2014 Fiscal Year Research-status Report
損傷状態を陽な形で評価する次世代耐震診断法のための地震時最大応答推定手法の開発
Project/Area Number |
26420556
|
Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
西田 哲也 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (40315627)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 賢志 千葉工業大学, 工学部, 教授 (20397029)
菅野 秀人 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (20336449)
櫻井 真人 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (60710184)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 鉄筋コンクリート造 / せん断破壊型部材 / 応答推定 / 瞬間入力エネルギー / オンライン地震応答実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
せん断破壊型部材と曲げ破壊型部材が混在する既存鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造建築物を対象として、損傷状態を陽な形で評価できる次世代耐震診断法に適用するためのエネルギー入力過程を考慮した地震時最大応答推定手法の開発を目的として、本年度は、(1)せん断破壊型部材と曲げ破壊型部材とが混在した建築物を対象としたオンライン地震応答実験による地震応答性状の検討、および、(2)地震動の位相特性と瞬間入力エネルギーに着目した検討を行った。 (1)のオンライン地震応答実験による地震応答性状の検討においては、せん断破壊型部材と曲げ破壊型部材とを並列で加力する実験システムを用い、特性の異なる2波の地震動を作用させる実験を行った。実験では、せん断破壊型部材のせん断降伏以降の急激な耐力低下に対して安定した加力制御を行うため,試験体上下スタブの両側に補剛バネ(平鋼)を設置した試験体を用いた。その結果、せん断破壊型部材の破壊性状と最大応答変位の発生状況の推移について実験的に把握した。また、瞬間入力エネルギーについても検討し、最大応答変位との関係も把握した。 (2)の地震動の位相特性と瞬間入力エネルギーに関する検討については、最大瞬間入力エネルギーが入力地震動の位相差分と深い関係があるとの仮説に基づき、まず地震動の位相特性に基づく有効継続時間を評価し、次にこの有効継続時間を用いて最大瞬間入力エネルギーと総入力エネルギーとの関係について検討した。その結果、最大瞬間入力エネルギーと総入力エネルギーの比率に関して、入力地震動の位相特性との関係、有効継続時間との関係を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の予定は、研究実績の概要にも示した通り、(1)せん断破壊型部材と曲げ破壊型部材とが混在した建築物を対象としたオンライン地震応答実験による地震応答性状の検討、および、(2)地震動の位相特性と瞬間入力エネルギーに着目した検討である。 (1)については、実験を2回に分け、まず本年度に1回目の実験を実施し、その結果を踏まえて次年度に2回目の実験を行った方がより効果的との判断から、2回目の実験を次年度に実施することとした。本年度に実施した1回目の実験分においても、せん断破壊型部材の破壊性状と最大応答変位の発生状況の推移に関するデータ、および、最大瞬間入力エネルギーと最大応答変位との関係を検討して、当初の予定通りの実験データが概ね得られており、研究は順調に進展している。 (2)については、入力地震動の位相特性、有効継続時間、最大瞬間入力エネルギーと総入力エネルギーの比率の関係を明らかにした。最大瞬間入力エネルギーと総入力エネルギーの比率に関する有効継続時間との関係においては、有効継続時間と固有周期の関係が関連することも明らかになり、これについては今後どのように取り扱うかを検討しなければならないものの、概ね当初の予定通りの成果が得られており、研究は順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の予定であった(1)せん断破壊型部材と曲げ破壊型部材とが混在した建築物を対象としたオンライン地震応答実験による地震応答性状の検討については、本年度の1回目の実験の検討結果を踏まえて次年度に2回目の実験を実施する。この実験では、本年度の成果の補強と次に続く(3)せん断破壊部材の履歴モデルの構築と地震応答性状の検討に役立つようなパラメータを設定する予定である。次年度は、まず1回目の実験結果を用いて、(3)の履歴吸収エネルギーを忠実に再現できる履歴モデルを構築し、2回目の実験で検証するとともに、1回目と2回目の実験結果からせん断破壊型部材と曲げ破壊型部材の耐力負担割合が最大瞬間エネルギーおよび最大応答変位に及ぼす影響を検討する。 また、(4)建築構造物の最大応答変位に至る半ループ以前までの地震応答性状の評価手法について、(2)の検討で明らかになった検討事項を踏まえつつ、検討する。具体的には、まずせん断破壊が生じるまでに吸収されたひずみエネルギーと入力エネルギーの関係を検討し、次に(2)の成果と検討事項を踏まえ、最大応答変位に至る半ループ以前までの最大応答変位の推定を試みる。 最終的に(1)~(4)の成果を統合して、(5)せん断破壊型部材と曲げ破壊型部材とが混在した建築物を対象とする地震動によるエネルギー入力過程を考慮した地震時最大応答推定手法を構築する。
|
Causes of Carryover |
申請時の計画では初年度に全ての実験を実施する予定であったが、本年度の当初に具体的な試験体、実験パラメータを検討の段階において、せん断破壊型部材と曲げ破壊型部材を並列にしたオンライン地震応答実験については、同種の実験データがほとんどなく事前予測が想像以上に難しいこと、および、一旦実験を行った後にその結果を踏まえて実験パラメータを設定した方が、より有用な実験データが得られるとの判断から実験を2回に分けて実施することとした。2回目の実験は、1回目の実験の試験体製作・実験準備から実験実施、実験データの検討までを行った後に実施することになるが、スケジュールの関係から2回目の実験を本年度に行うことには無理があるため、申請時の予定を変更して、次年度に2回目の実験を実施することとした。このため、初年度に実験用予算として当てていた分を次年度に繰り越すこととなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験時期をずらしたために次年度使用額が生じたが、使用計画については、申請時の計画からは変化はなく、次年度使用額は全て実験用の試験体、ひずみゲージ等の実験関連の消耗品として使用する予定である。 その他については、申請時の予定通りに使用する。
|