2014 Fiscal Year Research-status Report
事業継続の実効性を高める復旧時間の予測法に関する研究
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26420566
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
山岸 邦彰 金沢工業大学, 環境・建築学部, 准教授 (70553189)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 事業継続 / 復旧時間 / イベントツリー解析 / 生産施設 / 2011年東北地方太平洋沖地震 / 代替拠点 / リスク解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度では以下の4項目について研究・検討を行った。 (1)「イベントツリーを準用した確率計算」について:イベントツリーとは、あるインシデント(災害や事故のことを言う)が発生した際の種々の事象(イベント)の破壊の有無を樹形図のように作成したものであり、事象の従属関係を加味した被害確率の計算を行える特徴がある。しかしイベントが多いと計算が膨大になるため、イベントツリーを簡素化した確率計算方法の確立を行った。この結果、37イベントのイベントツリー(最低でも2の37乗個のシナリオとなる)の計算を市販されているノートパソコンで1分程度で計算を終えることができるようになった。 (2)「復旧に関わる要因分析」について:重要要素の復旧には,撤去,現地調査,経営判断,製作,施工,試運転などさまざまな要因が影響する。ヒアリングの結果、生産品の種類によりこれらの工程は変化するため、ユーザーが指定した工程を入力できるよう要因を一般化させた。 (3)「被害状況・事業継続状況に関するアンケート調査」について:当初、2011年東北地方太平洋沖地震の被害地域を対象とした生産施設の被害状況と事業継続状況に関するアンケートを実施する予定であった。しかし、その後各機関で実施したアンケートも多数あることが判明した。また、研究者らも本研究課題の前に実施したアンケートもある。平成26年度では、これらのアンケート調査の分析を中心に行った。 (4)「模擬工場の製作」について:板金工場を模擬した工場の仕様を考案した。また、実際の工場を参考に自動車部品メーカーをモデルに工場の仕様を作成中である。これらの模擬工場は復旧時間予測のキャリブレーション用として利用される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画について多少の変更を生じたが、概ね予定通り達成したと考えている。最終成果としての論文(口頭発表を含む)やツールの公開にはまだ時間がかかるが、論文やツール公開の足がかりを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は既に提出した研究計画に沿って確実に研究を進めることとする。現在のイベントツリー解析は2分岐のイベントツリーであるが、多分岐に対応できる簡易解析法の確立を行う。そして、これらの結果と理論値との比較を行い、本提案法の精度を確認する。フラジリティ曲線の整備について、既に着手している。事業継続ではインシデントが発生してから執務を行える状況に至る時間の予測が重要になる。特に地震による事業中断の場合、構造躯体のフラジリティ曲線に関する既往の研究は多数存在するが、事業継続を指向した内装、外装などのフラジリティ曲線の提案はほとんどない。現時点は天井材のフラジリティ曲線の構築を行っているが、什器・備品類のフラジリティ曲線の開発も行う予定である。 また、近年の地震被害を通して、「地震に対する事業継続」の考え方が広まっているが、事業継続は地震のみを対象としたものではない。最近は事業継続戦略における「代替性」が注目されている。代替性で重要なことは代替地におけるリスクである。地震の他にも種々のリスクが存在する。これらのリスクを総合的に判断できる指標が必要になる。本課題ではそれを「立地リスク」と呼び、この予測法の確立を27年度に実施する。 ただし、研究計画にあった「生産設備等の耐震強度実験」を中止し、代わりに事業を行っている設備等の設置状況を踏まえた振動実験および解析を行うこととする。一般的な構造設計では、これらの設備等の重量を積載荷重として設計することが多いが、実際は滑動を生じることにより躯体は構造設計の仮定とは異なる挙動をする。これらの結果を元にフラジリティ曲線を構築し、真の地震時挙動を把握することができると考える。 以上のことを平成27年度の主な研究推進方策とする。
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Causes of Carryover |
当初想定していた治具製作費を安価に製作することができたためである。しかし、実験を行った結果、治具の不備が発見され、追加的な治具製作費が必要になっている。本来ならば早期に治具を作成し、不備点も修正できれば年度内に使い切ることができた。しかし、治具発注が2014年12月になり、調整が遅れたことが原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の早々より治具等の発注を行う予定である。現在治具の設計と、本実験に使用する消耗品の選定を行っている段階である。
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Research Products
(1 results)