2014 Fiscal Year Research-status Report
フロックのポーラス構造に起因する沈降速度変動が成層海域の栄養塩循環に及ぼす影響
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26420503
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
齋田 倫範 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (80432863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 彰博 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (00366387)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 懸濁物質 / フロック / 沈降速度 / 密度成層 / フロキュレーション / フロック径 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度には、九州西岸の沿岸域に供給される細粒土砂の沈降・圧密特性に関する実験と分析を行った。これにより、平成27年度以降に実施予定の実験に用いる試料の基本特性を把握した。本研究では、九州西岸の主要内湾に流入する12河川の感潮域で採取した試料を対象とした。実験結果より、試料のフラクタル次元は、全試料で2.65前後であったが、有明海湾奥西部の本明川、塩田川で相対的に大きいことが確認された。また、試料のゲル化濃度は、白川で特に大きく、その南北に位置する菊池川、緑川でも他の河川より大きな値を示すことが確認された。さらに、試料の自重圧密に係わるパラメータ(透水特性や応力発現特性)についても河川によって大きな違いがみられた。これらの特徴の地域的傾向性を調べるために、実験で得られた沈降・圧密に係わるパラメータを独立変数として主成分分析を行い、得られた主成分得点を用いたクラスター分析を行ったところ、①本明川、塩田川、氷川、②六角川、嘉瀬川、筑後川、多々良川、瑞梅寺川、菊池川、緑川、球磨川、③白川の3グループに分けられた。このような地域的な差異の要因を探るために、各試料の顕微鏡画像に対して画像解析を行い、円形度、平均フェレ径、および円周相当径を評価した。その結果、白川、菊池川、緑川で採取した試料の粒子形状が、前述の特徴に影響していることが示唆された。しかし、粒子形状のみで全てを説明することはできず、結晶構造などが大きく影響していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、成層流体におけるフロックの沈降特性を実験的に評価し、海域物理場の変動に対する水質の応答を予測するための数値モデルを構築する計画である。しかし、実験装置の製作に若干の遅れが生じたため、フロックの沈降特性に係る実験データを平成26年度中に取得することができなかった。ただし、九州各地で採取した実験用試料の基本特性の評価、ならびに実験装置の製作作業は概ね完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、凝集した懸濁物質の沈降特性を実験的に評価することが不可欠であるが、実験装置の製作が遅れた影響によって平成26年度に実施を予定していた一部の実験が行えなかった。当該実験装置を用いた実験については、平成27年度の当初計画にも含まれているため、平成27年度に実施予定の実験と並行して実施する。平成27年度は、成層流体中での無機懸濁物フロックの沈降特性の評価、成層流体中での有機懸濁物フロックの沈降特性の評価を中心に実施する計画である。加えて、懸濁物質、栄養塩動態に関する鉛直一次元数値モデルを構築する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究課題の遂行に必要なデジタルマイクロスコープの導入に当初の予定を上回る費用を要したため、実験装置製作のために前倒し支払請求を行った。一方で実験装置の製作作業への着手に遅れが生じたため、実験実施に係わる経費の支出が発生しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前倒し支払請求によって平成26年度中に実験装置の製作に着手できたため、実験を実施する環境は既に整っている。したがって、平成27年度は実験を中心に研究を行う予定であり、実験と分析に必要な消耗品や試薬類を中心として研究費を支出する計画となっている。
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