2014 Fiscal Year Research-status Report
国内およびアジア地域の廃棄物埋立地における亜酸化窒素の発生・排出メカニズムの解明
Project/Area Number |
26420539
|
Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
石垣 智基 独立行政法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 主任研究員 (90343756)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 廃棄物 / 最終処分場 / 温室効果ガス / 地球温暖化 / 亜酸化窒素 / メタン |
Outline of Annual Research Achievements |
廃棄物埋立地における亜酸化窒素排出挙動を明らかにするための実地調査を日本を含むアジア地域において実施した。実埋立地におけるガス排出挙動をもとに、メタン発生量の多い埋立地においては、メタンと亜酸化窒素の排出量に一定の相関が見られることが確認された。また、高い亜酸化窒素排出が確認された埋立地の管理状態としては、有機物を含む廃棄物の埋設や、高い地下水位および水面変動など共通した特徴が確認された。亜酸化窒素ガスの排出量が低い範囲においても、高い埋立地ガス総排出量を示す場合もあり、亜酸化窒素の生成・流動を阻害する要因についての検討が必要であることが示唆された。
その主要因として考えられる、埋立層内に存在する水分中に含まれる溶存態の亜酸化窒素を対象として、溶存態からのガス移行挙動についての検討を行った。水分含有量の変化が亜酸化窒素のガス態への移行に与える影響から、表層浸透および内部貯水によるガス態の亜酸化窒素排出挙動に関する知見を得た。
得られた結果を用いて、埋め立てられる廃棄物、埋立地管理手法、立地気候帯を加味した亜酸化窒素排出量算定モデルの開発に着手した。温室効果ガス排出インベントリに活用することを意識し、既存のメタン排出量算定モデルと一体化した運用が可能なツールとしての提示に向けた開発を進めた。用いられるパラメータとして、廃棄物管理手法の類型、地域特異的な活動量・排出係数の整備を進めた。 .
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主目的である、「廃棄物埋立地の立地・管理状態、搬入される廃棄物(埋立物)の特性に応じた亜酸化窒素の発生・排出メカニズムの解明」について、実施設における実態調査の結果を踏まえて、嫌気的生物反応の最終生成物であるメタンと同様の発生・排出挙動を示すルートを確認した。またその際の特徴的な埋立地管理状況および埋立物の特性についても知見を得た。 また、上記のメカニズムを確認するための実験的検討に着手している点についても、当初計画に沿った進捗状況である。 以上のことから、本研究の一年目の進捗状況としては当初計画通り順調に進行していると評価づけられる。
一方、埋立地における亜酸化窒素の発生時期や量を予測する排出量算定モデル式の開発については、埋立物、埋立地管理手法、立地気候帯を加味したパラメータとして設定できるプロトタイプを構築するなど、次年度以降に実施する予定の計画を先行して実施した。この点については当初計画を上回る進捗状況であると評価できる
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、国内外の廃棄物埋立地からの亜酸化窒素排出実態に係る現地調査を実施する。同一埋立地における経時的・経年的な亜酸化窒素排出実態の蓄積を通じて、中長期的な排出挙動の推移について情報を得るとともに、排出メカニズムの実験的検証における条件設定にフィードバックする。また、埋立物や管理状態の異なる廃棄物埋立地の選定をすすめ、関連機関への研究協力を依頼するとともに、モニタリング対象の拡大および類型の充実化を図る。
埋立地からの亜酸化窒素排出経路同定のためのカラム実験については、埋立地の管理状態ならびに廃棄物中の窒素源ごとに類推される亜酸化窒素の排出経路を確認する。生物系の廃棄物および無機系の薬剤・高分子材料由来の窒素化合物を対象として、亜酸化窒素排出挙動を再現・検証するカラム実験を実施する。亜酸化窒素排出経路の同定と、排出係数に関連するパラメータの導出を試みる。 さらに、メタン・亜酸化窒素の両者を含めた温室効果ガス排出量の削減のための維持管理上の方策について実験的に検討する。具体的には、埋立物の品質管理、排水管・排水層や中間覆土材調整による埋立地内の水位制御、表層およびガス抜き管の活用による酸素の浸透管理などについて、温室効果ガス排出に関する影響を定量的に導出する。
上記の検討を踏まえて、埋立地からの亜酸化窒素排出量算定モデルの開発をすすめる。メタンを含めた埋立地由来の温室効果ポテンシャルの評価が可能になるよう、既存のメタン排出量算定モデル(IPCC)と一体化した運用が可能なツールとしての開発を指向する。廃棄物に関する活動量、ならびに埋立地管理情報や気候帯に応じた排出係数を、いずれも既存の算定式であるメタン排出量算定モデルと同レベルの詳細度まで類型化する。
|
Causes of Carryover |
主に物品費のうち、カラム実験等の実施に計上していた消耗品類について、既存の物品の有効活用が可能であったこと、および、実態調査に重点を置いたため一部が次年度実施内容へとなったことによる。さらに、分析に係る薬品類・ガス類について、主に所属機関の内部予算および人員を活用しての効率的実施が達成されたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験室での実証試験に係る消耗品・器具類について、多条件での同時検討が可能となるよう実験系を構築する。実態調査の継続に伴う旅費としての支出もあわせて行う。
|
Research Products
(11 results)