2016 Fiscal Year Research-status Report
来襲外力の複数の最悪シナリオによる結果をまとめる統計解析法の構築
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26420494
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
北野 利一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00284307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志村 隆彰 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 助教 (40235677)
田中 茂信 京都大学, 防災研究所, 教授 (70414985)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アンサンブル / d4PDF / 経験度 / 再現期間 / 極値理論 / ベイズ統計 / 気候変動 / 治水計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動の研究で,多数のアンサンブル出力結果が得られるようになり,例えば,50年間の記録を60アンサンブル標本分のシミュレーション結果を用いれば,あたかも3000年分の試行と同等とみなせるため,再現期間の長い確率外力の算定の期待が高まっている.再現期間200年としても,15倍以上の期間長があれば,ほぼ確からしい推定が可能であると直感的に考える人も多いかもしれない.しかし,極値分布の特性によっては,無視し得ない不確定性は未だ残る.また,期間長の長いアンサンブル数1のデータとみなすよりも,既往の観測記録と同程度の期間長の多数のアンサンブルから得られる結果を統合させる手法を考える方が,用いるデータの特性を十分に考察できるはずである.そこで,本研究では,既往最大値から乖離している東海豪雨の記録が含まれた名古屋市を含むメッシュの60アンサンブル標本を用いて,1) 観測記録長と同程度の記録長の各々アンサンブル標本による推定結果を統合させる統計手法を開発した.これは,極値分布がポアソン分布と密接に結びつく分布であることを利用して,ベイズ統計で用いられる計算技法を援用して構築した.2) 多数のアンサンブル標本から得られる推定結果と,それらのデータを1アンサンブル標本とみなして得られる推定結果の整合を見る方法も提案した.これにより,従来に行なっている観測記録に基づいた極値統計解析による推定結果の妥当性を検討できることは,たいへん意義深いと考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ベイズ統計手法によるアンサンブル標本から極値分布の特性を抽出する手法を2015年度より検討中であると同時に,気候変動プロジェクトの一環で,気候モデルによる多数のアンサンブル標本によるデータベース(d4PDF)に同じような手法を適用して,観測記録を対象に極値統計による外挿で得られる結果と,多数のアンサンブル標本により統合して得られる結果を比較することにより,極値統計手法の一貫性を検討できることを示した.地点によっては,年最大値記録では,極値の漸近理論に適用するには不十分であり,より大きな値に限定した手法を用いるべきであることなどが示せた.また,両者の推定結果の比較には,閾値を超える極値に対して拡張されたポアソン検定(2014年度に開発)を適用した.これらにより,2017年度に検討する極値の空間統計に有力なツールとなる.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,空間相関を取り入れるための検討とベイズ手法による予測に着手したところである.多変量極値の統計は,Gumbel の時代から伝統的に行なわれており,期間最大値の多変量極値によるアプローチとしては,新しいものではない.しかし,自然災害の外力を他変量で扱う場合には,同時生起性に興味があり,それを期間最大値の他変量極値で扱うには,限界があり,また,直接的ではないため,複雑となり,応用に耐えるものとは考えにくい.近年,閾値を超える極値に対する多変量モデル(多変量パレート分布)が,Rootzen・Tajvidi により発見された.このモデルは巧妙な構造になっており,1側面の極値が閾値を越えれば,残りの側面の極値は閾値を下回っている場合も含めることができることに特徴があり,データの塊の外縁部を巧く取り込んで情報を増やすことにより,外挿の精度を高める方法である.なお,数学的な手法は,従来の多変量極値で用いられる方法が一部使えるものの,改めてスタートラインに立ち返って再構築する必要がある.かなり見通しが悪くなる点もあるが,困難点を乗越えるアイディアを用意しているので,今年度に応用を含めた研究成果をだせる予定である.
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Causes of Carryover |
昨年の7月に,海岸工学の国際会議がトルコで開催予定であったが,政情不安定のため延期になり,結局,参加しなかったために一部の予算が余ったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度には,自然災害に関する極値統計の応用についての国際会議が開催される予定であり,研究成果の発表を行なう予定である.現在,投稿中であり,採択の可否待ちである.
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