2015 Fiscal Year Research-status Report
メタゲーム理論に基づくPFI事業における競争的対話の導入効果に関する研究
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26420513
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大西 正光 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10402968)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 建設マネジメント / 公共調達 / 競争的対話 / 入札 / 契約 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度(プロジェクト期間初年度)では,EU諸国で実施されている競争的対話方式の具体的なルールとその具体的な実施方法についての調査を主に行った.その結果,EU諸国においても必ずしも確立した制度及び運用方式が存在しているわけではないことが判明している.これを受けて,平成27年度(本年度)では,公共調達ルールとして具備すべき機能的要件と,当該機能のパフォーマンスに係る評価基準となる規範的条件を定義した.その上で,公共調達のための代替的方式と比較において,競争的対話方式を特徴づける本質的性質を特定した.具体的には,公共調達ルールの機能的要件として,1)どの業者と取引を行うかを決めるための受注者選抜ルールと2)いかなる契約条件で取引を行うのかを決めるための契約ルールの2つを措定した.また,受注者選抜ルールの妥当性要件として,1)可能な限り多くの事業者を選抜対象としたかどうか(非差別性),2)適用する評価基準によって選抜される事業者が工事を受注することが社会にとって望ましいかどうか(実用性),3)評価結果の判断から評価者の主観が排除されているかどうか(客観性)を措定した.競争的対話は,従来の発注者からの一方的な契約条件の提示ではなく,早期請負者参加(Early Contractors’ Involvement)を目的とした新たな契約ルール導入の試みとして解釈できると指摘した.また,契約ルールの変更には選抜ルールの変更が伴う.したがって,選抜ルールの選択には,ルールの妥当性と取引費用の間にトレードオフ関係の存在を指摘した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は,当初メタゲームモデル理論に基づき,競争的対話参加プレイヤー間の戦略的構造を明らかにする予定であった.しかし,公共調達ルールにおける競争的対話方式の制度的特徴が明確に定義されていなかった.そのため,平成27年度では,エフォートが,競争的対話方式の概念の定義,さまざまな公共調達ルールとの間の関係性の定義に費やされた.その上,研究期間中に異動があったため,年度末に予定していたモデリングのための調査,分析が予定よりも遅れた.
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り,平成27年度に予定していた作業の一部が平成28年度に繰越となっている.平成28年度は,メタゲーム理論に基づき,競争的対話方式を巡る戦略的関係の下で生じる経済的帰結について演繹的に推論する.その結果,競争的対話方式が望ましい帰結を導くであろう前提条件を明らかにする.また,平成28年度は本プロジェクトの最終年度であり,3年間の研究活動の取りまとめを行う.
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Causes of Carryover |
平成27年度に所属の異動があり,当初予定していた工程に遅れが生じた.そのため,調査資料収集に要すると予定していた費用の一部に残余が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度においては,遅れが生じた工程も含めて実施する.モデリングのための文献収集,調査に費用を要するため,主に図書購入及び謝金支払いに残余部分を充当する.
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