の幅の定式化を行い,都市における現地観測,風洞実験結果なども同一のモデルで表現できることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主な成果としては以下である. ・本計算で用いた格子ボルツマン法はその計算アルゴリズムの単純さからGPUを用いた大規模並列計算と相性が良いとされている.しかしながら工学分野では精度検証が多く行われているものの,気象分野,つまり格子幅を数mまで大きくしたときに流れの再現性があるのかについては検証が不十分である.そこで本研究において風洞実験及び,これまで多くの利用実績がある気象LESモデルとの比較を行い,既往のLESモデルに対して遜色ない精度の計算結果が得られることを確認した.また,実都市の計算結果についても乱流境界層の相似則の観点からも,既往の知見と整合性がとれていることも確認した. ・上記モデルを用いて実都市臨海部の大規模計算を実施し,高層ビル群から発達する大規模な筋状構造の発達を再現することができた. ・本モデルを用いて乱流組織構造の幅についてモデル化を行い,これが風洞実験,数値実験,屋外大気観測の結果を全て説明できることを示した.
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Strategy for Future Research Activity |
・今年度の成果から,乱流境界層の高さと筋状構造の幅の高度変化をつなぐ関係式を作ることができた.これにより以下2つの利点がある:(1)入力パラメータ(境界層高さと筋状構造の幅)の数を減らすことができる,(2)発達する筋状構造の幅を見積もることができるので適切な計算領域を設定することができる.この式に基づき流入変動風のパラメータを設定し,建物配列を変えた数値実験を行う.建物後流から発達する筋状構造の発生環境場について検討を行う. ・大規模計算の結果を用いて個々の筋状構造の特性について検討し,地表面性状との対応関係について検討を行う.
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Causes of Carryover |
結果の一般性について議論するため,日本とは異なる建物形状・配列についての計算を実施するためにトルコの建物データを現地政府より購入しようとしたが,年度内で購入することができなかったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き交渉を続けて購入する
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Research Products
(6 results)