2015 Fiscal Year Research-status Report
大地震時に制震装置が損傷した建物の損傷原因究明と補修方法の検証
Project/Area Number |
26420559
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
薛 松濤 東北工業大学, 工学部, 教授 (70236107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 則男 東北工業大学, 工学部, 教授 (60292249)
大沼 正昭 東北工業大学, 工学部, 教授 (70085447)
船木 尚己 東北工業大学, 工学部, 准教授 (70347897)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ダンパー / 地震観測 / 破壊実験 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東北地方太平洋沖地震の際に、仙台市内に建つ8階建て制震建物のダンパーが破損および修復した事例に基づいて、複数の地震観測記録に基づく分析により制震装置の破損プロセスを明らかにしようとしたものである。また、新たな制震装置を用いた補修の効果を確かめるとともに、地震観測などにより補修方針および方法の有効性を継続的に検証することを目的としている。今までに得られた成果の概要を以下に示す。 先ず、継続的な地震観測により、これまでに多数の観測記録が得られ、たとえば震度が比較的大きかった2014年6月16日及び2015年2月17日の地震加速データを基に構造物を再同定した結果、拡大係数の最大値が双方とも小さくなっていることが分った。それ等の結果から、補修に用いた積層ゴムアイソレータによる制震効果が再度確認できた。地震観測の結果とシミュレーション結果がおおむね一致し、本モデルの妥当性を明らかにすることができた。また、一連の観測および解析の結果から、新しく提案した制振改修の方法が、地震時の応答を十分抑制できていることを確認し、一定の成果が得られたものと考える。 次に粘弾性体ダンパーの破壊実験に関して、2015年10月23日に実験を行った。正弦波を用いた実験で、周波数を0.01Hzから3Hzまで、また、振幅を1mmから35mmまで変化させながら実験を行った。振幅の増大に従い、ダンパーが損傷していく過程を明らかにできたが、履歴ループの形状が損傷による劇的な変化を示していないことも分かった。現時点でダンパー損傷実験のシミュレーションが未完成で、正確な力学モデルの構築に次年度のテーマとして考え、詳細な実験報告等は本研究の最終報告に譲る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに複数の実地震観測のデータが得られ、それらの結果に基づき対象建物の振動特性を精度よく再現するためのモデルを同定した。さらに、実際に建物に組み込まれている制振機構の損傷実験を行い、大振幅下における破壊プロセスを明らかにできたことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
地震時における本建物の振動応答挙動を高い精度でシミュレーションすることを最重要課題と位置づけ、今後、発生が予測されている宮城県沖地震や、長町利府断層による直下型地震を想定し、本機構の実地震に対する有効性について検証を行う。 さらに、これまで継続して行っている地震観測についても、観測点を増設し、さらに精度の高い記録が収集できるように観測システムを更新する。これにより、構築してきた骨組モデルによるシミュレーションの精度も高まり、極大地震における建物の動的挙動が明らかになると期待できる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた大きな理由に、平成26年度に実施予定であった対象建物の地震観測点の増設が実施できなかったことがあげられる。計画が予定通り実施できなかった理由の一つとして、制振機構の破壊実験を行うための施設の問題により、その実施が遅れ、その分析に時間を要したことにある。観測点の増設は、制振機構の破壊プロセスや建物モデルの同定結果を精査したうえで、その設置箇所を検討する必要がある。貴重な研究費を効果的に使用することを重要と考え、やむを得ず観測点の導入を次年度に持ち越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
申請した経費の金額(次年度使用額)は、昨年度実施できなかった対象建物の地震観測点の増設に充てる。また、制振機構の破壊実験のための実験資材にも使用する。 これまでに得られた研究成果は、すでに査読付き論文にも投稿しており、その成果は評価されているものと思われるが、今年度についても同様に論文投稿および日本建築学会における成果報告を行う予定である。そのための経費を計上している。
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Research Products
(3 results)